第5話
対象が急に、動きをとめ、辺りを見まわすようにせかせかと身体を小刻みに動かしていた。不思議に思ったのと同時に、なんともいいしれない空気が走った。
俺は背筋に寒気が走り、走るのをやめてその場に足を止めた。
次のときだった。
もう少しで俺がたっていたかもしれない場所に何かが降ってきていた。
ドンという音と金属が何かに当たる音が両方した。
俺は一瞬で別のヤツが現れたかと思い、バク転で勢い良くその場を離れる。
近くで何か、空気を斬るような音が聞こえた。俺はすぐに体勢を立て直し、銃を構え、引き金を引いた。
何かがいるかもしれない空間に向かい、銃を放ちながら、出来るだけ、隙をつくらないように、動き回る。
このまま闇雲に動き回っても、狙われるだけなのは見えている。
「ウィンストン!」
『どうしんたんだい、ヘックス』
「新顔が現れた! 見えるか?」
『ちょっと待ってくれ。 サーモグラフィーには何も映ってないよ』
「ちゃんと探してみてくれ!」
『本当だ何もいない』
無線の向こうでもウィンストンは狼狽えた。俺は出来るだけ、辺りを見まわす。
完全に、姿が見えないとなると厄介だ。
俺はどうしようかと頭の中で緊急警報がなり、逼迫していた。
俺は耳をすました。
すると足音のような音が、聞こえた。
俺はそれを耳にした瞬間、生物的本能か、背筋に寒気が走る。
俺は反射的に、身体を反らしていた。
次の瞬間には自分の鼻があった場所を何かが、通り過ぎた。
それは風を斬るような音がし、まさか刃物かと思い、俺は身体の体勢をそのまま崩し、バク転をしながら、その場から離れる。
「ウィンストン!」
『ヘックス、やっぱり何もいないよ』
イヤフォンの向こうでウィンストンが、焦っているように聞こえた。
「何でもいい、探してみてくれ」
俺はイヤフォンの越しのウィンストンに叫びながら、動き回る。
俺は横に走りながら、チラリと対象がいた場所をみる。
そこにはもう何もおらず、完全に見失っていた。
「くそ……」
悪態をツキながら、辺りの音の変化に注意する。
気が付いた瞬間には足音が強くなっていた。
どの方向から来るのか分からない。
冷や汗が、頬をつたう。
完全に、オルガニと対峙するよりも、しんどい状況だ。
俺は足音が聞こえる方向に向かい、銃を向け、引き金をひきつつ、足音が聞こえる方向からサイドステップで離れる。
銃弾は当たったような感触はない。
俺は頭の中でどう、対処しようかと考えながら攻撃を避けるように動く。
相手は多分、オルガニではなく人間に近いはずだ。
この動きをしているということは人間ではなく、ロボットか?
俺は予測しながら、銃弾をリロードし足音が聞こえた瞬間、素速く足音から離れるように走る。
走る方向は、狭い通路だ。
俺は見えない方向に向けて発砲をする。
しかし、当たっている気がしない。
それでも俺は別の策があった。
大通りに出るための通ってきた一方通行の道にわざといく。
そこは正直戦うにはさすがに大変なところだった。
俺は来た道を振りかえる。
そこには水たまりがあり、歩いていれば波紋ができる。
俺は薄暗がりに集中する。
水たまりに波紋が出来き、一歩ずつ近づいてきているように見えた。
『ヘックス、街灯のカメラをハッキングしたら、姿は見えないけど目の前にいるよ』
「そんなことはわかってる。 対処する」
俺はウィンストンに伝えると、見えない誰かに言った。
「さぁ来いよ」
俺が挑発した瞬間に、水たまりを蹴る音が早くなる。
その瞬間、俺は左手に装着したワイヤーシューターを使い、近くの建物めがけ、射出した。フックの着いたワイヤーが近くの建物にささり、そのまま俺はワイヤーを巻き戻す操作し、ジャンプした。
それと同時にポケットから電磁パルス爆弾を取り出し、音がした方向に向かいなげた。
音の主は驚いたのか、地面を強く蹴る音がし、水しぶきが上がるのが見えた。
おせぇよと俺は思い、俺は自信の顔を反対の手で覆う。
次の瞬間、俺がなげた電磁パルス爆弾が、炸裂し、閃光が一瞬走る。
すぐさま、覆った腕をどかし、俺は音がしていた何も見えない方に向かい、銃を構え、引き金を引いた。
銃弾は見えない壁に当たったかのように、むこう側の景色に当たり跳弾する。
俺は直ぐさま、銃をしまい、ナイフを取り出し、ワイヤーを切り、水たまり着地した。
俺はナイフを銃弾が跳弾した方に向かい、投擲しつつ、銃を再度、取り出し、構える。
ナイフは見えない何かに払われ、地面に落ちる。
俺はの光景を見ながら、引き金に指を乗せた。目の前にまるで風景にバラバラな人の形をした画が書き込まれたように、それは出現した。
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