第11話能力発動3日目

いよいよ3日目になってしまった。


いつどこで使うか迷いに迷った。テレビ局、銭湯、サウナ、あるいは大人の下世話なお店、はたまた会社の受付のあの娘の・・・。


いかん、いかん、犯罪の匂いがする。


あくまで、ちょっと覗くだけで迷惑をかける訳にはいかない。

これだけは絶対のルールだ。


結局、大人のお店に行くことにした。

一般の方を覗くのは流石に心苦しい、せめてプロの方なら・・・という下世話な理由からだ。


そして何より夜の営業が都合が良い。

昨日一通り疑問は解消したのだが、ひとつだけ気になることがある。


能力の発動は俺自身の「透明になれ!」という言葉からだが、もし途中で誰かが近くで「戻れ!」といった場合能力は解除されてしまうのだろうか?


もし誰の言葉にも反応してしまうとしたら、とんでもないタイミングで全裸で現れることになってしまう。

それは絶対ダメ!


そうなると夜の方が最悪目立たないと考えたのだ。


俺は夜の歓楽街にくりだした!ピンクのネオンもチラホラ。

緊張してきた。


まず人気のない路地を探すことにした。以前見た映画スパイダ〇マンでも裏路地で着替えていたのを思い出したからだ。


暗くて狭い裏路地で

「透明になれ!」

よしよし、順調だ。ササッと服を脱いで手際よく黒のリュックにしまった。

おっと、靴も脱がないとな。

黒のリュックをそっと隠すがさすがに薄暗い路地では全く目立たない。完璧だ。


裸足の俺は怪我しないように、そろりそろりと通りに出た。

すると


「やめて下さい!」

「いいから黙ってついて来いやっ!」


何やら若い女性と2人組チンピラがもめている。


ダメダメ。こんなのに関わっては怪我するだけ。

俺は今日はささやかなエロスを楽しむために来たんだから。

今まで頑張ってきた俺に神が与えてくれたご褒美なのだから・・・。


とは言ったものの気になってしかたない。

幸い俺は今透明なのだから近くで観察しても危険はない。


しばらく様子を見ていると、どうやら女の子の彼氏が借金をして逃げたため一緒に住んでいる彼女に代わりに払えと。そして払わなければ彼氏をさらって〇〇すぞ的な話らしい。


あぁ・・・どこにもクズみたいな男はいるんだな。

こんな可愛い彼女がいるのに・・。


俺の方が絶対女の子を幸せにできるよね・・・。

あぁ・・もう少しさわやかな顔面だったら・・。

チクショウ!

神よ!我にさわやかな顔面を与えたまえ!


そんなことを考えていたら、チンピラ達が女の子の腕をつかみワンボックスの車の中に連れ込もうとしている!


えっ!マジか!どうする?

でも、結局誰にも見えてないわけだから・・・このまま知らないふりしても平気だよね。

うん。そうだよね。


そう思っていたのだが。




乗っちゃった・・・。


彼女と一緒にワンボックスに乗っちゃった・・・。


嘘だろ!?何やってんの俺!?


落ち着け、落ち着け、現状を整理するぞ。


ワンボックスの運転席には怖いお兄さん、2列目に女の子とチンピラ。

そして3列目シートにちょこんと座る全裸の中年、山口正太郎・・・。


何この状態。こんなことある?


とにかく今のところ透明な俺には誰も気づいていない・・。

なんとか脱出しなくては・・・できれば女性も一緒に。


正太郎の長い夜が始まった。






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