第4話 神の証明その1

昼前の競馬場で私は山口に話しかけた。

「②番の馬は少し太いですかね?」

すると山口は少し驚いたように私を見てやや怪訝な表情で

「そうですね・・・。」

と答える。


妙だ。ごく自然に話しかけたつもりだが強い警戒感を感じる。

神である私が感じるのだから勘違いではない。

今、彼は最大限の警戒心でこちらを見ている。


なぜだ?

体系、顔、服装。すべて彼に寄せることで警戒心をなくす作戦が逆に警戒されている。どういう事だ?


今の私の姿はこうだ。

身長は彼とほぼ同じ170センチ。安心感を与えるため、ややぽっちゃりした体系に古き良き昭和の時代を思わせる和風の顔立ち。


そう、わかりやすく例えるなら『ねぶた』だ。

ねぶた顔なのだ。 

この日本人なら誰もが安心する風体にケミカルウォッシュのデニムにチェックのネルシャツ。

山口がよく来ているスタイル。

類は友を呼ぶThis is 安心スタイルだ。


「次のレース③の黒い馬と⑧のあの綺麗な栗毛の馬が来るよ!」

午前中最後のこの4R。彼を勝たせることで信頼を得る作戦だ。


「いや・・・。その組み合わせだと120倍つきますよ?」

さらに不審者を見るような目で私を見る山口。


当然だ、はじめて会う男が突然勧める馬券だ。しかも万馬券。

疑うのが自然だ。 


私は続ける。

「今日はあの2頭は馬鹿によく見える。完璧な仕上がりだ。」と。


当然神である私には結果はわかっているからな。

「とりあえず1000円でいいから買ってごらん。」

「外れたらお詫びに昼飯ごちそうするからさ。」

「騙されたと思って買ってごらん。ね?」


まあ・・・それなら・・・と山口は勧められ馬券を買うことにした。


よしよし予定通りだ。



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