第22話お菓子と子供
「あぁ~酔った。乗り物苦手だわぁ~。」
到着するなりキンピラーノは気だるそうにつぶやく。
キンピラーノの姿を見つけるなり子供達が駆け寄ってきた。
「おかえりなさい!おかえり~!」
あっという間に人だかりができると手下に命じて子供たちにお菓子を配る。
もちろん、その中にはマズーの姿もあった。
よく見ると、お菓子と一緒にひとりひとりに何か手紙のようなものを渡しているようだった。
なんだあれは?
子供たちはお菓子を受け取ると思い思いの場所で手紙を読みだした。
片手にお菓子をもって楽しそうに読んでいる。
戻ってきたマズーに話を聞くと、この町で姿を見ることがなかった若者達。
彼らのお兄さん、お姉さん、あるいは両親からの手紙だという。
キンピラーノはセントラルの圧政に対抗するため、この町から石炭を運ぶ途中のどこかに秘密の『たたら場』を作り武器を蓄え訓練をし、『その時』に備えているのだという。
この町の若者たちも子供たちの未来のため『たたら場』で生活していた。
キンピラーノはこの子供達との絆を強めるため、苦手な列車に乗って各地を回っていた。
それは地方の生活を良くしたいという思いと自らのファミリーの影響力を強めたいという彼の野望も含んでいた。
キンピラーノは炭鉱の親方。つまりマズーの親方と何やら話しているようだ。
二人とも強靭な顔面を持ち、顔面の濃度とは対照的に髪は薄味で二人並んだその姿は金剛力士像を思わせた。
「留守中に何か変わったことは?」
「特に無いな。あぁ、そういえばマズーの坊主のところに妙な女が来ていたな。」
「女?マズーの奴!もう女作ったのか!?やるなぁ。あいつも。」
親方は苦笑いを浮かべて
「まあ、自分で確認してみろいっ!」と言ってこちらを指さした。
キンピラーノはこちらをジロッと見ると、のっしのっしと歩いてきた。
いよいよご対面だ。
神様と山口君 Qさん @qsanqsan
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