第18話朝食と炭鉱と

前日に半ば強引にマズーの家に泊まり込んだ私は不思議なほど爽やかな目覚めをむかえていた。


マズーの家は町の高台に位置し、眼下には炭鉱と石炭を運ぶための鉄道らしきものが町の外まで続いていた。

線路の途中には古びたレンガ造りの家が連なり朝食の準備でもしているのだろうか竈の煙がゆらゆらと見えている。


「お腹へったな。」


部屋を出ると

「おはようございます!おばさん!よく眠れましたか?」

マズーがニコニコこちらを見ている。


「おはよう!マズーさん。おかげさまでグッスリ眠れました。」 


「それはよかった。ご飯できてますよ!」

「このパン僕の手作りなんです!どうぞ!」


テーブルには手作りのパンと目玉焼きが並んでいる。昨日の私の言葉を覚えていてくれたらしい。


「いただきまーす!」

私は手作りのパンを口いっぱいに頬張る。

・・・・・・。


マズイ・・。

恐ろしくマズイ。


ぼそぼその生地はしっとり感は全くなく甘みも全く感じられない・・・。

それに・・・なんか変な匂いがする。


目玉焼きはどうかしら?

これは…単純に焼すぎね・・・。


この子、料理がマズイからマズーって言うのかしら・・・。


「おばさん。味はどう?」


「えっ。あっ。ありがとう。おいしいわ。」

「ところでマズーさん。いつもこんな食事なの?もう少し野菜もとった方がいいわね。」


そう言うと。


「野菜なんて高価な物・・・。手に入る訳ないじゃないか!」


「えっ?どういう事?」


「おばさんは知らないの?」

「この町では野菜は育たないんだ。種をまいても芽が出ないんだよ?」


詳しく話を聞くと、大昔はこの町でも野菜は取れていたが、大きな戦がありセントラルと呼ばれる中央政府が支配するようになってから急に今のように野菜が育たなくなってしまったらしい。


それ以後この町はセントラルから野菜を買わなければならなくなり事実上食料を人質に従属させられてしまっていると。

そして、その高すぎる食料代を捻出するため町の人々は炭鉱での過酷な仕事を強いられていると。


なんだ?これは?

急に重い話になってきたぞ?


物語が進みそうな予感。

そして、私・・・・どんどん、おばさんっぽくなってきてる。








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