第52話 クッキー・ペパーミント=ウイスキー公爵令嬢の一日 ⑥

【クッキーside】


 このまま、駄々だだねてればシエスタなら折れてくれるはず。

 なんだかんだ、シエスタは優しいからね。


「いい加減、駄々を捏ねるのを止めないとで怒りますよ、


 ビクッ !


 ヤバァ !本気の本気で怒っているわ、シエスタ。

 普段は感情を表に出すことをしないシエスタだけど本気で怒ると情け容赦ないから恐いんだよね。

 ここは大人しく言うことを聞くことにしよう。


「やだなぁ、冗談だよ冗談。

 ほら、テリーも一緒に帰るよ。

 ア~ア、せっかくのデートが散々だったね、テリー。

 次の休みは、やり直しデートに付き合ってね 」


 テリーは少し呆れた顔をしていたけど、ここは強引に話題を変えないとシエスタにお仕置きをされてしまうわね。


 私達が帰ろうとしたら、私を拐ったナルシスト騎士が、


「申し訳ありません。

 アメジスト王女殿下には、ジュエリー王国の独立の為に女王に就任して、我々と一緒に行動して頂きます 」


 そう言いながら私達を知らない騎士達が取り囲んでしまったわ。

 シエスタが王女で女王 ?

 この人たちは、絶対に誰かと勘違いしてると思うの !

 だから親切に教えてあげよう。


「 ねえ、ねえ、オジサン達は勘違いしてると思うの。

 シエスタは、私と同じ騎士爵の娘だから絶対に違うわ。

 だいたい、シエスタみたいな幼児体型の王女様は居ないと思うの。

 だから、オジサン達は、他の人を探すといいと思うんだ、わたし 」


「オッ オジサン !? …………


「幼児体型……クッキーィィィィィ~、後で学生寮の裏に来てくださいね。

 二人きりで、よ~~~く話し合いましょう 」


 驚いている オジサン騎士は、ともかく シエスタは何故 ? 怒っているのかな。

 只、このままだとシエスタのお仕置きフルコースに成りそうだから、どうしようかしら……


 そうだ !


「ちっ 違うよ、シエスタ。

 私が言ったのでは無くて、オジサン達がシエスタの悪口を言ったんだよ !

 だから、私は悪くないんだからね ! 」


 オジサン騎士達は、ギョ として驚いている。


 ゴメンネ、私もシエスタが恐いからオジサン達の犠牲は忘れないようにするね。


「とっ とにかく、アメジスト王女には 我々にご同行して頂きます !

 ガイア、オルテガ、マッシュ、姫殿下をお連れしろ ! 」


 若く無いオジサン達がシエスタを捕まえようとしたら、


「なっ、避けただと ! 意外と素早いぞ 」


 スルリと1人目のオジサンを避けたシエスタに、2人目のオジサンが抱き付こうとした。

 ヤダ、キモい !


 だけど、シエスタはジャンプしてオジサンを、


「なっ、俺を踏み台にしただと ! 」


 オジサンを踏み台にして、さらに高く空に飛んだわ。

 そして上空から声が聞こえてきた。


「スーパーァァァァ、サンダァーァァァァ……猫だまし ! 」


 パァーーーン !


 キックをすると見せ掛けて、身構えていたオジサン騎士の目の前で手と手を打ち合わせた。

 そして、がら空きに成った足払いをして転ばせてしまったわ。

 ……子供の頃、よく男の子達がシエスタに転ばされていたのを思いだしたわ。


 転んだオジサン騎士に手刀をあてて、


「これ以上やるなら、次は手加減しませんよ 」


 そう言い残して帰ろうとしたけど、


「シエスタ ! シエスタ ! 忘れモノだよ !」


 私を残して帰ろうとするなんて酷いよね。

 振り返らずに帰ろうとするシエスタを慌てて追いかけたわ !

 ふと振り返ると、オジサン騎士達が茫然としていた。

 女の子だからって甘く見るオジサン達が悪いんだからね !


「あっかんべーーー だ ! 」

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