第1話 よい夢を!

「……ただいま」


 が、アーデアに転生してから約八年ほど経ったある日。


 アーデアから南西に約三千キロガル(三千キロメートル)ほどのところにある古い城壁都市ラウリスの巨大な白い壁と黒い鋼鉄製の扉を前に、カーキ色のワンピースに焦げ茶色の革靴を履いて、やはりカーキ色のとんがり帽子を深く被った赤髪の小柄な魔女が小さくそう呟いた。


 道化のマスケラ仮面を被っているので顔は見えないが、彼女は遥か辺境の地から遥々数ヶ月をかけて荒野を、山脈を越えてここにやって来た。


「十年ぶりのだ」


 肩に乗せた小さな翼竜を従えて、巨大な城壁を見上げながらその魔女が呟く。


 この荘厳な城門と城壁は、数百年の長きに渡り外敵から街を護り続けてきた、ラウリスの象徴でもあった。


 夜の帳が下りてきて、辺りがかがり火に照らし出されるような時分になって、ようやく行動を共にしていた商人たちとともに手続きを終えて、巨大な城門をくぐり入城した。


 街に入るなり、酒と尿の鼻を突く臭いが街の歓楽街から流れ込み、あちこちで笑い声や罵声が聞こえる。


「さぁさぁ早く宿に行かないと。酔っ払いに絡まれちまうぞ」


 周りにいた商人たちが、そう言って歩を早める。


「変わってないな、何もかも」


 嬉しいような、少し寂しいような気持ちで商人に負けじと早足で歩いていると、見慣れたしょんべん横丁の入口で丸くなっている浮浪者が目に入る。


「浮浪者なんて珍しいな。ラウリスはそういう人たちに厳しい街だったはずなのに」


 歩を緩めて彼を見ていると、その浮浪者にギルドから出てきた赤い顔の冒険者が絡み出した。


「まだ居んのか、このクズ野郎!」


 そう言って浮浪者の男を蹴り飛ばす。


 蹴り飛ばされた男の上着から小さな巾着袋がちぎれ飛び、野次馬の群れの中にいた小汚い身なりの女の足元に転がり落ちる。


 女はそれを拾い上げるとクンクンと臭いを嗅いで……

 クシュンと小さくくしゃみをすると、それを自分のポケットにしまい込んで雑踏に消えていく。


 蹴り飛ばされた男は、もんどりうって地べたに這いつくばった。


 泥だらけになりながら、それでも手にしていたずた袋を手繰り寄せて必死に何かを呟いている。


「えぁ!? なに? なに言ってんだ?」


「お……、お、もうぅぅ…………」


「あぁ!? なにッ?」


 冒険者の仲間たちと思しき連中も集まってきた。


「くっせえなぁ。こいつ、いつまでこの街にいる気なんだよ!」


「おい、そういやこいつ、いつも変なもん抱きかかえてるよな?」


「なんだよ、この袋は? 何が入ってやがる?」


 仲間の一人が、浮浪者の抱えていたずた袋を取り上げる。


「な、なんだこの臭いは!? くっせぇ!」


 その凄まじい悪臭に、思わずその袋を握る手を放す。


 酔っぱらいの手を離れた袋は、べちゃっという不快な音を立てて地面に落ちた。


 その衝撃で袋の中身が外に飛び出す。


「キャー!!」


「ううっ! なんだ、こりゃ!」


 騒ぎを聞きつけて集まってきた人々が悲鳴をあげる。


 そこには、今まさに屠殺した動物から切り取ってきたかのような赤黒い肉塊があった。


 しかもよく見ると……もぞもぞと微かに動いている?


「こ、こいつ! 魔族か魔術師か!?」


 冒険者たちが一斉に剣や武器を手に取る。


 しかし、その浮浪者はそんな彼らには目もくれず、その赤黒い肉塊を取り戻そうと必死に這ってゆく。


「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁーーー!!」


 その赤黒い肉塊を抱きしめて、絶叫にもよく似た咆哮を上げて嗚咽する。


「こ、こいつ! みんな、こいつをぶっ殺……!」


 誰かがそう叫んで剣を、槍をその浮浪者の男に突き立てようとした刹那、それを見ていた観衆の中から小さな影が飛び出した。


「おい、やめろっ!!!」


 その声が発っせられると同時に、黒い小さな翼竜を肩に乗せて道化のマスケラ仮面を付けた魔女が、剣を握った冒険者と男の間に割って入る。


「あの時の彼だ!」


 その魔女は思い出した。


 ――数年前にライズ・リーチで出会った彼に間違いない。


 ――辿り着けたんだ、ここに!


 それまでガヤガヤとしていたその場に、一抹の静寂が流れた。


「彼をいたぶるのはヤメろッ!」


 魔法使いの恰好をしたその女は、浮浪者の男が泣きながら抱きしめている肉塊を指さしながら言う。


「わ、わたしは知っている! こ、これは、魔法によって姿を変えられた何かだが無害なんだ!」


 頭をよぎる疑心暗鬼を払拭するかのように、彼女は声を張り上げた。


「おそらく、そうだ!」


「……おい、魔女さんよ。おそらくってなんだよ?」


 あっけにとられた皆がきょとんとしていると、剣を構えた酔っぱらいの冒険者が尋ねた。


「こ、この者からは邪悪なオーラを感じないじゃないか。それに、こ、この肉塊には見覚えがある!」


「見覚えがあるって……。それじゃなんて魔法だよ? それにあんた、誰だ?」


「こ、この魔法はまだ分からない。分かっていないんだ。だが信じてほしい。本当に無害なんだ」


「ええい、まどろっこしい。つか、あんたここらで見ない魔女だが誰なんだ?」


「わ、わたしは……」


 詰め寄られた魔女が、一瞬躊躇する。


 ――ここで私の名前を言うわけにはいかないか。


 ――というか、こいつタナトスじゃないの。大柄の体に大層なラメラ―アーマーなんかで着飾って。ちょっと勘違い野郎だけど、シラフだと優秀な冒険者。なのに、相変わらず酔うと面倒な男ね……。


 そんなことを思いながら魔女は言った。


「わ、わたしは……ア、よ(ごめんなさい!)。辺境の魔法使いなの」


「アマリリス? 聞いたことねえなぁ」


「それに、どっかで聞いたことがある声だ」


 周辺が再びガヤガヤと騒がしくなる。


「まさか、こいつもグルなんじゃねーのか?」


「だなぁ。聞いたこともねぇ魔女だ」


「しかもこいつ、あんな真っ黒い黒竜を連れてるぞ! 縁起でもねぇ!」


「その道化の仮面も怪しいな! 仮面を外せ!!」


 ふたたび群衆の雰囲気と雲行きが怪しくなる。


 と、そこへ商人の一団が割って入ってきた。


「やぁやぁやぁ、皆さま! ウチのおがご迷惑をお掛けしてしまって大変申し訳ございません。いやぁ、我々は辺境の小さな村からの行商でして」


「お嬢は、こうした大きな街は初めてでして、少し舞い上がっておるのでございますよ」


「な、なんだ、お前たちは?」


 タナトスと呼ばれている男が、酔ってプルプルと震える剣先を商人に向け直しながら尋ねる。


 商人は、そんなタナトスたちに深々と頭を下げてうやうやしく敬礼をしながら言った。


「先ほども申しました通り、我々は旅の行商にございます。偉大なる領主ランゲルド様がお治めになられている、この高名な大城壁都市ラウリスを一目見ようと遠路はるばる訪れたのでございます」


「そして、今日は宿泊先の『空飛ぶキツネ亭』を貸し切っております。この騒ぎへのお詫びと街の皆さま方とのご親睦も兼ねまして、そこで酒や料理をご馳走致します!」


 その声に皆がはっとする。


「お、おい!マジかよ!? あの王族ご用達の『空飛ぶキツネ亭』かよ!?」


「お、俺たちが行っていいのか!?」


「はい。もちろんでございます。そのための許可は頂戴しております」


 そう言って、商人の一人が領主ランゲルド家の紋章が刻まれた証文をうやうやしく見せる。


「こちらは偉大なるランゲルド様の勅令を拝領した通行手形にございます。我々はそちらの様とともに遥か西方の辺境より貿易のためはるばる旅してきた者どもにございます」


 その話を聞いた群衆から再び、おぉ! という感嘆が漏れる。


「従いまして、我々は到着の祝いにとランゲルド様の許可を得て『空飛ぶキツネ亭』をお借りしたのですが、親睦を深めるちょうど良い機会です。どうでしょうか、皆さまも我々の到着の祝杯をご一緒していただけないでしょうか?」


 商人の機転を利かせた即席の提案に、群衆がわあーと喜びの歓声を上げた。


「なんだ、タダ酒か!?」


「おうよ、そこの御仁たちがあの『空飛ぶキツネ亭』でご馳走してくれるんだとよ!」


「ほ、ほんとかよ!! そりゃあ一大事だ! おい、ギルドの連中にも声かけてやれ!」


 一触即発の雰囲気だった群衆の雰囲気が、一気呵成にお祭りムードになる。

 こうした、単純明快で切り替えの早いところが冒険者の良いところであろうか。


「さぁさぁ、皆さまどうぞ、どうぞ!」


 そうして商人が通行手形を懐に仕舞ながら、アマリリスを肘でつつく。


様もどうぞこちらへ」


「あ、ありがとう。助かった」


 アマリリスがそう言うと、商人が能面のような笑顔を見せながら言った。


「お話、あとで詳しくお聞かせ下さいね」


 そして、商人はアマリリスの傍らで赤黒い肉塊を愛おしそうに抱きしめて泣いている浮浪者の男のそばに腰を下ろすと男に声を掛けた。


「一緒に行きましょう。何か腹に入れていくといい」


 思いやりの込められたその言葉に、男が顔を上げる。


 垢で煤けた真っ黒い顔、ひび割れだらけの手足から相当の年齢かと思われたその風貌に反して、黒髪の間から幼さすら感じさせるヘーゼルカラーの瞳が見えた。


 その瞳を見たアマリリスは、強い既視感と懐かしさを覚えた。


 ――あの街であの時出会った以外、なにも知らないはずの人なのに、なぜ?


 赤黒い肉塊に優しく言葉を掛けながら、それはそれは愛おしそうに優しくそれをずた袋に戻してゆく男の禿げあがって傷だらけの後頭部を見つめながら、アマリリスは思う。


 ――彼もたくさんの苦しみを経験してきたのだろう。


 そんな彼とともに、商人たちは『空飛ぶキツネ亭』へ向かった。


 ところで、『空飛ぶキツネ亭』とはいにしえの大魔法使いが街外れの崖に建てた古城で各国の要人を迎えるための迎賓館の役割も担う、城壁都市ラウリスを代表する宿泊施設兼酒場である。


 要人が居ないときは、領主ランゲルドの許可を得た旅の行商人などが宿泊に利用していた。


 ここは、民間人や冒険者などは特別の許可がなければ敷地に入ることも出来ない場所であった。


 今回は、『空飛ぶキツネ亭』の特別の計らいで街の人々が飲み食い出来ることになったのだが、『アマリリス』の騒動で急ぎその許可を取りに向かった商人も首をかしげるほど、あっさりと了承を得られたという。


「俺たちみたいな田舎の商人風情が、なんでこんなにあっさり許可がもらえたのだろう?」


 いぶかしがる商人を横目に、アマリリスが軽快に答える。


「今はいいじゃない。おかげで街の人たちと親睦をはかる絶好の機会も得たし」


 そうは言いながら、アマリリスも思う。


 ――私も、けれど、『空飛ぶきつね亭』なんて初めてね。


 そんなことを考えながら、ずた袋を抱いてとぼとぼとついてくる男を見た。


「彼の話も聞けそうだし」


「この出費は大きいですよ、アマリリス様」


 やれやれと首を振りながら、溜息をついて商人が言う。


 やがて目の前に白い大きな古城が見えてくる。


 大きな崖にへばりつくように築城された白い外壁に設けられたたくさんの窓から、温かみのある淡い蝋燭の光が漏れて幻想的な雰囲気を作り出していた。


「さぁさぁ、『空飛ぶキツネ亭』に到着ですよ」


 やがて目の前の巨大な鉄扉が開くと、わぁわぁと歓声を上げて冒険者たちが一斉に飛び込んだ。


 一階の大宴会場には、目を見張るようなご馳走や様々な種類の酒が山のように置かれていた。


 『空飛ぶキツネ亭』に連絡をしてからの、あの短時間でこれを用意したのか? といぶかしがる商人たちを尻目に冒険者たちは目を輝かせている。


「こ、これ全部飲み食いしていいのか!?」


 冒険者たちが尋ねると、黒いタキシードの執事が笑顔で言う。


「どうぞ、どうぞ。心ゆくまでご堪能下さい」


「うおぉー!! やったー!!」


「祭りだ、祭だー!!」


「辺境の商人殿に乾杯ー!!」


 皆席に着くなり浴びるように酒を飲みはじめ、料理をむさぼりはじめた。


「まったく、冒険者というヤツは……」


 半ば呆れるように彼らを見つめていた商人たちに、執事が声を掛ける。


「お越し頂いてありがとうございます。早速でございますが、当館の主人も皆さまとお話がしたいと申しております。最上階のお部屋をご用意したのでぜひお越し願えますか?」


「おぉ! この館のご主人とお会い出来るのですか!? それは是非もない!」


 商人たちが口々にそう述べる。


「そ、それじゃ、私は彼と一緒に下でご飯を……」


 アマリリスが気後れして浮浪者の男とその場を去ろうとすると、執事が言った。


「いえ。あなた様も、そちらのお連れの方もどうぞお越し下さい、様」


 が、はっとして執事の顔を見る。


「どうして、私の名を……」


 執事は少し困ったような笑顔を見せて言った。


「私たちは、この街の方々とその事情に、少しだけ詳しいのですよ」


 リーチや商人たちが案内された最上階の部屋は、魔法使いの部屋をアレンジした小さなバーのようになっており、数人の先客が思い思いに酒をあおっている。


 彼らがそこに入ると、先客たちが皆振り向いたが部屋が薄暗くて顔がよく見えない。


「さぁ、こちらへ。ようこそお越し下さいました」


 商人たちが席に着くと、カウンターの奥から全身黒一色に統一されたドレスととんがり帽子、それにチャンキーヒールでコーディネートされた、齢二十代後半から三十代前半に見える長身のスレンダーでそれは妖美な黒髪の魔女が現れた。


「ようこそ、『空飛ぶキツネ亭』へ。店主のフェルメーナです」


 そう言って、白くきめ細やかな肌をした手を差し出す。


「おぉ、これはこれは……」


 商人たちが皆顔を赤くして握手に応じる。


「まったく、これだから男ってのは!」


 リーチが少し怒ったふりをしていると、フェルメーナが近づいてきて握手を求めた。


「初めまして。あなたがリーチね」


 そして、リーチの目を見ながら言った。


「あなたがこの街を出て行ってから十年の歳月が流れたけれど、その後はどう?」


「魔法は使えるようになったのかしら?」


 その言葉に、商人たちがぎょっとしてリーチとフェルメーナを見る。


 リーチが観念したように、ラウリスに到着してから片時も外すことのなかったマスケラ仮面を外した。


「……最初からお見通しだったのね」


 そう言って、下を向いた。


「じ、十年前? え、ま、魔法がなんだって……? だ、だって魔物の街じゃあんた……」


 商人が口を挟む。


「ごめんなさい」


 ――だましたわけじゃない。だけど……


 リーチは下唇をきゅっと噛んだ。


 フェルメーナは抽出した茶に詠唱を与えながら、リーチとリーチの横で肉塊を撫でている男を見つめながら、優しく言葉を紡ぐ。


「ごめんなさい。あなたを責めるつもりはないの。ただ、このやり取りが必要だっただけ」


 そして、その茶を彼らに差し出す。

 リーチの肩に座る小さな翼竜にも、肉の切れ端を与えた。


「これを飲みなさい。飲んだら少し落ち着くわ」


 そして、商人たちにはワインを差し出す。


「あなたたちはこれを。さぁ、お話を聞かせて」


 フェルメーナはワインを注ぎながら、とつぜん驚くべきことを口にした。


「今夜、ラウリスは地上から消滅する」


「そう歴史書に記録される日になるの」


「……え!?」


 その場に居た者たちが一様にして目を見開いて彼女を見た。

 フェルメーナはワインを一口含んで、それを飲み干したのちに言葉をつづけた。


「最近、魔王軍がある魔法兵器の開発に成功した。この兵器は音よりも早く飛翔して、その威力は一発で街を消し飛ばすほどの破壊力があって、一度放たれたが最後、もう誰にも止められない」


 カラン、とフェルメーナの持ってるグラスの氷がくずれる音がした。

 下階では、酔った冒険者たちがぎゃあぎゃあと大騒ぎをしている陽気で賑やかな音がする。


「それが今夜、魔王軍によってこの街に放たれる。いつどこから放つのかは分からない。でもそれが炸裂して街をがれきに変えたあと、大挙して押し寄せた魔物たちに蹂躙されて、ラウリスは地上に如何なる痕跡も残さずに消滅する」


「今夜はそういう夜になるの」


「なんでそんなことが……」


 思わずリーチが呟いて、思う。


 ――なぜ、彼女はこれから起きることが分かるのか。


 そして、下で騒いでいるタナトスたち冒険者の喧騒けんそうを耳にしながら思う。


 ――それが予知能力で見た確証のない未来の出来事であるとしても、それが彼女のなかで可能性として排除できないならなぜ街の人々にそれを伝えない?


 浮浪者の男は、相変わらず憔悴した様子で赤黒い肉塊に何かを呟いている。


 そんなリーチと男を見つめながら、リーチの思いを見透かすようにフェルメーナは言った。


「それは、今、ここにあなたたちが来たからよ」


「……え?」


 リーチには訳が分からない。


「さぁ、だからもう気兼ねする必要はないの」


 そう言って、フェルメーナが初めて微笑んだような表情を見せた。


「見せてちょうだい。あなたたちが今日ここに至るまでに歩んできた、長い長い旅の物語を」


 フェルメーナが魔法の詠唱を始める。


 すると部屋中に八百万やおよろずの花の香が漂ったような芳香が充満し、その場に居た全員が夢心地の睡魔に誘われてゆく。


「フローラル・ライラ。夢のなかで他者の記憶を共体験することによって、その場に居る者の経験を共有できる古代の瞑想夢魔法よ」


 心地よい睡魔の海に沈む直前、リーチはあの男を見た。


 眉間に深い深い皺を寄せて苦悶の表情を浮かべ続けていた彼が、背負う苦しみから解き放たれたかのように穏やかな顔をして目を閉じていた。心なしかあの赤黒い肉塊もその動きが穏やかになっている。


「おやすみなさい。そして、導いてね」


 フェルメーナの優しい声が微かに聞こえる。


「私たちが選ぶべき道を。そして歩むべき未来を」


 果てしなく心地よいフェルメーナの詠唱を耳に、その場に居た者たちは深い深い眠りに落ちていった。

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