第5話 神の証明その2

昼前の競馬場で変な男が話しかけてきた。


小太りの中年でケミカルウォッシュのスキニージーンズにネルシャツをだらしなく着ている。

妙に眉毛の主張した顔立ちで悪い人ではなさそうだがクセが強い。


その顔面はどこか懐かしい・・・そう、『ねぶた』だ。

3年前に社員旅行でみた青森の例のアレだ。


そんな男が

「②番の馬は少し太いですかね?」と。

さらに

「次のレース③の黒い馬と⑧のあの綺麗な栗毛の馬が来るよ!」と。

さらに続けて

「今日はあの2頭は馬鹿によく見える。完璧な仕上がりだ。」

「とりあえず1000円でいいから買ってごらん。」

「外れたらお詫びに昼飯ごちそうするからさ。」

「騙されたと思って買ってごらん。ね?」


なんだ?こいつ?

正直面倒くさいし関わりたくない・・・。

が、こういった独特のタイプは下手に刺激すると激高するに違いない。


なるべく刺激せずにフェードアウト。This is 山口スタイル。

ふっ。スマートだろ?


とりあえず俺は1000円だけ馬券を買った。

外れても昼飯は奢ってくれるらしいから損はない。


サッと飯食ってフェードアウトだな。


なんて考えていたらファンファーレが!

はじまる!


スターターが台に上り・・・全頭ゲートの中へ


ガコッ!


ゲートが開き各馬一斉にスタート。

⑧の栗毛の馬ゴッドスタイルが逃げる!ちなみに12番人気。


快調に飛ばし縦長の展開!人気の各馬は後方で脚をためている!


3コーナーから4コーナーへ

徐々に追い上げる各馬! しかし逃げる⑧ゴッドスタイル!


有力馬は内でゴチャついている!

大外から1頭来るぞ!? 黒い馬体の③カチョウノキュウジツ!


すごい脚だ!一気に差がつまる!

どっちだ!どっちだ?


全く並んでゴールイーン!


えっ!えっ!?


当たり!ほんとに!?


馬連126倍! しかも1000円買ってる!


俺は一瞬で12万を超える金を手に入れた!

すげー!あの変なおっさんのおかげだ!


ふと横を見ると例のおっさんがニコニコこちらを見ていた。


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