第15話再び週末

最悪の3日間を終えいつもの週末がやってきた。

あれだけ最悪のことがあっても普通に週末はやってくるんだなぁ。そんなことを考えながら俺は競馬場に向かった。


もちろん、先生に会うために。

何としてももう1回会って話がしたい。とにかくそんな思いだった。


競馬場に着くとあの時と同じ場所で先生を探した。

きょろきょろ辺りを見回すが、まだ先生の姿はない。


あぁ・・・来てないか・・・。

すぐにでも話したいことが沢山あるのに・・・。


とりあえずパドックを眺めながら先生を待つことにした。

1R・・・2R・・・まだ先生は現れない。


今日は来ないのかな?そう思った時、後ろの方から

「②の馬太くない?」


!!!?


「やあ!山口君。」先生が笑顔で立っている。


「せ、先生っ!あの、透明になって、あの。」いろいろ言いたいが言葉にならない。


「大丈夫よ?全部わかってるし見てたからね。」


「えっ?」


「言ったよね?私は神だよ?君に透明なる力をあげたのはね。テストだったんだよ。これから私が力を貸すにふさわしい人物かのね。」


「えっ?・・・そうだったんですか。で・・?」


「合格~!」


「だいたい、この力をあげるとエロい事しようとするんだよね。君も途中まで危なかったけど。でも結局危険を顧みず人助けに使ったもんね。うん。合格。」


どうやら先生は過去にも同じようなテストをしていたようだ。


「ということで、君の人生を変える手助けをしようと思うんだけど何がいい?」


何がいい?と言われても・・・。とりあえず思い浮かんだのは。

「大金持ちとか、女にモテモテとか?」


「あぁ~。まあね。でも最初だけだよ。面白いのは。何でも思い通りになる状態って案外退屈だからね。だから私は今ここにいるんだから。」


なるほど神なら何でも可能なはずだ。

その先生が言うなら間違いないな。妙に納得してしまった。


「例えばね過去に戻るとか、架空の国の王になるとか、どうせなら思い切ったこと。何かやりたいことはないの?」


急にそんなことを言われても・・・地味に生きてきた中年には何も浮かばない。


天ぷらそばにもう一本エビが欲しいな・・・とか。

通勤電車で毎朝座れたらいいな・・・・とか。

スマホのバッテリーがもう少し長持ちしたらな・・・とか。

生え際の白髪が無くなったらな・・・とか。


ダメだ。大それた願いが浮かばない!This is 山口スケール!


すると先生が


たとえばこんな冒険ストーリーはどうかね?と言ってきた。


空から青く光るネックレスを付けたおばさんが降ってくる話とか。

空飛ぶグライダーで大きな虫と戯れる話とか。

大きな頭のお婆さんの温泉宿で働く話とか。

鉄を作っては大きな犬に襲われてみたりとか。

迷子になってトウモロコシ届ける話とか・・・。


そんな感じのストーリーはどうかね?


・・・・・。

「先生の下の名前って、はやおですか?」


「えっ?なんで?」


「いえ・・・別に。」

この人・・・絶対テレビっ子だ。神様のくせに。


とにかく俺は人生を劇的に変えるチャンスを手に入れたようだ。

しっかり考えてこのチャンスをものにしなければ・・・・。


最低限、嫁だけは手に入れてやるんだからね~!






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