第9話

その瞬間、彼女は突然、動き間合いをこちらに詰めた。

彼女は俺の首元にナイフをあて口を開いた。

「私が裏切るとしたらどうする?」

俺は首元に、冷たい感触を感じながら、返答した。

「別にいいぜ。俺の首元が裂かれる瞬間、アンタの腹に穴が二、三発空くぜ」

彼女はナイフをあてたまま、自身の腹を見た。彼女の腹には赤い点と俺が構えた銃口が向けていた。

彼女がその赤い線が何かすぐに理解した。

「機械に撃たせるつもり?」

「別に機械に撃たせるつもりはないさ。 なぁ、ウィンストン?」

俺は別室で見ていたウィンストンに言った。

すると上から声が降ってきた。

『ああ。引き金は僕らが握っているよ』

こちらをカメラで見ていたウィンストンが答える。

ウィンストンが、カメラがついたアームを操作し、何かあれば、その先に取り付けられた銃を撃つつもりだ。

トゥアはアームを見つめながら、ナイフを持った手を下ろし、こちらを向いた。

「わかった。 貴方たちの言うとおりにするわ」

彼女はどこか諦めたような口ぶりで言った。

俺は銃口をおろし、彼女を見る。

「そう来なくちゃな」

俺は彼女に言い、手を出した。

「なんだ・・・・・・?」

「あいさつだよ。あいさつ、これから、仲よくやっていこうっていう挨拶」

俺は砕けた口調で言った。

トゥアはすこし戸惑い、俺の手を握った。

「そうそう。仲よくやればなんでも解決できるだろ」

俺は彼女の手をしっかりと握った。

「よろしく。トゥアさん」

俺がそういうと彼女はいやな顔をした。

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