MISSION:113 計画

 ダンジョンのナニかで、身動きすらできなくされたフーちゃんとルァッコルォ。


「許し、欲しいあるする」

「チョットだけ調子に乗ってしまったのであります」

「「「「……」」」」


 メンテドールに囲まれて、許しを請う2人。

 僕は狂気を感じてしまった。楽しいはずの晩ご飯だというのに。

 ワワンパァってば仕返しが苛烈デス。


 青々としたキャベツの1番外側とか、大根の1番先っちょとか……。

 しかもセロリやパセリまでッ!


 無表情のメンテドールが粛々と、2人のお口に苦かったり臭かったり辛かったりするお野菜を運んでるんだ。

 生のお野菜を粛々と。


≪さすがダンジョンマスター。残虐ダナー≫

「これ食べたら許しちゃるもんね~」

≪まあDP食材だし、安全安心かあ。ガンバレ!≫

「ステーキが待っちょるよ!」


 お風呂でのコチョコチョ地獄は酷かったから仕方ないかもだね。僕とワワンパァはお肉を食べながら、2人にエールを送ってるよ。


「ズルイすむぐーっ」

「そ、それがしもお肉が、あっ、セロリは! セロ──」

「「「「アト ヒトクチ デス」」」」

≪わざわざロボっぽく言ってるしー!≫

「ホンマに喜こんじょる……ウチぁなにがえんか分からんわ」


 ここにいた僕のアドバイスかあ。しょうもないことをワワンパァに教えちゃってえ。でもグッジョブ。

 ワワンパァも気が済んだのか、椅子の拘束具を解除した。


≪さて、これからのことなんだけど≫

「さて、で済ますのはヒドイのでありますが」


 だってしょうがないじゃん。ただの罰なんだし。心を未来に繋げようじゃあないか。そのほうが前向きだしいことー、だと思います。

 ささ、美味しいステーキをお食べ。フーちゃんはもうがっついてるよ。


≪で、これからのことなんだけどさ、邪人の小粒グループを泳がせるしかないのかなって思ってるんだけど≫


 片っ端から潰してたら大元に辿り着かなかったんだよね。でも泳がせると、一般の人が被害に遭うかもしれないから困ってる。邪人はどこにでもいるけど、重要拠点が分からない。


「力のなさそうな角なしを見逃すとかですかね?」

『んー、オラぁ見つけたら片っ端から始末してたべ。泳がせるとか考えたこともなかっただよ』

「そもそも危ない思うんじゃけど? その作戦」

≪僕が尾行してるから、なにかしでかす際は速攻で処理はできるよ≫


 尾行っていっても粒子の僕がくっ付いてるだけだからね。即死とまではいかなくても、行動不能にさせるのは簡単だ。

 邪人の外皮が硬いとかじゃないからね。


≪小粒グループは誘拐がメインっぽかったから、送る先が分かればなにかしらの施設に辿り着くと思うんだけどさ≫


 行先を記すものは見つかったことがないんだよね。腹立つことに、そこら辺の管理はしっかりやってるんだよ、アイツら。秩序ある悪は厄介だって、以前ルァッコルォが言ってたけど、ホントそうだよなあ。


「じゃけど囮に使ってえ人なんかおらんじゃろ」

「それがしたちのことはバレてるでしょうし、自らというわけにも参りませぬな」

「ニャムちゃん、オーちゃん、頼むする?」

≪ニャムちゃんもオービーヌさんも冒険者のふりしてるからなあ。誘拐の対象じゃなさそうだよ≫

「いえ、ユッグベインには知られてないでしょうし、町娘に扮してもらえばいいだけであります」


 あ、それもそうか!

 ちょっといいとこのお嬢さんに偽装すれば、イケるのではないだろうか。それにニャムちゃんとオービーヌさんだけじゃなくてもいいんだしさ。


「ベルガムの特務機関に協力を要請しましょう」

えね!」

≪根こそぎヤッちゃう作戦開始だね!≫

「開始するするー!」


 僕なら途中をすっ飛ばして、王様に直接協力要請できる。

 助けてゴエモォ~ン!

 ってホットライン的に向こうの僕に連絡を入れた。邪人やっつけるために、特務機関を僕にちょうだいな。


 コッチでざっと作った計画、文面にしてAWACSエーワックスにアップしておく。関係各所の僕は目を通してもらおう。

 特に王様たちと、ネーネさんの所にいる僕は必読です。


 細かい調整はやってもらわないと、僕らだけじゃレベルを上げて物理で殴る風味豊かな作戦になりそうだし。

 作戦を練るというのも必要だろうから、すぐ返信はされないと思う。


≪おやすみからおはようまで時を飛ばそう≫

「なにうちょるん?」

「寝るする?」

≪そう~≫

「文学的ですな」

≪んなこたぁない≫


 明日はフーちゃんの新しい剣の性能を、試す日だ。

 ワワンパァもルァッコルォも参加するつもりみたいで、見るだけのつもりの僕もちょっと楽しみ!

 アルカンシェルもファンネルもチラッと見ただけだからね。


 だというのに、翌朝僕らは王様に呼び出された。もうちょっと、あとだと思ってたんだけどなあ?

 僕は2、3日後のつもりだったよ。


 作戦には賛成するけど、もっとキッチリ決めないとダメだからってのが理由みたい。直接話し合いたいそうだ。

 東大陸からベルガムの特務機関の人らを呼ぶとなると、軍事行動だし貸してと言われてすぐに貸せるものじゃないってさ。


≪そんなの分かってるよねえ≫

「ん、分かるする」

「国と国の話し合いが必要じゃけえお任せしたんじゃろ?」

いではありませぬか。それがしはエリヴィラ様にも会いたいです」

≪ルァッコルォの欲しがりさんめ!≫


 ち、違っ、とか言ってるけど絶対合ってる。


「ルーちゃん、欲しがりさん。うふふ~」

「ルーちゃんにエリヴィラ様を任せるわ!」


 でも王城に着いてみれば、エリヴィラ様が夢中になってるのは東大陸の王女様、トニーナちゃんでした。ああ、ワカル。トニーナちゃんはカワイイからなあ。

 って、えええっ!? ゴエモン一家が来てるって!?


「お久しぶりですね? フィア姉様、パァちゃん、ルーちゃん」


 毎度お馴染みになりつつあるプンプン、って感じのお出迎え。あんまり来なくなっちゃってるからなあ。でも僕らにも大事な用事があるんですー。

 というか、エリヴィラ様に抱かれてるトニーナちゃんが、僕らとエリヴィラ様に視線をキョロキョロ移してるじゃんか。


「ご無沙汰でありますエリヴィラ様! トニーナ様もご機嫌麗しゅう」

「2人、久しぶりする~」

「おはようございます、エリヴィラ様。ニーナちゃんはお久しぶりじゃねっ!」


 覚えられてて嬉しかったのか、トニーナちゃんがパアァッって笑顔になった。でも遊べるのはあとになりそうだよなあ。僕らってば王様同士の話し合いの中に入ることになるんだし。


「ええ。残念ですが友好を深めるのは後程、ということになりそうですわ」

「ウチぁどっちに行っても緊張するんじゃけど……ニーナちゃんだけが救いじゃ!」

「ニーナも遊びたい!」


 僕と遊ぶくらいしかできないよねえ。王都見物でもするか、って思ったけど王女様だから簡単なことじゃないだろうし。ゴエモンに聞いてみたら、南大陸にいること自体が極秘だそうで、王城から出すことも禁止された。


 ホントは連れて来るつもりじゃなかったそうなんだけど、トニーナちゃんには激アマだしね。

 僕と王妃様たちで相手することになった。


「それがしたちだけ真面目な話……」

「全部ユッグベインのせいじゃ」

「許すない、する」


 怒りの燃料には事欠かない連中ですな。実を言うと指揮蟹島の件もあって、ユッグベイン関係は少々不安もあったんだ。ワワンパァの心だって、鋼じゃあないはずだよ。


 でも真面目な話させられるのはアイツらのせいっていうことで、プリプリしてるんだったら平気かもしれないな。島の緑地化計画も順調ってのも影響してるんだろうな。エーゴーァさんは、ちゃんとワワンパァを守ってるね!


「こちらでお待ちです」


 案内されて到着した場所は、王様の執務室だった。謁見の間じゃあないんだ。王様同士の会談だからかな?


「リオー、来るした~」

「ッグッ」

「姉上よ、ラマザン王の前でそれはやめて欲しかったのだが?」


 ゴエモン氏、震えておられる。


≪フーちゃんは自由過ぎですよ。東大陸の王城では宰相閣下の睾丸殴打をしてましたしね! えいっ! って≫

「なにをやっておるのだ!?」

「ごっふぉっ、だはははははっ、す、す、すまん、耐えられんぬはははは」


 ゴエモンが決壊した。ニャムちゃんのパパーンである宰相が、すごく恥ずかしそうにゴエモンを諫めてるよ。


「ンッ! 宰相、強いした。いこと~」


 そういうことじゃないんだよフーちゃん。王様の前なのにいつでも自由なことが問題なんです。王様たちに悪友とじゃれ合ってるような、新鮮な気持ちにさせてるところ。

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次回≪MISSION:114 心≫に、ヘッドオン!

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