第14話4日目の朝

警察署での夜は当然ながら眠れるものではない。

家族にも知られ、職場にも知られ、ひょっとしたら仕事も失うかも知れない。

もともとは自分自身の下品な願望から始まったこと。自業自得と言われればそれまでだが。


人生とは何なのだろうか。今までそれなりに真面目に生きてきた。それがたった1回の失敗で今まで積み上げてきた地位や人間関係、信頼が一瞬で壊れてしまう。

そんなことをずっと考えているうちに俺は静かに眠ってしまった。



「山口さん。おはようございます。山口さーん。」

いつのまにか朝になり、昨日とは違う若い警官が話しかけてきた。


いつの間にか眠っていたのか・・・ぼんやり時計をみる。


「実は今、昨日山口さんに助けられたという女性が来ているんですよ。今詳しい話を聞いているんですが、山口さんが昨日言っていた通りみたいですね。」


「えっ!?」


「それから、山口さんの洋服らしき物が入ったリュックもみつかりましたよ!」


警官が見せたのは確かに俺のリュックだ。

良かった・・・・。


さっそく自分の服に着替えた俺は女性と面会した。

彼女にすれば透明な何かに手を引かれ、逃げろ!と言われたのだから訳が分からなかったはず。

それにも関わらず警察まで来てくれたのだ。


後で聞いた話だと、「家に戻れ!」と言われ少し走り振り返ると裸の男が例の男達に向かって突進するのが見えた。

その裸の男はやがて警察に連れて行かれてしまったが・・・もしかして・・・。

自分を助けてくれたのは、この人なんじゃないか?と。


だとしたら、このまま知らないふりをする訳にはいかない。

そう思い来てくれたらしい。


彼女が上手く話を合わせてくれたおかげで俺は解放された。



警察署を出ると昨日の夜の事を聞かれたので俺は素直にすべてを話した。


競馬場で神を名乗る男に会ったこと。

そして透明になれる力をもらったこと。

透明になった夜に彼女を見て助けようとしたこと。


信じてもらえるはずないよな・・・。

そう思ったが、不思議と彼女は受け入れてくれた。

とにかくあの絶望的な状況から救ってくれたことにひどく感謝してくれた。


彼女の名前は今村まなみ。


後に俺の人生に大きく関わってくるのだが、それはまた別のお話。








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