第2話 「あの二人、まだ付き合ってないらしいよ」

「なあ、海見に行かへん?」

「どうしよう?何からつっこんでほしい?」

「まかせるでぇ」

「今から行くん?お台場?遠いよ?」

「ちゃうねん。こう、ロマンチックに輝く海に向かって「バカヤロー」って言いたいねんやんか?」

「ごめん。大阪弁からつっこむべきだった」

「それな?」

「んで?どうしたん?まさか俺の知らないところで失恋でもしたとか?」

「違う。それに海に向かって叫ぶのが、失恋したからだって決めつけるの、良くないと思う」

「なんでちょっと怒ってんの?」

「すぐ恋愛に絡めるとこキライ」

「あーすいません。で、結局なんなん?」

「私、夢破れたっぽい……」

「えっ?夢?」

「そう。なんかね、聞いたところによると、生まれて初めて『なりたい』と思ったものが、その人の天職なんだってさ」

「まじ?どこ情報?」

「ムーを毎月読んでるって人のブログ」

「それ、全然あてにならなさそうだけど……」

「ねえ、最初の夢ってなんだった?」

「へっ?俺?あれ……なんだったっけかな?うーん、たぶんだけど、サッカー選手とかじゃね?」

「ホント?ちゃんと、よーく思い出して?あんたのお母さんとかが思い出話みたく語り続けてる系のやつ」

「えー?……あっ」

「あった?」

「え、でもこれは入らないと思う」

「決めつけ良くない。男だろ?」

「男だろ?とか言うとこキライ」

「だよね。それはホントに良くなかったとです。すいません」

「急に博多へ向かったね?じゃあ許す。あのな……笑うなよ?」

「もち」

「サッカー……ボール」

「っと……なんかゴメン」

「ちょっ、馬鹿にしてんだろ?」

「違う違う。本気でゴメンって思ってるって。だってさ、物理的に無理な夢だったてことでしょ?それが天職だったなんて……」

「ムーを毎月読んでる人の理論でいけばな?」

「私的にはさ、人って全く叶わない夢は見ない様にできてると思うんだ?」

「じゃあ俺って結構可哀相だね?」

「そうなんだよね……ごめんね?辛い事思い出させて」

「ホント。知らない方が幸せって事もあるんだね?」

「んだんだ。でさ、私の夢なんだけど」

「あっと、慰めがもう少し欲しい所でしたが、どうぞ」

「うん。私も辛いで聞いてくれろ?」

「どした?」

「私の天職、魔法使いだった」

「んー?それ絶対叶わんの?」

「だってウチらホグワーツ入ってないじゃん?」

「あっ、その世界観のね?ってか俺も?」

「うん。だって小中高って一緒じゃん?あっ、でね?ホントはサリーちゃんになりたかったんだけどさ?」

「サリーさん?存じ上げないのですが?」

「うちのママが小さい頃ドはまりしてて、その影響」

「ほう、じゃあポッター界隈は通らなくても?」

「違うの。どうせなるならエリートコースが良いの」

「なるほど」

「だから、どうしよう」

「んー。実はさ、俺ホグワーツちょっと通ってた」

「ウソ?抜け駆けじゃん?」

「ごめんて。夜学だから恥ずかしくて」

「じゃあ魔法使えんの?なれるじゃん!サッカーボール!」

「その件は忘れてもらった方が幸せって事もあるよね?」

「んで、どんな魔法が使えるん?」

「さすが、グイグイくんね」

「はよ」

「ある特定の人を幸せに出来る魔法」

「なんかクサいな」

「いーの?使ってあげないよ?」

「え?私にも有効なの?」

「ってか、まあ。うん」

「教えて?はよ」

「帰りにアイスを奢ってあげれる魔法」

「やば、サーティー?」

「ごめん。ソフトツイスト」

「大魔法使いじゃん!ロンよりすごいよ!」

「使う?」

「使う」



「お前ら!いつまで残ってんだ?明日ももう一日テストだろ!」



「はーい」

「へーい」



「ほな、行こか?」

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