沈静
そんなナタリーの様子にダレンは焦った様子で黒髪の男を押しのけ、ナタリーの前へと出た。
「ご、ごめん。この2人は俺のお世話係みたいな感じで、その、体調は大丈夫?」
「ぼ、坊ちゃん! 近付いては危険です!」
黒髪の男がダレンを止めようと割って入る。
金髪の男は放心状態で固まっていた。
「私の家族を傷つけるような事をするなら、容赦しないから」
ナタリーが低い声で威圧するようにダレンに言う。
その言葉にダレンは驚愕の声を上げる。
「か、家族? ナタリーさんのご家族⁉」
「私、孤児院みたいなところで生活してるって言ってなかったっけ?」
「ごめん、聞いてたけどこの2人にはまだ言ってなかった」
「そう……」
ナタリーは冷めた目をダレンの後ろにいる2人へ向ける。
「この2人は私の家族だから、賊でもレジスタンスでもない。だからそっちの2人に訂正させて」
ナタリーに言われ、ダレンは黒髪の男と金髪の男を側へと呼び、その場に正座をさせて自身も横に並んで正座をした。
「この度は、俺の説明不足で危険な目に合わせてしまって、本当に申し訳ありませんでした」
そう言うとダレンは地面に擦り付ける勢いで頭を下げた。
それに釣られるように、横にいた2人も頭を下げた。
「じゃあ、ほら」
そう言うと、ナタリーは側に立っていたアーロンとロボの手を引っ張り、前に座らせた。
「2人も、勝手に私の後を着いて来てたんだよね? そのせいでこの人たちに誤解をさせてしまったんだよね?」
ナタリーは2人の顔を覗き込むと、不気味な程に優し気な笑みを作った。
「いや、俺は」
ロボは反論をしようと声を発する。
「ロボはお父さんを止められたのに止めなかったんだよね? なんで? なにか物で釣られた?」
ロボはギクリと顔を強張らせる。
「すいませんでした!」
氷のように冷たいナタリーの表情に寒気を感じとったアーロンは、ロボの頭を下げさせた。
「それで、どういうことなの?」
ナタリーは改めて目の前に4人を正座させ、説明を求めた。
隣には同じような表情をしたダレンが立っている。
「あの、なんて言いうか……。ねえ?」
アーロンは助けを求めるようにロボの方を見る。
ロボは恐怖で顔を引きつらせ、全力でナタリーから目を逸らしていた。
ロボは役に立たないと悟ったアーロンは、眼を右往左往とさせながら説明を始める。
「ナタリーがデートに行くって聞いていたから、その、心配になってしまって。後をつけた次第で……」
「そっちの2人は?」
ナタリーは黒スーツの2人に振る。
「わ、私達も坊ちゃんが女性と2人でお出掛けになると聞いていたので、心配で途中まで見送りに来たところ、お2人の後をつける2人組を見かけたものですから、坊ちゃんの身になにか危険があるのではないかと思いまして……。でも、ショッピングを楽しんでいらっしゃる様子の坊ちゃんの邪魔をしてしまうのも躊躇われて、少し様子を見ようと後をつけておりました」
黒髪の男が気まずそうに目線を横に向けながら答える。
「要するに……」
ナタリーはアーロンの方を向く。
「お父さんがきっかけじゃん」
普段あまり笑顔を見せる事のないナタリーが、ここ最近で一番の笑顔を見せる。
「私、前にも言わなかった? 過度なお節介は迷惑になる事があるって。特に思春期の子供に対しては逆効果だって」
「い、言われました」
「じゃあ、なんで?」
「いや、あの」
「なんで?」
「返す言葉もございません……」
ルイスと違い、正論で静かに問い詰めていくナタリーに、アーロンはどんどん小さくなっていく。
「じゃあ、今回は両成敗って事で。弟がごめんね、怪我はなかった?」
ナタリーは金髪の男に手を差し伸べる。
「え、ああ、大丈夫です」
金髪の男は少し顔を赤らめる。
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