第55話 シエスタとクッキー ②

【クッキーside】


 お姫様も良いけど、自由が成さそうなんだもの。

 実際、公爵の養女に成った時も貴族の礼儀作法など覚えるのに大変だったし、ダンスの稽古までして足腰が生まれたての小鹿みたいだったんだからね !

 だからこそ、王子のジークを見ていると大変そうだと感じるように成ったわ。


「王様、教えて欲しいのですけど、私のお母さんがお父さんと結婚して騎士爵に成ったのは、王様が結婚を反対したからですか ? 」


「違う、違う、私は妹の結婚を反対したことなぞ無いぞ !

 私の父、貴女の祖父が別の相手との結婚を考えていたようなのだが、それに反発して若き日のペパーミントと駆け落ちしたと云うのが事実だ。

 駆け落ちした理由が、

『結婚するならイケメンが良い ! 』

 と云うのだったから、尚更 父と喧嘩してしまってなぁ~。

 二人とも頑固だったから疎遠に成ってしまったのだ 」


 確か昔、お母さんがお父さんと結婚した理由を聞いた時、


「とにかく、イケメンだったのよ、ギルバートは。

 だからね、これは なにがなんでもモノにしないと と思って蒙アタックしたのよね。

 だから、クッキーも好きな男の子が出来たら、頑張りなさいよ !

 周りに遠慮していたら、いい男は全部取られてしまうからね ! 」


 なんて、言っていたなぁ~。


 だから、テリーと離れるのは嫌なんだよね。

 テリーと一緒に吟遊詩人をしながら世界を旅するなんて、ステキだと思うの !

 テリーのうたとギター、私のカスタネットの腕があれば、結構 稼げるはずだもん !



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


【シエスタside】


 ……完全に夢の世界に旅立ったクッキー。

 私は、そっと陛下にささやきました。


「クッキーお嬢様は恋に恋していますから、しばらくは様子見をした方がよろしいかと。

 今は、障害があればある程に恋の炎が燃え上がりますからね。

 現実を知れば熱は冷めるでしょうから、そこで助け船を出した方が上手くいくかと 」


「ウム、感謝する、シエスタ殿。

 ……実は、シエスタ殿に話があるのが呼び出した理由なのだが、ジュエリー王国の臨時政府をアルコール帝国の中に創ろうと思っているのだ。

 なので、シエスタ殿には……「嫌です ! やりませんよ、代表なんて ! 」


 どうやらクッキーの為に助言したことが、やぶ蛇に成ったようです。


「しかしのう、既に共和国に放った間者に吟遊詩人に変装して貰い、シエスタ殿、否 アメジスト王女の苦労話を少しだけ盛って広めておるのだ。

 お陰で、共和国内でのアメジスト王女の人気が急上昇した上に共和国の国民からもジュエリー王国復活の署名活動が始まっておる。

 現実はストリキニーネ達、共和党の独裁国家でも建前は民主国家を標榜しておるから無視は出来ないだろう 」


 クッ、先に外堀を埋めていましたか !

 流石、帝国皇帝。 やることがえげつない!


 道理で、ハイミー、グレミー姉妹が変な眼差しで私を回る見ていた訳ですね。


 私の平穏、スローライフは遠退くばかりです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る