田代 血塗騎士の反抗 -1
「みんなを見返そうぜ」
田代 血塗騎士の中学生生活が始まり一年が経った頃、いつもの帰り道で、陸が唐突にそう言った。
「え?」
「いいか? 俺はな、お前が名前のせいで不当な扱いをされていることにもう我慢ができないんだ」
陸が語る田代 血塗騎士の『不当な扱い』とはこうだ。
『ねぇねぇ、どうして田代 血塗騎士なんていう名前なの?』
このセリフに集約された扱いが、中学校に上がって輪をかけてひどくなったというものである。
田舎の中学校のおそろしさで、田代 血塗騎士は何もせずとも有名人であった。
田代 血塗騎士を見世物と思いこむ生徒に囲われ口さがないことを言われたりすることは日常だった。
それでも田代 血塗騎士がなんとか心を凍てつかせることなく耐えられたのは、陸がずっと隣にいてくれたおかげだった。
その陸が唐突に言ったのだ。みんなを見返してやろうと。
「見返すって何?」
陸は足を止める。
そこは、田代 血塗騎士と西園寺 陸の自宅へと別れる二股の道であった
「いいか? お前がすごくイイ奴だってこと、みんな知ろうともしない。だから、何かでかいことをして、名前じゃなくてお前のすごい部分にみんなを集中させるんだよ」
田代 血塗騎士は胸を手でおさえる。
親友の言葉を鼓膜が受け止めた瞬間、心臓があたたかな血を送り出すのが手の平で感じ取れた。
「ありがとう陸。それじゃあ……」
それは、なんてことのない、ただの過ぎ去っていく夕日を背にした日常の一幕だった。
しかし、その決断が決定的に田代 血塗騎士の人生を変えてしまったことを、この時の田 血塗騎士は知る由もなかった。
「僕……勉強をがんばりたいな。陸みたいに学年で一番の優等生になりたい」
「えっ。なんだ急に。照れるな」
陸は照れ臭そうに頬をぽりぽりとかく。
「じゃあ、今日は俺んち来いよ。勉強だけなら教えてあげられるからさ」
田代 血塗騎士と陸は、二股の道の一方を選び、並んで西園寺家への道を歩き始めた。
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