第19話炭鉱の生活

「そういえば、おばさん誰かに追われてるって言ってなかった?」

例のパンをかじりながらマズーが言う。


「そうなのよ・・・。私の勘では誰か追ってくるはずなんだけど。」


「ふーん。」

「僕はこのあと炭鉱の手伝いに行っちゃうけど。おばさんはどうする?」


「そうねぇ・・・。」

本当に誰か追ってくるなら隠れていた方が良い。しかし、誰かに見つかることで物語が進んでいくなら・・・。うーむ。


「まあ留守の間に部屋は好きに使っていいからさ。とりあえず、僕もう行くね。」

マズーは身支度を整えるとせわしなく出かけて行った。


少し町を散歩してみようかしら。

私はのんびりと町の方へ散歩に出かけた。


レンガ造りの古い町並みの店の中に食品を扱っている店があった。

牛乳や卵、キノコの類は普通に並んでいるが野菜に限っては、切干大根のように乾燥された野菜のチップのような物が皿の上に積まれていて量り売りされているようだった。


「新鮮な野菜は無いんですか?」

店主に訪ねてみた。


「はあ?ある訳ないだろ!仕入れたって高くて売れねぇよ。」

「あんた・・・見ない顔だが・・よそ者かい?」

店主はまるでスパイでも見るような目で私を見る。


あぁ閉鎖的な田舎の小さな町で経済的にも物理的にも圧力を受けているから、よそ者には冷たい感じだなぁ。


それにしても、なぜこの町では野菜が育たないのだろうか?

マズーの話では大きな戦のあと急に野菜が取れなくなったと。


大戦、セントラル、発芽。

謎を解くにはセントラルまで行く必要がありそうね。


それに種を撒いても本当に芽が出ないのか確かめないと。そもそも種なんて土に埋めて水かければ芽は出るでしょ?


発芽に必要なのは酸素・水・適度な温度。


これさえあれば自然と芽は出るはずだもの。まず種を手に入れましょ。


私は店主に聞いてみた。

「どこかで野菜の種は手に入りませんか?」


「タネ?あるにはあるけど・・・・芽は出ねぇぞ?」


「かまいません。ぜひ譲ってください。」


店主は怪訝な表情で

「まあ・・・いいけど。」


「おいくらですか?」と聞くと。


「いいよ。別に何の役にも立たないんだから。ほら、持ってけ。」

どうやら本当に種に価値が無くなってしまっているらしい。


そしてこの時私はある事実に気づく。

わたし・・・そもそも・・・お金持ってないじゃない・・・汗。


危なかった。たまたま親切に譲ってくれたが恥かくところだったわ。

夢なんだから都合よくお金もボッケに入っていればいいのよ!


ぶつぶつ先生に対する文句を言いながら私はマズーの家に帰った。


マズーの家に帰ると使っていないバケツがあったので土を入れ早速種を撒いてみた。

しっかり水をかけ何日か様子を見よう。


今日町を歩いて気づいたこと。


マズーの言うように野菜を中心に食料は不足しているように思う。


そして町の人達は子供か50代以上の大人ばかりで20代~40代くらいの人達が全くいない・・・。これは何を意味しているんだろう?


もう少し調べる必要がありそうね。












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