第10話能力発動2日目

透明人間2日目。

もう2日目になってしまった。とはいえ昨日仕事を早退した後無駄に過ごしていた訳ではない。


いろいろ考えたのだが、この能力を有効に安全に使うために、いくつか確認したいことがある。

そのための準備をしていたのだ。


まず俺が気になっている事。


昨日透明になった時、鏡に映ったのはパジャマと歯ブラシ。

つまり、この能力を使う時は裸にならなければならない・・・。

これはかなり問題だ。

中年のおっさんが素っ裸で街を歩くんだよ・・・。危険すぎる。

それに・・・ちょっと寒い。


さらに、そもそも他人からも見えていないのか。

もしかしたら俺自身の目にだけ見えないのかもしれない。


もっと疑えば機械にも写らないのか。

街はいたるところにカメラがある。防犯カメラに個人のスマートフォン。

もし撮影でもされたら『素っ裸炎上』だ。

「裸のおっさん街を疾走!」〇スポあたりに載ったら最悪だ。


そして何より大事なのはタイムリミット。

5時間キッチリ透明でいられるのか。


他にも問題はあるかも知れないが、とりあえず思いついた問題は解決しておきたい。


俺は作戦を開始した。


まず実家に帰った。

他人に見られても大丈夫なのか確認するには家族を実験に使うのが一番リスクが少ないからね。


親父がいることを確認し。


「ただいま~。ちょっと仕事で使う昔の資料取りに来た~。」


「おぉ~。そうかぁ。」


普段から、ちょくちょく顔を出しているから変に疑われることはなかった。


「晩飯食っていくのかぁ?」


「あぁ。そうだね。ちょっと資料まとめるから夕飯までは邪魔しないで~。」


「はいよ~。」


今は午後1時。いよいよ実験スタートだ。

「透明になれ!」

と同時にスマートフォンのタイマーをスタート。

最長5時間キッチリ透明なのかを確認するためだ。


続いてスマートフォンのカメラで自撮りをしてみる。

おぉ・・・写っていない。

一応動画でも撮ってみる。

大丈夫だ。


さて問題は次だ。

はたして他人からも見えていないのだろうか?


俺はそっと服を脱ぎ静かに自分の部屋を出た。

とにかく音を出してはいけない。


親父のいるリビングを覗くとソファーに横になってテレビを見ている。


やるしかない。


まずリモコンのスイッチをそっと押してみる。


「あれ?」

「んんっ?」

リモコンでチャンネルを戻す親父。


さらにポチッ!


「なんだ??」

キョロキョロあたりを見回す親父。

全くこちらには気づいていないようだ。


おかしいなぁ~と言いながらソファーに横になる親父。


一応、念のため親父の目の前でブラブラさせながら踊ってみる。

70近い親父の前で40ちょいの息子が踊っている・・・。

横になっている親父とテレビの間で踊る全裸の息子。


他人に見られたら地獄絵図だ。


しかし、これで他人からも見えていない事は完全に証明された。

あとはタイマーの残り時間で明日どこに行くかの計画でも立てようか。


下世話な行動なら

銭湯・サウナあるいは夜の大人のお店とか・・・。


もっと攻めればテレビ局なんかに潜入しても面白いかもしれない。


いやいや、何か企業の機密情報とか誰も知らないような貴重な情報を盗み見る・・・なんてことも良いかも知れない。


そんな妄想をしていたらチリリリリンっとタイマーが鳴った。


どうやら、キッチリ5時間らしい。

あとは俺自身の勇気と度胸の問題だな。


いろいろ考えていたら


「正太郎~!少し早いけどご飯出来たってさぁ~。」

親父の声が聞こえる。


我が家は今日も平和だ。








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