第18話 魔物の村で
魔物たちの住む村に着いてから、リーチは毎日沢山のことを彼らに伝えた。
食べ物のこと。衣服のこと。
そしてそれらを得るために必要な
魔女としての
彼らは非常に
「これだけ頭のいい子たちなのに、どうしてこんなに知らないんだろう?」
リーチは不思議に思ったが、時間をかけて彼らと対話を続けるなかで判明した。
それは、下級魔物に分類される者たちというのは本来知性を持たない下等な生物のなれの果てであると言われているが、まれにそんな彼らから突出した能力や知能を持った個体が生まれるのだという。
そしてそんな個体同士で子を成すと、その子にもそうした資質が遺伝して更に知性の発達した個体となって……と、そんな交配を何世代も繰り返すことで言語を理解し道具を使える高度な知能を得た者たちが出てくるのだという。
しかし、そうした下級魔物は異物として忌み嫌われて迫害を受けてきた。
同種からは呪われた子として、人間からは脅威として。
そしてこうして人目につなかない山奥や洞窟の奥底で迫害を逃れひっそりと暮らしてきたという。
そんな人間や同種にすら
「わ、わたしはそんな大層な人間じゃ……」
口癖のように
リーチのために掘っ立て小屋を建てるもの。
質素、という
皆、リーチへの感謝と共に彼女がいつまでもこの村に居てくれることを願って懸命に尽くした。
やがて村の周囲には用水路が張り巡らされ、
また、非常に初歩的ながらリーチの持ち込んだ医学知識や栄養学の伝授によってお産の際に命を落とす幼子や母親が激減、続いて死亡率が高い幼齢期を無事に生き抜く子供の数が急増したことにより村の人口も大きく増加した。
また、これまでの環境では
村はやがて街となり、街を造るために必要な技術者や労働者が増えることで飲食などを提供するギルドのようなサービス業を生業とする者たちも現れた。
リーチが来てから三年が経過するころには、噂を聞いた近隣の土地からも続々と魔物や人外が集まって、やがて大きな街を形成するようになっていた。
白い土壁に赤レンガの屋根が乗る家々があちこちに建てられ、市場では様々な姿かたちの魔物や人々が行き交って、見たこともないようなフルーツや郷土品が売られている。
街中が活気を帯びていた。
そんな彼らの姿を見て、リーチもこの村で暮らしていくことを真剣に考えはじめていた。
「ここの人たちはみんな私を大事にしてくれる。……未だ魔法は使えないけれど」
リーチの考えを悟ってか、肩にとまった翼竜もクウクウと鳴いた。
「そうね、しばらくここに居てみんなと一緒に頑張ってみるのもいいかも知れない」
そう気持ちを決めてしまうと、急に背筋がしゃんとする。
「先生! リーチ先生! もう授業はじまっちゃうよ!」
駆け足で学校に向かう、様々な容姿の魔物や人外の子供たちの声を背中に受けながら、今日もリーチは街の中央に建てられた学校に向かうのだった。
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