第53話 シエスタ=カルアミルク ②

【シエスタside】


 上手くいった……なんて、フラグを建てる気にはなりません。


「やったね、シエスタ !

 オジサン達が追いかけて来ない内に帰りましょう ! 」


 クッキーがフラグを建てやがりました。



「姫様、アメジスト姫様、お待ちください !

 我々が悪かったのは認めます。

 謝罪なら、いくらでもしますから、我々の話を聞いてください ! 」


 ロデムと名乗った騎士が追いかけて来ました。


「聞きたくありません !

 私は、シエスタ=カルアミルクであってアメジスト王女ではありませんよ 」


 誤魔化せるとは思いませんが、ここにはおしゃべりクッキーが居ます。

 悪い娘では無いのですが、考えなしに噂を広める様子が目に見えています。


「ねえ、ねえ、シエスタ !

 誰かと勘違いしていると言うことは、私達が居た白い家の誰かがお姫様なのかな~。

 いいなぁ、いいなぁ~、私もどうせならお姫様に成って、皆にチヤホヤされたいなぁ~ 」


 ……一応、貴女クッキーもアルコール帝国のお姫様なんですけどね。


「チヤホヤと言うより美味しい食べ物を食べたいだけでしょう、貴女クッキーの場合 」


「いいでしょう !

 私、いくら食べても太らないんだから ! 」


 某医療ドラマの外科医みたいなセリフに、イラッ としますが我慢します。

 そんな事を言っていられるのも今のうちだけですからね。

 三十路を過ぎる頃には、……クックッ、楽しみですね。



「あのぅ~、私の存在を無視されると、流石に辛いので許して貰えるでしょうか ? 」


 ロデムと云う騎士は諦めずに粘っていました。


「私は、アルフォンス様の専属メイドです。

 ポイズン共和国やジュエリー王国には行きませんよ。

 大方、私を御輿にして ジュエリー王国の独立復興が狙いなのでしょうが、御輿に乗るつもりは無いのであしからず。

 特別に良いことを教えてあげましょう。

 共和国のアルコール帝国への奇襲作戦は失敗しました。

 元帥と沢山の兵士が逮捕されたので、共和国に残った兵士は少ないと思いますよ 」


 そう言うと少し考えたそぶりを見せたロデムが、


「重要なことを教えて頂き感謝します、姫様。

 こちらに二名の女性騎士を残して行くので、ご自由にお使いください。

 我々は、一端帰国して上司に報告をしてきます。

 姫様の為にも必ずや、独立を勝ち取ってみせましょう 」


 否、別に要らないのですけど……言うだけ言って行ってしまいましたね。


 残った女性騎士は双子なのか、そっくりでした。


「グレミー=ターコイズです。

 グレミーとお呼びください 」


「ハイミー=ターコイズです。

 ハイミーとお呼びください 」


 何故か、この双子姉妹騎士は、目をキラキラしながら私を見詰めていました。


 嫌な予感がします。



 学園に着くと校門前に帝国の王室専用の馬車が停まっていました。


 馬車の中からジークフリート王子が降りてきて、


「シエスタ !

 父上……皇帝がシエスタに会いたいそうだ。

 すまないが、私と一緒に城まで来て欲しい。

 頼む、頼みます、シエスタ様 !

 シエスタ様が来ないと父上に呆れられてしまう ! 」



 ……私の平穏は何時来るのでしょうか ?


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