MISSION:120 最後っ屁
薄っすらと僕の気配を感じるそうだ。意志みたいなのはなさそうだから、制御するために入れてるのかもって
≪僕の残りカス入りだってー≫
「リングが無駄にならんかったけど、時間が掛かりそうじゃね」
「ポーちゃん、同じ? 増えるする?」
≪攻撃はしてないから分からないけど、サイズ的に増えながら上層に上がって来てるんじゃないかな≫
ン~って斜め上を見ながら考え中のフーちゃん。頭の中でバトルしてるんだろうね。百面相してるよ。
到着までもう少しかかるから、いい案があったらご意見くださいな。
ワワンパァのイラフティーバで削って、フーちゃんのブラックホールで仕留めるのが手っ取り早い気がする。
「んっ。パァちゃん、イラフティーバ全力する。私、虚無の舞王、全力する。終わるする」
「オッケーじゃ」
≪当たった!≫
「ポーちゃん、ルーちゃん、出番なし。
≪イイヨー。早いに越したことはないし。増えるとメンドクサイじゃん?≫
僕的には手に入れるダンジョンと、アダマンタイトの利用方法に思考が移動してる。強敵と戦ったあとだし、このお代わりは求めてないんだよねー。僕は早くワワンパァダンジョンに戻りたいのだ。
でもこのヴェノムスライムは、キッチリ始末しないと増えちゃうだろうし時間掛かりそうだなあ。これ以上、外に近付けるのもマズイ。
なので、まずやることは足止めになるかな。
先行してる分のAWACSだけじゃ足りないけど。相手のほうが多いからね。なるべく急いで向かおう。階層の出入り口的に、一気に入れるわけじゃないからさ。
≪足止めしてるけどジワジワ押されてる≫
「むしろ出入り口で張っちょったほうが狙いが絞りやすうならん?」
≪狭いからなあ。回数こなす必要があるかもよ?≫
「時間掛かる、回復、可能性高いなる」
「ほうかあ。じゃあ、なしじゃね」
「うん。2層、倒すする」
≪もうすぐ出入り口に到着するよー≫
◆
結局、出入り口近くまで押し込まれちゃったな。コポァコポァって毒の泡が表面で弾けるたびに、身体に悪そうな湯気が立ってる。
「なに
「臭そうでありますなあ」
「臭いする、死ぬする、なる?」
≪なりそうだね……試していいのは僕だけだけど≫
臭そうなので心の鼻は塞いでるよ。
ワンチャン、ゴブリンに勝つかもしれないね。臭さで。
≪なので試さない≫
「
「オッケーじゃ」
両手を前に、気功波を放つポーズで構えるワワンパァ。その腕を中心に、円を描いて並ぶ10のマジックハンド。
計12本の太陽光線が、ヴェノムスライムに照射された。
「ついでなのでそれがしも、雷撃弾をお見舞いしておきます」
残機を減らしながら、それでも侵攻を止めようとしないな。
そしてフーちゃんの練り上げられた魔力が解放される。
「饗宴、
暗黒がヴェノムスライムの上に現れ、空間が歪む。強烈な魔力を餌と思ってるのか、触手を伸ばして触れようとして吸い込まれていく。知能は全くないみたいだねえ。
フーちゃんはハンディクリーナーで掃除するかのように、ブラックホールを操作して吸い込んでいった。
「へひぃ……終わる……したあ」
「お疲れさまであります!」
≪漏らしてるのがいないかチェックしながら進むよ≫
「リングは稼働させたままのほうが
塵サイズでも残せないからね。ダンジョンコアを掌握したら機能を使えば分かるけど、そこまでは自力でやる必要があるよ。
なのでお疲れのフーちゃんには、お休みいただきましょう。前回ブラックホールを使った時も、2日くらいは回復が必要だったしさ。
「あとはウチらに任せときゃあ
「んー……」
「スヤァって寝られましたな。カワイイであります」
フーちゃん好みの温度設定は、データ化しているのでお任せあれ。もちろんみんなのも記録してある。
僕は熱を感知できないから、失敗すると危ないし。
コアルームに辿り着いた僕らが見たのは、肉塊を付けたゴブリンだった。ダンジョンマスターはコイツみたいだね。意思がなくなってるのか、椅子に座ったまま虚ろな表情で涎を垂らしてる。
「なんじゃ? 揺れ始めた」
「ダンジョンの中で地震なんてあるのでしょうか?」
コアを掌握しようとしたワワンパァが、焦りながら理由を教えてくれた。
「ダンジョンの崩壊が始まっちょる!」
≪ハァッ!?≫
「そんな! もったいないであります!!」
「
≪全機合体っ≫
やってくれたっ。最後っ屁ってヤツか。コケシの仕業だろうね。コアルームに侵入したタイミングで、トラップ発動を仕掛けてたみたいだ。
ダンジョンコアを壊すことで一網打尽にするトラップ。
僕は天道虫号に乗ってもらってから、屋根を付ける。崩壊していくダンジョンをドライブする羽目になったよ。崩壊は下層から順に、って願いながら爆走する。だって上層から崩壊してたら、道がなくなってる可能性も高いからね。
≪ダンジョンの崩壊って、なくなったら外はどうなるの?≫
「分からん。ルーちゃんは知っちょる?」
「ダンジョンマスターの2人が知らぬのに、それがしが知る
異空間にあるダンジョンなら、影響はないのかな?
でもここのダンジョンがフラム部長のステージみたいに、この世界を利用した場所だったら……山も崩れるってことになるのかもしれない。
「つまりアダマンタイト収入すらなくさせるという、悪辣なトラップということなのでありますか!? 許せませぬなァ」
「いや……そんなんより今は、生き残るほうが先決じゃろうに」
ワワンパァがブチギレてるルァッコルォに引いてるじゃんか。理由がアレだし。
フーちゃんとルァッコルォは、死んだらダメな生き物なんだよ?
大事なことなんだから覚えておいてよ?
「し、信頼の証ですが~? 証なのでありますがー?」
「さっきのは目がくらんじょる証じゃった」
≪僕もそう思う≫
でも信頼には答えるであります。とはいうものの、実はアセってる。もう道がなくなりつつあるし。半分飛んでる状態。瓦礫なんかも、過去いちの速度で分解してる気がするヨ。
ダンジョンじゃなくなったから不懐属性も消えてる。最悪は埋もれた地面を掘り進んで、地上に帰還することになるかもしれないね。そうなると酸素問題も出てくるからなあ。
フーちゃんが元気なら一発で解決するけど、さっき全力で魔法を使ったからムリ。ないものねだりってヤツさ。僕はネーネさんのところの僕に連絡を入れて、地上の方向を教えてもらった。
ポヨドリル全開だー!
埋まっちゃったからね……。
「不穏な音が響いておりますが?」
≪ダイジョブダイジョブ≫
「掘削しようるん?」
≪ダイジョブダイジョブ≫
「えっ、ホントにですか?」
≪ダイジョブダイジョブ≫
「ポーちゃんがダイジョブロボになっちょるんじゃけど」
≪あ、ごめんごめん。間もなく地上に到着致します。お下りの際は、お足もとにご注意ください~≫
チョット不安だったけど、魔力がしみ込んだ壁とかを分解したおかげで、残機の消費をしながらゴリ押しできたんだ。
≪ふぅ、なんとかなった。空気なくなる前に出れて良かったよ≫
「そういえば若干苦しかったのであります……」
「危なぁ……」
「まったく、肝を冷やしましゅよ……」
う、ネーネさん、そんなこと言ったって僕らのせいじゃないんですー。悪者の悪知恵のせいなのです。
いやあ、悪い方向に噛み合っちゃったよね。
フーちゃんが全力でやる必要のある敵が現れる→ダンジョン崩壊トラップ→星の精霊王である
「さらに無報酬なのであります!」
「アダマンタイトもどこ行ったか、分からんようになってしもうた」
「山の崩落現場で見つけるのは不可能でしゅねえ」
≪許すない、する。ってヤツだ≫
大量の残機を使って、邪人発見用の僕を作るのだ。
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次回≪MISSION:121 無限残機のポヨポヨポー≫に、ヘッドオン!
8時にもう1話投稿します
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