結婚式場で
会場に着いたのは挙式が始まる30分前だった。
先に式場へ向かっていたアーロンは変装用の魔法を自身に掛け、支度が整った状態でロボ達がやって来るのをそわそわしながら待っていた。
「あ! 来た!」
アーロンはロボ達を見つけると駆け寄って来る。
「間に合ってよかった! もうリハーサルとかは済んじゃったから、控え室に行って服装とかの最終確認をしておいで。場所は案内するから」
そう言うと、アーロンはロボ達を連れて歩き始める。
式場内には同じように礼服に身を包み、世間話をしている人が何人も立っていた。
彼等はロボ達の方を見ると、顔を曇らせひそひそと小声で話しをしていた。
「ここが僕等の控え室だよ。櫛とか必要な物はその辺にあるから使ってね。僕はみんなが着たことを新郎に伝えてくるから。もし何かあったらこの部屋を出て右に進んだ一番奥の部屋にいるから」
そう言うとアーロンは部屋を出て行った。
ロボは部屋を見回し、手前の椅子に腰かけた。
「結婚式ってなにやるの?」
部屋に置いてあったキャンディーを口に放り込みながら、ミアが言う。
「新郎新婦が神の前で結婚する事を誓い合う儀式らしいですよ。僕も参加するのは初めてなのでよくわかりませんけど」
ミアの言葉にルイスが返答する。
「ミア達はなにをすればいいいのかな」
「まあ、先生の真似事をしていればいいんじゃないですかね。先生は何度も参加したことがあるでしょうし」
「そっか」
少しの間沈黙が続き、式の前故にそれぞれが緊張した面持ちでそわそわとしながら部屋をうろうろしていた時、部屋の扉が開いた。
そこにはアーロンと、真っ白なスーツに身を包んだ男性が立っていた。
ロボ以外の皆は男性の顔を見ると口を揃えて名前を呼んだ。
「サルバラスさん!」
名前を呼ばれた男性は、少し照れたように笑いながら言う。
「今日は忙しい中わざわざ来てくれてありがとう」
サルバラスと呼ばれた男性の方へ、皆近寄っていく。
「いえ、こちらこそお招き頂きありがとうございます」
サルバラスの歓迎にルイスが答える。
「でも、僕等も挙式に参加してよかったんですか? 挙式って基本的に親族とかが参加するんじゃ」
「父さんには俺の親族として参加してもらっているから、みんなにも是非参加して欲しいと思って。みんなとは何度か会ったことがあったし」
サルバラスは部屋を見渡しロボを見つけると近づいて来る。
「君がロボ?」
サルバラスはアーロンと同じぐらいの高い身長を持ち、スーツの上からでも分かるガタイの良い体格でロボを見下ろしている。
その圧倒的な体格差にロボは緊張した面持ちで頷く。
「俺はサルバラス・バーゲン。初対面がこんな場所でごめんね」
サルバラスは体格に似合わない、少年のような顔で笑う。
「全然知らない人の結婚式なんてあんまり面白くないかもしれないけど、料理は美味しいから沢山食べて行ってね。なにかあれば俺かスタッフにでも言ってくれれば――」
ロボと話をしていた時、サルバラスはスタッフの人に呼ばれ、そのまま部屋を出て行った。
あっと言う間に去って行ったサルバラスの後姿を見送りながら、呆然としているとアーロンが取り繕うように言う。
「あの子は聖騎団に所属しているんだ。だから少し体格が良かったりするけど、あんまり萎縮しないであげてね」
そう言ってアーロンはロボの頭を撫でた。
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