6話 結婚式

「おめでとう~!」


「幸せにね~!」


 礼服に身を包んだ人々が、口々に祝いの言葉を口にする。


 教会の扉からは白い服に身を包んだ男女が、幸せそうな顔をして手を繋いで出て来ている。


 そんな姿をロボは参列者の中にまじり、アーロンから買ってもらった礼服を着て見ていた。


 見たこともない程の美しい装飾、沢山の綺麗な花、そのどれもに引けを取らない主役2人の着飾った衣装と心の底から幸せそうに笑う2人から、目を逸らせずにいた。






「みんな準備出来た⁉」


「まだ!」


 アーロンの言葉に皆が口を揃えてそう答える。


 家では朝早くからバタバタと準備に追われていた。


 結婚式の招待状が来たのは2か月前。


 それに合わせて準備をしていたが、当日になって発覚する問題が色々とあったのだ。


「ねえ、リボン結んで~」


「ごめん! 今手が離せないから後ででいい?」


 ナタリーに断られ、ミアはリボンを手に持ってフラフラとしている。


「ねえ、僕のネクタイ知らない?」


「え、昨日分かりやすいようにソファの上に置いておいた筈……」


 ノアがソファの方を指さす。


 ソファには脱ぎ捨てられたパジャマが乱雑に散らかっていて、座る隙間もない。


 それを見て、ルイスは唇をピクピクと引きつらせる。


「なんで今言うんだよ!」


「だって今気付いたんだもん!」


 ルイスは憤慨しながらもソファの周辺をノアと一緒になって探し始める。


「ねえ、リボン結んで~」


 フラフラと彷徨っていたしていたミアは、ロボを見つけて近寄って来る。


「ああ、うん」


 ロボはミアからリボンを受け取り、ドレスを着たミアの腰に結ぶ。


「髪結ばなくていいのか?」


 ミアの降ろしたままの髪型を見て、ロボが言う。


「今ナタリー忙しそうだから、終わるまで待ってるの」


 ミアは自身の髪を一生懸命にセットしているナタリーを見て言う。


「髪型は決まってるのか?」


「うん、緩い感じの三つ編みを作って、そこにお花を差し込むの」


「こんな感じ」と言いながらミアは雑誌を見せる。


「なるほどな」


 ロボは雑誌を受け取り、パラパラと数ページ捲ってミアに返す。


「俺で良ければ出来そうだけど、どうする?」


「え、ほんと? ロボ君なら信用出来るからやって欲しい!」


「差し込む花は?」


「これ、昨日買って来たやつ」


「おっけ」


 ロボはミアを椅子に座らせると、髪を梳かし始める。




「あった!」


 ソファ周りをうろちょろとしいていたルイスが声を上げる。


「誰だよ、ソファの下に落とした奴は……」


 ルイスはブツブツと文句を言いながら、ノアの首元にネクタイを結ぶ。


 そんなルイスを申し訳なさそうな顔で見ていたノアが、なにかに気が付いて言う。


「ねえ、ルイスのネクタイは?」


「そこの、テーブルに置いてあるやつ」


 ルイスが指さした方、そこには例のネクタイを締めるアーロンの姿があった。


「え、これ僕のだけど」


 アーロンがきょとんとした顔で言う。


 ルイスはアーロンの首に巻かれたネクタイを引っ張り、ネクタイの色を確かめる。


「僕がゴールドで、ルイスのは水色のネクタイって話だったよね?」


 アーロンの言葉にルイスは肩を小刻みに震わせる。


「すまん! 探すの手伝ってくれ!」


 ルイスはそうノアに言うと、2人はルイスの部屋へと捜索しに向かった。

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