第9話

 ゴロゴロと転がる僕の頭。

 床の染みとなってしまった僕の体。


「……ぁ」

 

 そして、僕が座っていた真後ろに立っている女性。


「いきなり攻撃するとは野蛮なお人ですね」

 

 スキルによって死ぬことがない僕はあっさりと首から体を再生し、立ち上がる。


「え?え?え?」

 

 体が染みとなってもなお当たり前のように立ち上がる僕を見てさっきまで寝込んでいたはずの女性は困惑した表情を浮かべている。


「我が神は己が信念に基づいて行う行為をお許しになれるでしょう……しかし、そんな表情で力を振るうものではないですよ?」

 

 僕はいきなり僕を攻撃し……呆然と、なぜか瞳より涙を流す女性の方へと近づいた僕は彼女へと優しく声をかける。


「どうやら、お疲れのようですね」

 

 女性の涙を指でふき取った僕は彼女を優しく抱きしめる。


「あなたに神の祝福を……人は疲れるものです。立ち止まり、その場に止まるのも一つの選択ですよ?」

 

「……ぁ」

 

 僕に抱きしめられている女性の体が震え始める。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああんッ!!!」

 

 そして、そのまま女性は僕の胸の中で大きな声を上げて泣き出してしまった。


「……???」

 

 はて、と。

 助けた女性に殺されたと思ったら、その女性は今、僕の胸の中で泣いている。

 一体合切、これは何が起こっているのだろうか?

 いや、僕が迷える子羊を導く教祖モードで彼女に接しているから、という話なのだが……。


「……」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああんッ!!!」

 

 僕は一体どうすればよいのでしょうか?

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