第60話 天下†夢想の公爵令嬢 ③

【テリーside】


 クッキーの案は、ことごとく当たり俺の詩曲とクッキーの演劇は人々にウケて話題が話題を呼び連日が大盛況だった。


 だけど……


「曲のことは良く解らないけど、わたしも凄いと思うんだぁ~。

 脚本、演出、監督、演技、わたしって天才かしら ! 」


 鼻を膨らませながら、自画自賛するクッキー。

 学生時代から変わらぬお調子者ぶりに呆れてしまう。


「なあ、クッキー……

 本当にメイド時代は、クッキーの脚本みたいな感じだったのか?

 あのバーボン伯爵家での出来事なんだが、容易に信じられないんだが……」


 一応、クッキーの脚本に併せて詩曲を創ったけど、とクッキーの立ち位置が逆のような気がするのは俺だけだろうか ?


「う~ん、おおむねアンナ感じだったよ。

 わたしは、泣きごとなんて言わなかったけどね ! 」


 目が泳いでいるクッキー……


「ああ、やっぱり嘘だったのか……

 シエスタにバレたら大変なんじゃないか ? 」


「バレなきゃ良いのよ、バレなきゃ !

 シエスタって、面倒くさがりの癖に妙に完璧主義みたいな処があって、隙が少ないのよね。

 だから、わたしの失敗とかをシエスタのせいにした方が民衆にウケると思ったから立ち位置を逆にしたのよね。

 ほら、完璧な娘よりドジっ娘の方が魅力があるでしょう。

 シエスタだって、自分の人気が上がるんだから怒らないと思うんだ……たぶん、きっと」


 否、たぶん怒ると思うぞ、クッキーみたいに表情には出さないだろうが。


「なら、皿を割ったのは ? 」


「わたし」


「冬の洗濯物での泣き言は ? 」


「わたしは泣き言なんて言って無いわよ !

 只、わたしがイライザの下着を洗っている時にシエスタが、


『洗濯物は私がやるので、クッキーは庭掃除をお願いします』


 と言ったからメイドの仕事を分担しただけだよ。

 失敗は誰にだってあるのに……」


 失敗だらけのクッキーが信用出来ないんだが……


「何枚くらい破いたんだ、クッキーは 」


「え~と、最初はベッドのシーツカバーで、次は枕カバー、最後にイライザの下着を破いたら、シエスタに追い出されたのよ ! 」


 昔を思い出しながら興奮しているクッキー。

 そりゃ追い出されるだろうな。


「庭掃除くらいは真面目にやったんだろうな ?」


「最初は真面目に掃除をしていたんだよ、最初は。

 だけど、庭に咲き始めたお花を見たり、野良猫の跡を追いかけたりしていたら、時間が アッという間に過ぎてしまって……」


 ……ごめんなさい、シエスタ。

 本当にごめんなさい。


「それで迎えに来たシエスタに、


『庭掃除を頼んだ私が悪かったようですね。

 クッキーは、イライザお嬢様の部屋の整理をお願いします。

 


 って言われたから、イライザの部屋の整理をしたんだけど……」


「『したんだけど……』の続きは ? 」


 嫌な予感しかしないのは俺だけか ?


「イライザの部屋の整理をしていたら、ボロいぬいぐるみが有ったから、わたしが綺麗にしようと雑巾で拭いているウチに、ぬいぐるみのワタが飛び出しちゃったから、針と糸で縫ったら……

 何故か、手と足がクッツイてしまったから、ハサミで切り離そうとしたら、足クビを切ってしまった処をイライザに見付かってしまって怒らせてしまったのよね。

 そりゃ、わたしが悪かったけど、『クビ』は言い過ぎだよね、テリー ! 」


 同意したく無いんだが……

 意地悪な令嬢だと思っていたイライザ嬢は、案外マトモだった疑惑が出てきてしまった。

 話を変えた方が良さそうだな……


「いつまでも同じ演目では飽きられてしまうが、次の脚本は出来ているのか、クッキー 」


 俺の質問に目を輝かせながらクッキーは、


「バッチリよ !

 次はシエスタの恋のお話よ。

 アルフォンスに恋するシエスタ。

 それを応援する、わたし。

 女の子なら大好きな初恋物語よ !」


 確かに面白そうだが、後が恐い気がする……

 えっええーい !毒を食らわば皿までよ。

 こうなったら、最後まで付き合うぞ、クッキー !

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