第23話
「よっと」
勝利宣言した後、僕は玲香を開放する。
「……なんで、そんな物騒なものを持っているのよ」
「このご時世ですよ?物騒なスキルを持っている玲香と違い、僕には必須な護身道具だよ」
銃規制が厳しかった日本社会は遥か昔。
スキルの発言による世界的な混乱の中で他国からの侵攻に対抗するために急ピッチで遺物に進んだ軍拡。
そして、日本社会の絶望的な治安の悪化に、スキルを犯罪に使う能力者たちの存在のこともあり、自衛手段を強く追い求めるようになった日本国民の要望に応える形で銃規制の緩和が実行され、日本社会全体に今、結構銃が出回っている。
僕の持っている拳銃は絡んできた半グレを軽くボコって手にしたものだ。
「さて、と。玲香じゃ僕を押し倒せないことはわかってくれましたか?」
「……」
玲香は僕の言葉を聞き、表情を俯かせる。
「沈黙は肯定と捉えます。それではもう今日は遅いですから。家の方に帰りなさい。昨日、話した通り今日の朝。我々は戦闘を行うことになるのです。しっかり英気を養う必要がありますから」
「……え?」
僕の言葉を受け、玲香が驚愕の声を漏らす。
……彼女がそんな言葉を漏らすのも打倒だろう。僕の言葉はとどのつまり玲香を無罪放免で全面的に許すという意味なのだから。
「この件で僕は玲香を責めることも、態度を変えることもしません。あなたが己の欲望に従って行動するのも神がお許しになれるでしょうから」
本当は自分を押し倒した奴となんて顔も合わせたくない……しかし、僕はここでせっかく苦労の末に手にした信者を捨てるわけにはいかない!
涙を飲み、ここは玲香を許すしかない……ッ!!!
「ですが、僕が己の意思に従って君に抵抗するのも神は許してくれるでしょう。僕は抵抗し続けます……押し倒すことなんて二度と出来ないと思いなさい」
「……はい」
「次は本当に心の底から君に惹かれ、僕から玲香を求めたくなるよう……正規の方法でアプローチしてください。物騒なことはなしですよ」
ゆえに、僕は心にも思っていないことを玲香に告げることしかできなかった。
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