第7話 神の証明その4

満腹亭 招来軒。

競馬場近くの中華屋で私と山口は祝勝会をすることにした。


とりあえずのビールが到着すると


「いや~。こんなに勝ったのは初めてですよ!」

「とりあえず、乾杯しましょう!」


山口の声が弾む。


「かんぱーい!」

冷えたジョッキがカンっと心地良い音を鳴らす。


「しかし、何であんなに当たるんですか?コツはあるんですか?」

本当に競馬に関しては興味津々だ。

この好奇心と向上心を何とか他の方向に向けてやりたい。

そして、この冴えない『ねぶた男』を輝く中年にプロデュースする・・・。

それが私の使命であり・・・暇つぶしなのだから・・・キリッ!


「そうだね・・・。」

少し考えこんだ風に間をとって。

「私が神だからだよ。」


思い切ってぶっこんでやった。ドキドキ。


「・・・・・・。」


むむっ。


「さすが!競馬の神!よっ!大先生っ!」



うん。さすがに信じないよな。


とりあえず注文した麻婆豆腐やら回鍋肉やらを食べながら他愛もない話をして盛り上がった。


お酒も入り少し気が緩んだのか、山口は日々の仕事の不満だったり上手くいかない現状に対する不満だったりを語り始めた。


学生時代から家族にも教師にも評価されなかっこと。


就職のタイミングが就職超氷河期と言われる時期で希望した業種につけなかったこと。


思いを寄せる女性が保険の外交員で契約だけさせられて音信不通になってしまったこと。


寂しさを紛らわすため犬を飼ったが投げたボールを追いかけたまま戻らないこと。


ゆで卵を買ったつもりが生卵で服がビチョビチョになったこと・・。


とにかく運がなかったのだと。


「なら、私が神の力を使って君に特別な力をあげよう。何がいいかね?」


「ええっ?特別な力?」


「うん。もし手に入るならどんな力が欲しい?」


「そうですね~。空飛べるとか、瞬間移動とか、あっ透明人間なんてのも面白いっすね!」


なるほど。ふむふむ。


なら透明人間を与えようじゃないか。これは非常に面白い人間性の出る能力だからな(´-`).。oO


この日は飲んで食べて話して。あっという間に時間が過ぎた。


「今日は本当にありがとうございました!」

「いろいろ話も聞いてもらえて楽しかったです!また競馬場で会えますか?」


酔っぱらって少しろれつが回らないようだが非常に喜んでもらえたようだ。


「そうだね。よく行くからまた会えると思うよ。」

「あっ。それから例の能力明日から使えるからね。ただし3日間。」

「1日に使えるのは1回だけ最長5時間だから。よく考えて有効にね。」


「はい?」


そういって私は手を振り彼と別れた。


楽しみだ。


さあ山口よ私を楽しませてくれたまえ!。


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