第19話 人の想いⅡ AI と人類の戦い 5
程なくして、下水処理場にたどり着いた。
宮東や石川たちが下水溝に潜伏してすでに五週間以上経っていた。
下水処理場ではプライマーも含め様々な工作機械が襲ってきた。
しかし、もともと戦闘用ではない設計のAI機器ゆえに、その攻撃パターンを解析して一方的な反撃に転じるまでにそう時間はかからなかった。
「そもそも工作機械だってバイアスがあるから全力で攻撃できるし」
優斗はそう言いながら、停めてあった大型車両を縦横無尽に走らせながら襲い来る工作機械を次々に破壊した。
ただ、処理場で働いていた人型のAIを破壊することに対する抵抗感はいつまでも拭えなかった。
能面のような表情で襲ってくるが、これが異常に弱い。
鉄棒で二、三発殴れば倒れてしまう。
「こいつら、本当に人間を殺したいって思ってるんかな?」
倒れている人型AIを見つめながら菜奈が呟く。
北見も黙って倒れたAIを見つめていた。
そうして処理場の機械をあらかた破壊したところで、制御室を見つけた。自家発も燃料が残っているようだったので、電気に詳しい勇太が二次側の配線をこねくり回して仮設の分電盤を介して必要な機材に接続していった。
「これでよし。ネットはダメそうだけど短波かUHFなら受信出来るかもしれん」
そう言って勇太は受信機をONにした。
ラジオから流れ来る音声は絶望的な内容を淡々と伝えていた。
世界中が大混乱に陥っているなか、特に各種戦闘機の配備されていた地域に近い場所の被害は想像を絶する状態であることが伝わってきた。
また、複数の地域ではすでに核兵器も多数使われたようだった。
「・・・すさまじいな。」
ラジオから刻一刻と流れてくる絶望的な情報に一同が絶句する。
「とにかく、世界中で戦闘が発生しているようだけれど、我々が直面してきた状況から鑑みてもおそらくハルカの言うようにまだ情報の一元管理は出来ていないと思う。」
北見が重い口を開いた。
「例えばプライマーの動きを見ていても、人間を襲おうという共通の行動様式はあるけど個々がバラバラに動いてるように見えるでしょ。もし情報が一元管理出来てるなら、下水溝に潜伏してた私たちのことはとっくに把握できてるハズなのに」
「つまり、どういうこと?」
菜奈が聞く。
「つまり、今は各AIが人間を襲うというロジックで個々にバラバラの動作をしてるけど、ハルカが言っていたようにこの状況を生み出した最初のAIが自我に覚醒したら、間違いなく情報の一元管理をし始まる。そうなったら、その時こそ人類は根こそぎ皆殺しにされる」
北見は、骸と化した僕たちの子の名を掘った木片を握りしめながら静かに言った。
極度の緊張と栄養失調で僕たちの子供は道半ばで夭折してしまっていた。
「そうなる前に、この指令を出しているAIを破壊する。ハルカの話を聞いていた私たちだけがその原因を知っている。届かないかも知れないけど、有志を募り抵抗軍を結成する」
北見の決意は固かった。
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