第1話 ニューシティ

 タバコを口にくわえ、息を吸い込む。

「で、今月の稼ぎはいくらだ」

口から、煙を吐き、近くで作業を行っていたウィンストンに問いかけた。

下を向いていてたウィンストンは顔をあげるとゴーグルをとり、にが笑いを浮かべながら言った。

「今月の稼ぎは拡張現実のメモに記したよ。

確か明細も付けてる」

ウィンストンは両手を広げ、ながら言うと、またゴーグルを元の位置に戻し、作業を再開した。

「どれどれ」

俺はタバコを口にくわえ、拡張現実を開く。メモリ内のテキストを開き、そこに書かれていた数字を確認する。

「げっ、これだけかよ?」

俺は口にくわえていたタバコをとり、驚きに声を上げてしまう。

作業をしていたウィンストンはそのまま、作業を続けながら、声を張りながら言った。

「僕も何とか研究費を抑えているが、殆ど赤字だよ、ヘックス」

「ほとんどって、全部、赤じゃねぇか」

俺はタバコを口にくわえて言った。

「理由は簡単だ。 銃に、銃弾、公共の設備の破壊の保険代。 おまけに、タバコ代だよ」

ウィンストンは呆れた口調でいった。

「だが、お前のその研究で稼ぎは出るんだろう?」

「僕のやってることに期待しないでほしいね。それにいつの世の中も、研究者にはあまり財布のヒモを緩くするようなことはしてくれないからね」

ウィンストンはおどけたようにいった。

「ということは余り金はないということか」

「そういうことになるね」

ウィンストンはにが笑いを浮かべながら、手元の作業に戻る。

「そうか、今月も厳しいのか」

俺はこんな時代に似つかわしくない紙切れをつまみ上げて、そこら辺になげた。

俺はテーブルにおかれた、タバコの箱を手にして、事務所のそとに出る。

事務所を出ると、目の前には土色をした海が広がっている。

こんな海に誰が入りたいというのだろうと思いながら、後ろを向く。

倉庫を改築した事務所の向こうには巨大なビル群が見えていた。

摩天楼と呼ばれた所からは今日も、何かしらサイレンの音が微かに響く。

俺は溜息をツキながら、手にしたタバコの箱からタバコをつまみ、口にくわえる。

旧時代の遺物のようなライターを使い火をつける。

ここはニューシティ。

いろんな人種といろんな化け物が出る街だ。

今日もどこかで、誰かが見知らぬ化け物に襲われている。

俺はタバコをくわえ吸い込み、息をはき出すと口からはいた息が白く、空に消える。

ぼんやりと過ごしていると、事務所の周りにはってあるフェンスの向こうに、一台の銀色の車が停まった。

客かと俺は疑問に思いながら、タバコを吸い続ける。

車から降りてきたのは、いかにも堅物そうな金髪をかりあげ、鋭い目つきで辺りを睨むような顔をした一人の男。

そして助手席からはどこか暗い雰囲気を辺りに振りまいている初老の男性。

まさかなと思いながら、俺はタバコをくわえ、もう一度、煙を吸い込んだ。

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