第20話野菜と私

マズーの家でお世話になり3日がたった。

「そういえば全く追手は来ませんね?というか、おばさん何かやばい事やったの?」


「いや。別に思い当たる事はないんだけどね。そろそろ来る気がするのよね~。」


マズーは本当にいい子だ。私のことを心配し炭鉱の親方の家から番犬も借りてきてくれた。

『あずき』という名前のその犬は、体こそ大きいが非常にのんきな顔をしていて番犬としては少し心もとない。

が、その気持ちがうれしいではないか。きっと親方の奥さんは餡子が好きなのね。


「ああ、そういえば今日は食料を積んだ列車が来ますよ!」

マズーが声を弾ませる。

どうやらセントラルから定期的に列車で食料や必要な物資が運ばれ、折り返し石炭が運ばれているようだ。


マズーだけではない。町の人々がどこか落ち着かない様子でソワソワしている。

特に子供たちは。


私は例のバケツに水をやりながら

「ずいぶん嬉しそうだけど何かあるの?」と尋ねる。


マズーはもったいぶって「秘密だよ!」と。 

続けて「やっぱり芽は出ないね~。」と。


私はゆっくり目を閉じ胸に手を当て早く芽を出せ~と祈りをこめて

「ポンっ!」

バケツも

「ポンッ!」


「うわぁぁぁっ!生えた!生えた!」マズーが声を上げる。

「すごいよ!すごいよ!」興奮してひっくり返るマズー。


あっ・・・。芽が出ている!これはいったい・・・。

これは私に与えられた不思議能力なのだろうか?


マズーが言うには胸に手を当て祈っている時に胸のあたりが青白く光り、一瞬おじさんの顔に変わったと思ったら次の瞬間、ポンッ!と芽が生えたのだとか。


ひょっとしたら、この力を使って町を助けろ的な先生のメッセージかもしれないな。

そう思っていると遠くから列車の汽笛が聞こえてきた。


きっと誰かキーマンが乗っているに違いない。

私は静かに列車の到着を待った。













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