MISSION:119 一刺し
「
4本角が僕のミサイルを、炎の弾丸で撃ち落としていく。
「ふむ。存外使えぬ白銀の
その厨二名、覚えがあるぞ。コイツか?
アーさんに肉塊を付けて実験してたのは。
「調整には失敗したようだが、やはり方向性は正解であったか」
惜しいことをしたと、残念そうな目で僕を見る4本角。
≪銀コケシよりマシって評価は嬉しくないなあ≫
「ポーちゃん、失敗、ないする」
「ろくでもないのはお前たちでありますよ」
「ほうじゃほうじゃ! コケシと一緒に消えんさい」
「白銀のとは一緒にして欲しくない物だな。そもそもヤツらは──」
安易で後先構わないような行動しかとらないんだって。残りはダンジョンの中にいる1体だけだから僕らを始末したあと、ついでに処分するって説明してくれたンダヨ。
なんで話に乗っているのかといえば、ルァッコルォの回復待ちだ。インターバルを置かないと再使用はできないからね。
いわゆるスキルのクールタイム待ち。
「役に立つ情報ありがとうじゃわ」
「ですなー。コケシの残機数が分かったのは重畳」
「ん。もう処分する、ダイジョブなるする」
≪お代わりタイムが発動してるから一気にいこう≫
まさか会話ができるとは思ってなかったけど、分かり合うことはないからね。ダンジョンも攻略しないといけないから、時間は掛けられない。
「フン、愚か者めらが。時を稼いだのはこちらとて同じ──滅」
≪残念でしたっ!≫
マジック・ディテクションはちゃんと使ってるから、発動するだろう場所は分かってる。分かってるから準備も万端。上空に漂ってる粒子を固めて降下、発動しきる前にミサイルと合わせて食べきってやるさ。
「土遁、
防御にバフを掛けたルァッコルォが、アルカンシェルを使って4本角に肉薄。両手に持ったジャマダハルで、息もつかせぬような連撃を繰り出す。
だけど徹甲弾も防いだプロテクションの硬さ。それを盾のように使ってるみたいで、効果がない。
フーちゃんとワワンパァが援護の攻撃を放つ。
「FOX3じゃっ」
「
色々と攻撃を重ねるものの、4本角の魔法の強度と正確さは並みじゃないようで効果がない。
キッチリと防御や迎撃をされてしまってる。
「火遁、
でもその隙にバフを重ねていくルァッコルォ。
もちろん僕だって掩護射撃は忘れてないよ。でも「メツ」って言ってた魔法の塊、相当練り上げられてたみたいで、食べ終わってない。
フーちゃんの4種の饗宴、カルテットの魔法並みに濃度がある。
発動させるわけにはいかない。
でも食べれば食べるほど僕の残機が増えていくので、ミサイル分が溜まったらその都度発射して嫌がらせをする。
迎撃されればされるほど、拡散粒子爆雷のトラップが濃度を増すからね。消耗もするはずだし。
そんな中、
<こちらAWACSヘヴンアイズ。逃走中のコケシを発見。別の出入り口があると思われる。逃走方向はネーネさんが向かって来てる方向だし、処理を頼んだよ>
「ウー、仕方ないあるする」
「ハッ、滑稽よな。矜持もなにも持たぬ愚かな種族の末路よ」
「世界に敵対するヤツらの矜持なんかいらんわ!」
遠距離攻撃を捌きながら──
「世界樹こそが世界を破滅に向かわせておるというのに、分からぬか」
「お前たちの妄言にはウンザリであります」
──近接攻撃にも対応している。
だというのに、いまだ無傷の4本角。全方向から攻撃してるのにな。
フーちゃんの魔法は相殺して、ワワンパァのガトリングガンは対ルァッコルォのついでみたいに防御。マジックハンドからのイラフティーバは、プロテクションの角度を変えて流してる。
スゴイ技術だ。
だから、隙を作るのは最初にコッソリと、背中にへばりついてた僕の仕事。
≪ルァッコルォ!≫
「了解であります!」
「なにッ!」
少しずつプロテクションを食い破ってた僕の粒子が、4本角の背中にチクッと一刺しした。自信があればあるほど、ショックは大きいでしょ!
動きの固まる刹那の時間。「ヤァッ」という掛け声に合わせて、ルァッコルォの一振りが敵を2個の物体に変えた。
「強いした」
「でもまだ残っちょる」
「それがし、消耗が……チョット激しいであります」
≪激しいならチョットじゃないよ≫
ルァッコルォはバフ掛けてた時間が長かったから仕方ないよね。
僕は増えただけなので、フカフカベッド号に乗ってもらおう。ダンジョンからコケシが逃げだしてたけど、その前になにかを起動させてるだろうし。
マッピングしてる間に少しでも休んで欲しい。オヤツを盛りっと出しちゃう。
「ルーちゃん、休むする。残り、敵、私のするー」
「フーちゃんの魔法は規模が大きいけえねえ」
≪外じゃ鬱憤が溜まっちゃうかあ≫
広範囲過ぎるんだよね。
破壊が。
「ダンジョン、遠慮ないする」
「ポーちゃん、アダマンタイトの回収は忘れんといてぇよ?」
≪分かってるよ≫
ネーネさんもコケシの始末が終わったみたいで、コッチに向かってるそうだ。別出口を今のうちに見つけて、張ってもらうことにした。敵のお代わりが、どんなのかは分かんないからね。
僕がやってもいいんだけどって伝えたら来るってさ。
ネーネさんは心配性だナー。
危険を心配してるのか、やらかしを心配してるのかは知らないけど。
≪ダンジョン内は動物系の魔物が多いな≫
「ポーちゃん、やるする。
「今回は速さが重要じゃけえね」
≪うん。僕もそう思って、マッピングと同じ速度で討伐中≫
迷宮型なので、部屋は全部チェックしていかないといけない。どこに次のステージへのルートがあるか、分からないからね。ギミックがあるとさらに厄介だよ。
マスターサイドだったら隠し通路で、一気にコアルームまで行けるんだけどな。
僕らは侵入者。
しらみ潰しで行くしかない。焦りは禁物なんだろうけど、僕には関係ないので、はやる心に乗っかってズンズン進むのです。
失敗があっても残機が減るだけだしね。
≪宝箱はスルーでいいよね?≫
「コア、掌握、回収。最短?」
「ほうじゃね。どうせ罠もあるんじゃろうし」
では無視するということで。引き留めようとする心には乗っからないッ。ムリとは思うけど、敵の準備が整う前に到達するのがベストなんだし。どうせろくでもない実験体が待ってるよ。
とはいってもさ、4本角よりは弱いと思う。ダンジョン内での戦闘だし、フーちゃんも存分に火力を出せるだろうから、ルァッコルォはこのまま休んでていいかもだね。
フーちゃん主体になると遠距離戦になるしさ。攻撃範囲も広いから、ルァッコルォが輝く戦闘距離だと噛み合わないんだよね。
ボカーンってするほうが、好きなだけかもしれないけど……。
≪第1層クリア。別ステージはなかった≫
あるとしたら、生活するためのステージで深層になるのかな? 人を呼び込むタイプのダンジョンじゃないから、浅層にあるとしたら時間稼ぎ用か。
うーん、それならあるかもしれないのかあ。メンドウかも。
「2層入り口まで行っちょく?」
「ンン……行くするー。早い、なるする。チョット」
≪では天道虫号に、ご乗車くださいマセー≫
殺意高めのトラップは、もう発動させておいた。再起動には少し時間が必要だし、魔物も粗方処理済みだから、今のうちに進んでおけば安全だ。
静かにお邪魔しましょう。
プニプニのポカポカで、ルァッコルォは寝落ちしちゃってるみたいだしね。だけど結局は、すぐ起こすことになった。
2層中ほどに、移動する毒々しい沼から攻撃を受けたので。
<
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次回≪MISSION:120 最後っ屁≫に、ヘッドオン!
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