第17話

 これからの構想を止まることなく言い切ってみせた僕。


「は?どういうこと?私、何も知らないんだけど」


 そんな僕に対しての玲香の反応は実に辛辣なものだった。


「自分も昨日知りましたから」


 僕が多くのことを知ったのはつい昨日。

 教えられるはずがない。


「は?昨日?この女は昨日の今日でここにいるわけ?」

 

 そんなかっかしないで?


「私は一か月ほど前から知り合っていますが」

 

 一か月も毎晩煩悩を耐えてこの人の頭を撫で続けた僕はノーベル賞ものだと思う。


「は?何それ?聞いていないんだけど?」


 ……何故それを玲香に教える必要が?


「教えてもらえるほどの信頼がないのではないでしょうか?」

 

 ……どうしてそんな重い話になっているの?


「なんですって?あるに決まっているでしょ!」


 ないよ?信頼なんて一切ないよ?

 玲香にもレーシアにも空白にも信頼なんてないよ?こちとら軽い人間不信だぞ?信じれるわけないだろ?


「二人とも!いがみ合いは辞めて!」


 いがみ合いを始めてしまう二人の間へと僕は慌てて割って入る。


「僕は迷える子羊を導く神の代行者である教祖です。人より打ち明けられた悩みを他人へと漏らすことはありません!」


「でも!」


「でもじゃないです。黙っていたことは謝ります。しかし、僕には僕なりのこだわりがあるのです。決して玲香に対する信頼がなかったというわけじゃないから」


 嘘である。


「それなら……良いんだけど」


 だが、僕の嘘の技術はかなり高い……見破られることはまずない。


「ふんっ。どうでしょうね?」


「レーシアも!君も玲香を煽らない!同じ味方なんだから!」


「「違うが?」」

 

 ぴったりと声を揃う二人……なんでこの二人はここまで仲が悪いの?


「同じなの!良い?僕が先ほど作戦は明日やるから!今日は二人とも早く帰って家で英気を養っておいてね!良い?」


「は?私行くって言っ……いや、行くから。何でもない」


「玲香ならそう言ってくれると思っていたよ!そういうことだから!二人ともお願いね!はい!ということで今日は解散!」

 

 僕は二人が有無を言わないよう勢いで押し切ろうと声を張り上げ、解散を宣言する。


『……苦労しておるのじゃな』


 なんで空白が一番楽しているんだ?おかしくない?もっと忙しくあれよ、神。

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