第59話 天下†夢想の公爵令嬢 ②

 ダイヤモンド王国


 数年前まではポイズン共和国と呼ばれていた国でした。

 大統領を含めた共和党の度重なる汚職に民衆と強引に吸収合併させられた小国が力を合わせて出来上がった若い国家であります。

 だからこそ、民衆は自分たちを牽引けんいんしてくれる英雄やシンボルを欲していました。


 ♬♫♪♩♬♫♪♩


 ギターを弾く若い男性が歌い上げるのは、今 話題の女性、アメジスト・シエスタ=ダイヤモンドが、まだ只のメイドだった時のお話。


 、クッキーとテリー

 テリーが、曲とナレーション。

 クッキーが、メイドの衣装を来てを叩きながら、シエスタを演じていました。


「寒い寒い冬、二人のメイド、クッキーとシエスタは互いに励ましあいながら、洗濯をしていました 」


 テリーが、悲しいメロディーを奏でながら語ると、


「冷たいよぉ~、辛いよぉ~、悲しいねぇ~クッキー 」


「頑張って、シエスタ !

 わたしが、シエスタの分まで洗濯物を洗うから休んでいてもいいよ ! 」


「あぁ~、ありがとう クッキー !

 わたしのクッキーには、お世話に成ってばかりで申し訳ないわ 」


 クッキーが、一人二役をしながらの名演技に見ていた人々は、苦労していたシエスタに涙を浮かべて応援し始めていました。


 あぁ、我らの女王様は、とても苦労していたのだ !

 だからこそ、我々ただの一般人の気持ちを解ってくださるのだ。


 クッキーの無駄に上手い演技に皆が信じ込んでいました。


 テリーは語ります。


「シエスタとクッキー、二人は励ましあいながらバーボン伯爵家のメイドの仕事をしていました 」


 テリーのナレーションに併せ クッキーが、


「シエスタ ! また、お皿を割ったの !

 お前みたいなドジっ娘メイドはクビよ ! クビ ! 」


「バーボン伯爵家の一人娘イライザがシエスタに意地悪をしていました 」


 クッキーがイライザの役を演じると、タイミングを合わせテリーがナレーションを語りました。


「待ってください、イライザ様 !

 わたしが、シエスタの分まで働きますから許してください !

 シエスタも わたしが教えてあげるからドジを減らしましょうね 」


「ありがとう、クッキー !

 ドジでノロマなカメのシエスタを導いてくれて!

 貴女こそ、きっと伝説の聖女さま なんだわ !」


 とうとう、一人三役をこなし始める名女優と成ったクッキー…………本物のシエスタが見ていたら何と言うだろうか ?


 原作小説では、キャスバルの死を きっかけに悲しみを乗り越えて大きく成長し、ポイズン共和国との戦争で傷つく人々を見たクッキーは、伝説の回復魔法『テラ・ヒール』を覚えて、従軍看護師と成り、傷を癒して貰った兵士達から『聖女』と呼ばれていたのだが……


 シエスタがキャスバルの死亡フラグを叩き折った為に、クッキーは別の才能に目覚めてしまったようだ。



 クッキーとテリーが語るシエスタの苦労話に夢中に成って見ている人々の後ろには……



「アワワワ、シエスタ先輩に伝えるんですか、 ! 」


「仕事だ、私情は挟むな グレース !

 しかし、恐いもの知らずだな クッキーも。

 公爵令嬢と言ってもクッキーはクッキーだったな 」


 グレースとベルシュタイン、シエスタやクッキーと同じ白い家出身の戦闘メイドと戦闘執事が監視していることに、テリーも当然ながらクッキーも気づく事はありませんでした。

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