Gh


【■■■@Gh】

『You are a terrible person.

(君は酷い人だ)』



 店を出た途端。“Gh”からコメントが来た。見られてるのかと思い、適当にふらつくも怪しい人、気になる人はいない。気晴らしにキャンディー専門店に足を運び、適当に青・白・緑のロリポップキャンディーを買っては咥え外に出る。



【■■■@Gh】

Liar嘘つき



 また来た。アンチにしては妙に怖くない。軽い脅しのように見えるが殺しに来てるわけでもない。



【■■■@Gh】

『which is scarier, invisible Horror or

visible Horror?(見えない恐怖と見える恐怖。怖いのはどっち?)』



 妙なコメントに足を止め、振り向くと見覚えのある体型。


「おや、死亡記事オビチュアリーさん。私のこと分かりますかね?」


 歩きスマホか。俺を見てさりげなく胸ポケットにしまう。見た目に見覚えがなく黙っていると声には聞き覚えがあった。駅で情報をくれた――あの人トレイだ。


「奇遇ですね」


 白い襟服に黒いロングカーディガン、スキニージーンズ、ローファーと意外とカジュアル。


「よく分かりましたね、俺だって」


「私も歩きスマホが癖なので罰金何ちゃらと言われてますが隠れてやってしまうので、見れば分かりますよ」


 ハハッと笑い、ポケットに手を入れては頻りに周囲を気にする。


「どうかしました?」


「まぁ……殺し専門ではないのですが、そういう輩に絡まれやすい身でしてね。休日はいつも雑草処理。疲れます。お暇ですか? 暇ならお手伝いお願いします。ハッキング・・・・・得意ですよね?」


 ――なぜ、それを。

 俺が一瞬目を見開くとトレイはニコッと笑う。


「闇映えの管理や監視は『|我がこそ悪のハッカー

《・・・・・・・・・・》』と思っているバカ達がやってるんです。例えるなら殺しで競ってる『ハッカー』パージョンと言えば伝わりやすいですかね? だから、分かるんです。誰が荒らそうが何しようが“あそこ”は私達のテリトリーなので。貴方はどうか知りませんが主催者に目をつけられたくなければ――“あちら”のシステムには触れぬようお気をつけください。これ、一応『警告』ですよ」


 人差し指を立て“しー”と唇に当てる。


黙示録アポカリプスは観覧専門。時にアンチに苦しんでるようなので、あまりにも苛立ったらと誘いました。でも、観覧も観覧で競いはありますからね。いつまで生きられるかは神のみぞ知る。素敵・・ですね」


 歩み、腕を捕まれ強制的に歩かされると彼は続けて早口で言う。


「神っちさんは挑発しかできないバカ・・ですが、殺るの時はやる人です。欠点と言えば“殺し方”が分からない。だから、貴方が助けてあげなさい。貴方のその芸術思考で彼を生かし、貴方は好きなだけ記事を書く。生き残りたければ――そうやるしか無い。死にたければ共に死んでください。

 残酷で悲惨な死亡記事。それは、貴方にしか書けませんから」


 背中を押され、大きく踏み出すとトレイが慌てた様子で俺を抜く。釣られるよう追い掛けると彼の手にはスマホが握られていた。

 点滅もしてない青信号の歩道に駆け込み、俺が渡りきった瞬間不自然に赤に切り替わった。思わず立ち止まり、走り出す車を見ているとスマホが震える。このタイミングで――と不思議に思いスマホに目を向けると“Gh”だった。



【■■■@Gh】

Come earth早く来て



 ハッと思わず向き直るとトレイが「Come earth早く来て. 」と発音が良すぎる英語。続けて「Do you want to die死にたいのですか?.」と俺が来るのを待ち再び走り出す。

 ビルの間を縫うように進み、一通りの少ない信号の無い横断歩道を渡っては路地へ。昼少し過ぎ休日が近いことからスクランブル交差点にたどり着く。人ごみに紛れ、青信号になった瞬間――突如赤に変わり大混乱。歩行者にクラクションを鳴らす車、轢かれそうになり悲鳴が飛び交う。

 声に無意識に反応しカメラを起動するも軽い接触や寸止めと撮れ高は低い。見かけ倒しか、と歩き出そうとする俺の袖をトレイがさりげなく引っ張る。


Hitman殺し屋


 静かに行くはずだった向かい側の歩道を指す。すると、ただならぬ気配を放つ男が二人。双子コーデか壮年にしては少し痛々しい。


Thatあれ?」


 英語で返すと当たりか。優しく指を下ろされ、言葉じゃなく苦笑で返す。


It's the worst最悪ですね

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