第7話

 目を覚ますとすでに、ソイツは目覚めていた。

「よう、目が覚めたか?」

寝起きの俺はソイツに声をかけた。

俺はあくびをし、ソファから身体をおこす。

「どうだ? アンタ、一晩ぐっすりだったぜ」

俺は極力、ソイツに近づかないようにしながら、近くの椅子を手にして、ソイツと真っ正面になるようにそれを置いた。

「で、話をしようじゃないか。一つ目さん」

俺は目の前の昨晩、戦った相手に話しかけた。ソイツ、一つ目、もとい中身の女はジロリと俺を睨んだ。

昨晩、戦ったのちスタンガンでソイツを気絶させ電磁拘束具で手足を拘束し自分の事務所に運んだ。

周りのパワードスーツのような物を全てとり、ソファに寝かせた。

「アンタが、来ていた鎧と持っていた刃物は此方で預かってある」

俺は鎧の一部を手に取り、女にみせた。

「・・・・・・・・・・・・」

女はただ黙り、こちらをジッと無表情で見ていた。

「で、アンタのおかげで、仕事が失敗した。そこでだ。俺は非人道的なことはしないが、いくつか質問がある」

女は何も表情をかえることなく、此方を見続ける。

「まずアンタは何者だ? なんであの場にいた?」

その質問を俺が投げかけると女は神妙な面持ちをし、口を開いた。

「お前は政府の人間ではないのか?」

女はその言葉を慎重に選んだようにもかんじたが、俺は気にすることなく返答した。

「確かに行政の関係の人間は知り合いにはいるが、俺がそんな国に関係した人間に見えるか?」

俺がおどけたように言うと女は一度、口を閉じ、何かを考える仕草をした。

「俺の名前はヘックス。一応、身分を明かすと俺は民間のしがないオルガニハンターさ」

俺がそういうと女は口を開いた。

「本当だな?」

「別に隠す必要がどこにある? 俺は行政の人間はあまり好きではないんだ。だから俺が聞きたいことはなんで仕事の邪魔をしたことを聞きたい」

彼女はふうと一度溜息をつき、言った。

「私の名前はトゥア。トゥア・スプリンターだ」

彼女はトゥアと名のり、力強い言葉で口を開いた。

「トゥアというのか。 じゃあ、トゥア。なんであの場所にいたんだ?」

「・・・・・・」

彼女はだまり、此方を睨む。

俺は淡淡と彼女の方を向いていた。

「答えたくないなら、別に構わないが警察に引き渡すか、アンタが嫌っている行政の人間を呼ぶかでもする」

俺が脅しのような文句を感情を込めずに言うと、それが効いたのか、トゥアは口を開いた。「私もオルガニを追っていた」

彼女は感情をこめずに言っていた。

「同業者なら、早く言ってくれよ。ただ追っ手いたなら、なんで俺は殺されかけたんだ?邪魔しなくても追う方法は別にあった。俺が殺されかけなければいけない理由を教えてくれ」

俺は彼女が身につけていた鎧を手で遊びながら、言った。

トゥアと名乗る彼女は一度、目を閉じると言った。

「私はオルガニハンターではない。私はお前が政府の関係の人間だと思った」

「それだけで殺そうとしたのか?」

トゥアは迷うことなく、首を縦に一度ふった。本気かよ。

「それは分かった。アンタがオルガニハンターではないのは分かった。だが、アンタが、なんであの透明になるオルガニを追う?」

俺が質問をすると、トゥアは少し悩んだ様子をみせた。

「それは言えない……」

俺はその反応を見て、さらに押せるのではないかと思い、質問を続けた。

「そうかい。アンタは何かあのオルガニに着いて何か知って居るんじゃないか? 追っていると言うことは動機は別としても、情報はあるはずだ」

俺はトゥアにさらに質問した。

「…………」

彼女は黙りこみ、何か思案するような様子をみせた。

「別に喋りたくなきゃ、喋らなくていい。俺はただ警察に引き渡して、行政の人間を呼ぶだけだ」

正直な所、彼女があのオルガニを追っているのならば、情報を持っている。

その情報がなくなるのは惜しいところだ。

そう思いながら、彼女の様子を伺う。

すると彼女は口を開いた。

「それは構わないが、私を警察につき出して、困るのはお前じゃないか?」

コイツ……。

俺の脅しを返すように、逆に脅すように言ってきた。

俺は内心、感心しながらも、言葉を返す。

「へぇ。 ずいぶんと挑戦的だな。 別にアンタが居なくても、あのオルガニを駆除することができるからな」

俺がそう言うと、トゥアは負けじと噛みついてくる。

「それは構わないが、被害が生まれるだけ」他人事のように冷たく言い放つ。

「そうかい。 別にアンタが行政と何かあったのかは知らないが警察につき出すだけか。ただひとつ、気に入らないことがある」

俺はひとつ引っかかる事があり、それを口に出した。

「アンタが何をしたのかはわからないが、こんな鎧を付けてまで、オルガニを狩りに行こうとするのは何か、特別な考えがあったからじゃないの?」

俺は目の前の初めて知ったヤツに問いかけた。「別に誰かが死ぬのは構わない。オルガニに襲われるより、自殺者が多い街だからな。だがあのオルガニを追うことにアンタは執着しているように見える。 その理由を聞くまでは警察につき出すわけには行かない」

俺がそう言うと、彼女は此方をしっかりと見据え、お互いに視線が合う。

「…………」

「…………」

沈黙が続き、さきに口火を切ったのは彼女の方だった。

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