第13話能力発動3日目その3

彼女を助けたい。

その思いで男達に向かって行ったところまでは覚えている。


「うおぉぉぉぉっ!」と声を上げ無我夢中で向かって行った。

男達は突然現れた全裸の俺に驚き逃げて行った・・・。


俺は泣きながらうずくまった。

そこからは正直よく覚えていない。恐怖と興奮で放心状態だったのだ。


いつの間にか通報されたらしく警官に囲まれパトカーで近くの警察署へと連れて行かれた。


「おい!仮眠室から毛布もってきてやれ!それからコンビニで下着とスウェットか何か買ってこい!」


少し年配のベテラン警官が若い警官に指示している。


若い警官が急いで持ってきた毛布にくるまり、俺はパトカーから降りた。

案内されるがまま取調室らしき部屋に入る。


「で、いったい何があったの?」

年配の警官が優しく問いかける。


・・・・・。


なんと答えれば良いのだろうか。言ったところで信じてはもらえないだろう。


「俺は逮捕ですか・・・?」弱々しい声でこたえる。


「そうだねぇ。今のところ、とりあえず保護したって感じかな。ただ場合によっては公然わいせつで逮捕の可能性もあるね。まずは事情を聞かせてもらえないかな?」


終始穏やかな口調で諭すように警官は話した。


俺はありのままを話そうと思った。が透明人間の話は信じてもらえないと思ったので多少アレンジして話すことにした。


歓楽街でチンピラに絡まれている女の子を助けようとしたこと。

怒った男達に全裸にされ車で拉致されたこと(アレンジ)

監禁先のビルから隙をみて女性と逃げたときに警察に保護されたこと。


「ふぅむ。なかなか信じがたい話だねぇ。」

警官が首をかしげる。

「もし、その話が本当なら君は被害者だからねぇ。で、その女性はどうしたの?」


「わかりません・・・。逃げろ!と言って逃がしたので・・・。」


「とにかく、その女性の話を聞かないと何とも言えないねぇ。それに街中で全裸にされるなんて事あるかね?」

警官はジロッとこちらを見る。


「とにかく調べてください!拉致された場所に服が捨ててあるはずです!」

俺は語気を強める。


「わかった。わかった。探してみましょう。ただ、今日はすぐには帰れないよ。」


「えっ?」


「とりあえずその女性に話を聞かないと何ともね。公然わいせつの可能性もあるからね。今夜は泊まってもらうよ。」


「あと帰るにしても身元引受人が必要だから。」


なんてことだ・・・終わった。

俺は指紋を取られ、薬物検査までされた・・・・。

もう終わった・・・。

涙が出てきた。毛布にくるまり膝を抱えて泣いた。


しばらくすると若い警官が走ってきた。

「とりあえず、これを着てください。」

下着とスウェット・・・・。


「ありがとう・・・。」

もう涙が止まらなかった。


「今日はもう遅いから・・・明日ご家族に連絡して迎えに来てもらいましょう。」

ベテラン警官が優しく俺の肩を叩く。


いつの間にか日付が変わろうとしていた。

あぁ・・・最終日にとんでもない事をしてしまった・・・。


こうして俺は警察署で夜を明かすことになった。












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