第3話
玲香は金がなくて高校を中退した僕と違ってちゃんと高校に通っている女子高校生である……ちょっと体をガブガブし、自分を半殺しにした娘を寛大な心で許した両親を持った女の子である。
僕とは格が違うのだ。
しばらく抱き着かれまくった後、彼女は高校に向かうため僕の元から離れていった。
「ふぅー」
『よし!邪魔な女子もいなくなったことじゃし、新たなる信者の獲得を目指して行動を開始するのじゃ!』
「……自分の信徒である人間に対する対応じゃないだろ、それ」
『あの女子は一応我にも信仰心を持っているのじゃが、それ以上に汝へ激重感情を抱いているせいで我の方に来る信仰心が微妙なのじゃ。ゆえに、我にもっとどっぷりとした信仰心を抱いてくれる信徒が必要なのじゃ!未だに輝夜は我の信者になってくれぬしのぅ』
「誰がお前なんぞを信じるか」
僕は空白に悪態をつきながら家を出る……僕の家。高校中退、信者一人のカルト宗教の教祖というまさに終わり申している僕の持っているほぼ唯一と言っていい財産が生前の両親が購入していた大きな家である。
遺産は全部親戚に食いつぶされたが、家だけはなんとか死守した。
「……いつものと行きますかぁ」
僕が両手に持つのは箒と袋。
掃除の際に仕える神器である。
「おはよう。輝夜ちゃん。今日も掃除?偉いねぇ」
掃除をしていると、ここら辺に住んでいるおばちゃんに話しかけられる。
「おはようございます。これくらい当然のことです。パートの時間でしょうか?」
「えぇ。そうよ」
「そうですか。頑張ってください。微力ながら、あなたに良いことがあるよう……神に祈りを捧げましょう」
「あらやだ。祈られちゃった。きっと良いことあるわね」
「えぇ。当然です。それでは、いってらっしゃい」
「行ってくるわね」
機嫌よく仕事場へと向かわれるおばちゃん……。
『毎日やっておるがこの活動に何の意味があるのじゃ?』
「……日本では宗教に良いイメージを持っている人が少ないんだ。高校生でありながら新しい宗教を作ろうとしている僕は怪しい奴以外の何者でもない。だからこうして良いイメージを持たれるように奉仕活動に勤しみ、近所付き合いをしているんだ。それに、毎日僕のような美少年に祈られて嬉しくないご婦人は多くない。この地道な活動が信徒を増やす活動の一歩になるんだよ」
僕は空白の疑問に対して小さな声で返答する。
『お主……自分で美少年と言うのか?』
「ただの客観的な事実だろうが」
僕は震えながら告げる空白に対して吐き捨てるようにそう口を開いた。
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