第8話

「あれは実験番号零一だ」

「今、なんて……?」

彼女の言ったことに俺はつい聞き返してしまう。

「あれは実験番号零一だ。 カメレオンのように擬態……、いやこの星の生物がするような擬態と呼ばれる方法ではなく、ヤツは光を屈折させる」

まるで独りごとを呟くように彼女は言う。

「それでアイツは消えたのか」

俺は納得した。

あのオルガニが姿をけせる理由を知って腑に落ちた。

しかし、なぜ目の前の女が知っている?

俺は疑問を残しながら彼女を見つめる。

「ヤツは見つからないのはそのためだ。 それにヤツは殺戮を楽しんでいるわけではない。むしろ食料の為の行動だろう」

彼女は続けた。

「私はヤツを止めなければならない。だから私は警察にも掴まるわけにはいかない。それに政府には……」

俺は彼女の姿をみて、口を開いた。

「アンタが、何かをしでかした事は分かった」

俺は腰から、ハンドガンを出し、彼女に向けた。

「じゃあ、こういう選択肢を選ぶことができる。アンタを警察につき出す。二にアンタをここで殺す」

「・・・・・・」

トゥアは黙ってこちらを見ていた。

「そして三つ目はアンタが、俺等に協力してあの透明になる厄介なオルガニを一緒に探して駆除する。どれを選ぶ?」

俺は安全装置をはずし、彼女の顔に向ける。

「断れば、撃つんだろう?」

トゥアは冷静に問いかけてきた。

「その通り」

俺は一方の手でタバコを出し、口にくわえる。

「私には断る権限もない。好きにしろ」

トゥアは力強い目でこちらをみた。

「分かった」

俺はひと言返答すると、ハンドガンの安全装置を元に戻し、腰に戻した。

そして鍵を取り出すと、彼女を縛っていた、両手両足に取り付けた磁石式の手錠をはずし、ライターを取り出しタバコに火をつけた。

トゥアはこちらをみて言った。

「本当に貴方は、私のことを信じているのか?」

彼女は自分の手首をさすりながら言った。

俺はタバコを一息吸い、口から離すと言った。「信じてるも何も、やって貰わないと困るんだ。それに目的は一緒だろ?」

俺がそういうと、彼女は一度、目をふせるともう一度、はっきりと瞼を開き、こちらをみた。

「いいだろう。だが……」

その瞬間、彼女は突然、動き間合いをこちらに詰めた。

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