2つの人影

「ナタリー!」


 アーロンはすぐにナタリーの側に寄って行くと、側にしゃがみこんだ。

 その後をロボも付いていくと、物陰から人影が2つ飛び出し、ダレンの方へと近付いて行った。


「坊ちゃん!」


 黒いスーツを身に纏った人影は、ダレンに近付くとそう声を掛けた。

 2人の姿を見たダレンは驚いた顔をした。


「な、なんで2人がここに?」


 そう問いかけるダレンに答えることなく、2人はダレンの前に立ち塞がった。


「ちょっと、なに? どうしたの⁉」


 2人を押しのけようとダレンは抵抗するが、2人は頑としてその場を動こうとしなかった。


「坊ちゃん、お下がりください! こいつらはお2人を陰からコソコソと着けていたのです。賊かレジスタンスの一味か。その女もきっと協力者であるに違いありません!」


 黒スーツの1人、金髪の男はそう叫ぶと、キッとロボ達を睨みつけた。


 ロボはその様子を見ると、苦い顔をしてアーロンの方を見た。


 ナタリーに小声で話しかけていたアーロンは、ロボと目が合うと申し訳なさそうな顔をして、ジェスチャーでロボに少し時間を稼いでくれと伝えてきた。


 ロボは苦い顔のまま頷くと2人の方へと向き直り、アーロンは自身のローブをナタリーに掛けて周囲から姿を隠した。


「悪党が。坊ちゃんに色目を使って近付いて狙いはなんだ? ……まあいい、縛り上げて情報を引き出すまでだ」


 前に出ていた金髪の男はスーツの下から拳銃を取り出すと、ロボの方へと向ける。

 拳銃を見ると、ロボは表情を引き締めた。


「おい、よせ! 子供相手に拳銃なんて!」


 ダレンは叫びながら押さえつけているもう1人、黒髪の男に抵抗している。


「手を上げてその場にしゃがみ込め。お前等もだ」


 金髪の男はロボと後ろにいるアーロンへ指示を出した。


 ロボは2人を庇うように前へと出ると、口を小さく動かして言葉を発した。


 その瞬間、金髪の男の周りが風景を切り取ったように一瞬歪んだ。


 ロボがなにかをつまむように手を動かすと、前に向けていた拳銃がなにかに当たり、金髪の男は拳銃を下げた。


「なんだ? 拳銃が上げられない?」


 目の前にある何かに阻まれ腕を上げる事すら出来なくなり、頭になにかが当たった衝撃で金髪の男は思わずしゃがみ込んだ。


 次第に動けるスペースが小さくなり、体育座りをして身体を小さく折り畳み、上げていた頭も徐々に下げざるおえなくなってきた。


「た、たす――」


 金髪の男が悲鳴にも似た声を上げようとした時、ロボの手をアーロンが掴んだ。


 すると、それまで窮屈そうにしていた金髪の男の身体は解き放たれたようにその場に転がった。


「そんな魔法の使い方、教えた覚えはないよ」


 低い声で言うアーロンの言葉に、ロボはハッとした顔をして固まる。


 そんな2人の前になったナタリーが出た。


「これはどういうことなの?」


 ナタリーは3人を睨みつけながら、怒ったような声色で言う。

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