MISSION:118 性悪
主導権を得るために、コッチから攻め込むつもりだった僕ら。だけど僕がニセモノの気配を感じるように、ニセモノも僕の気配が分かってたようだ。山頂で待ち構えてたよ。
しかも──
「ドラゴン? した」
──ニセモノは禍々しい気配を垂れ流す黒っぽい銀色の骨竜。
「スカルドラゴンであります!」
「しかも素材はアダマンタイトじゃ」
≪騙されたー≫
いや、勘違いだったんだけど、騙された感が強い。クソー。
でもそりゃあそうか。別にスライムである必要はないもんねえ。
「楽、なるした?」
「粒子対策が無意味になってしもうた……高いアイテムじゃったのに!」
「幸いにも敵は大型であります。アダマンタイトで取り返しましょう!」
≪だね。慈悲など要らぬのだー≫
奪われた僕の魂は素材になって還元されてもらおーっと。アダマンタイト、ダイヤでもファンタジー鉱石でも、どっちでも
「聞いたか? 傲慢で強欲な新人類に与する者どもも同じであろう?」
「ですね。憧れの種族だったのにガッカリした! クソー、せっかくファンタジーの世の中なのになあ」
せっかくのエルフや獣人が台無しじゃんかって、ニセモノが僕らを非難する。
コッチを見るみんな。
ソラシッする。
≪そ、そんなことより警戒しないと! 邪人もいるし!≫
コッチ見んな、ってヤツだよ。敵が目の前なんだから!
ニセモノはどうやら記憶の継承はしてないみたい。だけど僕っぽい雰囲気は出してるな。
「悪、臭いする、多いする」
なのに気配は禍々しい。
1個の身体に、魂を詰め込まれてる系なんだと思う。フーちゃんの精霊レーダーも、ソレを感じ取ったみたいだ。
「殺すする、来た。悪、死ぬする」
「フン、羽虫がほざくわ。森に籠っておれば良いものを」
そう言った邪人の瞳が赤黒く変色していき、4本の角が生えてきた。
≪っく、モヒカンみたいにっ≫「っく、モヒカンみたいにっ」
同時に笑いを堪える僕とニセモノ。
「ポーちゃん……」「やめときんさいや……」
「チィ、おい行くぞ、アダマス!」
「ラジャー、エネルギー充填開始!」
スカルドラゴンの口に高濃度の魔力反応!
<ブレイク! ブレイク! なおニセモノの後方より増援あり。2本角の邪人5、コケシ2!>
僕と違って油断しなかったフーちゃんが、練り上げた魔力を解き放った。
「
「フォトンレーザー砲発射アッ!」
「そんなんポーちゃんのご飯じゃ!」
≪いただきます!≫
「甘いであります。風遁、
ブレスを食べるために、僕だけ前に出る。朧の王から逃れた2本角は、コッソリ忍び寄って始末しておこう。
みんなは散開しつつ、当初の予定通りの敵に向かった。僕とワワンパァの相手はスライムじゃなく、ホネホネだからかなり楽になると思うけど……。
フーちゃんの相手は4本角。
ルァッコルォの相手は2体の銀コケシだ。
「ルーちゃんとこ、援護に行くけど
≪コッチはまかちょーけー!≫
ワワンパァは、ジェットパックからマジックハンドを射出しながら援護に向かった。コケシも飛ぶんだから気を付けてよ!
僕も分配を変更する。
残りの1機分を4等分して、AWACSとみんなの掩護用にする。AWACSにはネーネさんにも連絡してもらおう。
到着したら待ち構えてたから、まだ連絡してないんだよね。ニセモノにも僕の存在が分かるっていう考えが、浮かばなかったのが失敗だったよ。
ダンジョンに入るまでは見つからないようにって、思ってたからなあ。
「もーー、鬱陶しいなあ! ラプターの癖に派手な塗装にするなよ、ニワカ!」
ムカツクー!
「勇者召喚でいい気になってんの? 王様に騙されてるとも知らずにさ。ただのバカじゃん」
しかもスッゴイ煽ってくるんだけど、このニセモノ。
アレェ?
僕ってそんなに性格悪かったっけ?
「ポーちゃん、気にする、ない。混じるしてるする!」
≪そ、そうだよね!≫
「集中じゃ!」
「ささっと終わらせて天空露天風呂でリフレッシュするでありますよ」
≪アイアイ、マム≫
頭は冷静に、だ。
「なにがブレイク! だよ。突っ込んで来たくせに。どっちかといえばヘッドオンじゃない? 分かってるんデスカー?」
≪FOX3!≫
冷静にー、冷静にぃ、空対地ミサイルを発射。32TSAMでも喰らっとけ!
でもニセモノは骨の翼を一振りして、空に上がる。
翼関係ないじゃんか……スカスカなのにさあ。
「ハズレ~」
≪アタリだよ( ゚∀゚)アハハハハ≫
周囲を旋回してた1機で、ニセモノの目の前に大型のメッセージウィンドウを展開して表示する。
お返事は不要です。
「え、ぁ、」
スカスカなんだって。
魔石の場所が丸見えなのです。僕のミサイルは僕だから、狙いは外さない。
残念でした。ゴチでーす。素材はあとで回収するよ。
「ヌ、ガゥッ!?」
≪僕らを舐め過ぎだったね!≫
ってか硬いな? この邪人。大型徹甲弾で突っ込んだのに刺さらない人型ってどんだけ……。スカルドラゴンは敵じゃないから、この邪人に狙いを定めてたのに効いてないのは想定外だった。
だけど接触したらこっちのも──
「
「
──の、じゃ、なかったっ!?
「舐めておるのは貴様らであろう?」
フーちゃんの王シリーズも、あの一言で相殺してる!
僕のミサイルは、ついでのように3分の2が消滅した。残りは粒子になって偽装してやる。
炎で身を包んだ邪人は「作りたては役に立たんか」とニセモノを一瞥。銀コケシにお代わりを要求した。
「へぇ、出しちゃうんだ?」
「島が使えなくなるのにな?」
「白銀の
「させませぬ。
「行け! ウチの手!」
2人いたので、ガトリングガンで牽制しつつバフを重ね掛けしていたルァッコルォ。お代わり要求が出されたし、ワワンパァが参戦したので決めに掛かった。僕の割り当て分も十分にあるから、ワワンパァ側のコケシにミサイルを放つ。
≪コケシ2に8TAAM発射!≫
奥側を狙うついでにダンジョン入り口を塞いで、増援を出せなくしてやる。コケシ1のほうはルァッコルォから距離を取るために、ジェットパックを起動して空に上がった。
成り御雷の記憶を共有してるからこその行動だ。でももう対処済み。アフターバーナーを吹かして接近していくルァッコルォが、唐突にアルカンシェルを使って残像を生み出した。
直後、空を駆け上るような稲妻の光が、銀コケシを分断。
危なげなくルァッコルォが完勝した。
「お前らの好きにゃあさせんけえね」
「おー、がんばれ小っちゃい子~」
ワワンパァもガトリングガンでコケシを攻撃。小バカにしてくる銀コケシだけど、雷撃弾が激しく降り注ぐから、注意をそらされてるのが分かるね。剣技には自信があったみたいだけどな。弾を切ってたせいで音と光が邪魔をして、小っちゃなワワンパァを見逃した。
「なッ!?」
誘導して、マジックハンドの攻撃で仕留める。練習してた動きだ。ワワンパァの攻撃がコケシの頭部を貫いてジ・エンド。
コケシのほうは、僕の残機に任せておけば大丈夫だな。
「パァちゃん、ポーちゃん、フーちゃんの援護に!」
「うん!」≪ラジャー。ダンジョンの警戒は残機でやるから!≫
問題はコッチ。想像より強いんじゃないか?
「4本、なかなか強いする」
「小童が抜かす」
会話をしつつ隙を窺う2人。同時に魔力も練り上げてると思う。フーちゃんのは分かるけど、邪人のほうは隠蔽してるのか、感じられない。
「ポーちゃん、行くする、よ!」
≪
8機のラプターにビルドマインし直して展開。
4本角を中心に旋回する。
高速徹甲弾をセット。
≪FOX3!≫
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次回≪MISSION:119 一刺し≫に、ヘッドオン!
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