MISSION:114 心

「やれやれ、姉上にはかなわんな」

「ん~?」


 キョトーンとしてるフーちゃんもカワイイなー。軍服と表情のミスマッチもあって、スゴクい。


「それでポーよ、邪人を始末した場所を教えてくれ」

≪あ、はい≫


 アッツェーリオ王に聞かれたので、南大陸の地図になりながら旗状の僕を立てていく。旗には冒険者か誘拐グループだったかを記入した。


「なるほど。内陸の街には冒険者として潜り込んでおるのか」

「港町では誘拐か。輸送力の都合、ということなんだろう」

≪前のときは時間も気にしてました≫

「それも合わせれば観光地を狙われておることが分かるな」

「発覚する前に移動してるってわけか」


 今回のは船に乗せる前にやっつけたから、絶対に船でってことは言えないけどね。たぶん合ってると思う。衛兵が見付けられないのは、観光客が狙われてるせいってのが原因なんだろうな。邪人じゃない悪人から仕入れてる可能性もあるけど。


「囮捜査員の派遣は任せろと言いたいが、ヤツらもほとぼりが冷めるまでは動かないんじゃねえか?」

≪確かに! しまったあ、失敗したかな≫

「ポーよ、未然に防いだことは失態ではないのだ」

「だな。ポー、どんな人が攫われてたのかを詳しく教えてくれ」


 準備には時間も掛かるし、大丈夫だって言われてホッとした。

 言葉遣いなんかも南と東では若干違うから、まずは港町の各領地で修正させたりするみたい。


≪攫われてたのは、チョットいいとこの人って感じですね≫


 今まで貴族は攫われてなかったし、大富豪みたいな人もいなかった。僕らもお土産を買いまくってたら、邪人が釣れたしね。

 そこそこお金持ってる人が対象なんだろう。


 観光地でお土産を買いまくる人。

 観光客は消えても気付かれにくいし、活動資金の調達もできる。ユッグベインには実に都合のいい人なんだろうね。


「それで姉上よ。こちらの準備が整うまでは、捕らわれたものの救出のみをやって欲しいのだ」

「邪人共は残しておけよ?」


 捕まった人の中に悪人がいたら処理してもいいらしい。


「分かるした」

「この話し合い、ポーちゃんだけで良かったではありませぬか」


 強心臓してるなーって顔で、ワワンパァがルァッコルォのほうを見ながら、確かにって呟いてる。


「ふっふ、久しぶりに皆の元気な姿を見たかったのだ」


 孫を見るお爺ちゃんの笑顔で、子供のフーお姉ちゃんを見るアッツェーリオ王の図。ファンタジー特有の問題だね。

 時の流れは残酷というのは、このお爺ちゃんの言葉だったかなー。


≪寿命の感覚が、どうしても慣れないなあ。僕≫

「安心しろ、ポー。俺もいまだに慣れてない」

≪え、そうなんだ? この世界で、長いって言ってたのに≫

「うむ……アッツェーリオ王にも伝えておくか」


 そう言って自分が初代コロコロと活動したゴエモンだって話した。

 アッツェーリオ王は驚いてた。そりゃあもう驚愕。でもそれ以上に、この国の宰相が虹の忘郷とか当時のこと、つまり古代の生活のこととかを質問しまくってて王様たちに引かれてた。


 浮遊石を全部処理したら、虹の忘郷って言われてた空中要塞に招待しますよって伝えておく。もちろん海底神殿ダンジョンにもね。考古学的には海底神殿のほうがいいだろうし。


「時代が進んだら浮遊石は俺が再利用するつもりだったのにな」


 僕に取られたって、ゴエモンに文句を言われた。当時使わなかったのは、恐怖の象徴だったからなんだってさ。


「平和、象徴なるする」

「天空露天風呂はえもんじゃけえね」

「あれは絶対流行りますよ」

≪対コケシ戦闘用に作ったはずのネーネさんも入り浸ってるからなあ≫


 そのうちみんなも入りに来ればいいさ。

 あ、そうだ。ニャムちゃんがまた旅に出ちゃったし、フィギュアをお土産として持って来たから渡しておこう。


 ライカンスロープだから囮作戦にも参加するだろうし。作戦の決行は3ヶ月後ということになった。人員の選別にもそれなりに時間が必要とのことだ。言葉の修正もしなくちゃいけないし。


 そして人員を空輸しちゃうと目立つだろうということで、船に乗って来るしかない。それだけで1ヶ月は掛かっちゃうしね。

 ユッグベインもすぐには活動しないだろうという理由もある。


 その間、念のために僕らが警戒しておくことになってるよ。

 港町はオノモン、ミルセラ、カンフポスティ、ミケルブエバ、リドゥリー。

 内陸の街でなおかつ、船で輸送可能な観光ができる街。王都のアベルガリアとチヒ鉱山街にも配置することになった。


 7か所2~4人の構成で4組ずつ総勢90名は出せるだろうとのこと。恋人や友人同士、家族って感じで偽装するみたい。さすがに全員ライカンスロープというわけにはいかないみたいで、各チームの半数になるってさ。


「ポーには隊員1人に1塊ずつ連絡用として付いてもらいたい」

≪イエッサー!≫

「活動資金については要請しておるこちらで持とう」


 アッツェーリオ王が遠慮はいらぬぞとか言うもんだから、こっちの宰相は顔色が悪い。向こうの宰相はニャムちゃんフィギュアもあるし朗らかスマイルを浮かべてる。


 海底神殿で見つけた古代金貨には、ほとんど手を付けてないから資金は潤沢なんだってさ。金貨以外にも僕らがダンジョンから持ち帰ったものもあるしね。たんまり持ってるんだろう。


 そういえば前の誘拐事件はリドゥリーから北上してたっけな。一応、そのことも伝えておいた。たまたまかもしれないし、北上する理由があるのかもしれないし。

 念のためってヤツだ。心の片隅に置いておこう。


「リオ~、オヤツ、食べるしたいする」


 話し終わったよね? じゃあじゃあオヤツにしようよってフーちゃんが。そうだね、そこそこ時間も掛かったしなあ。でも調整も終わったしオヤツ食べてもいい頃合い。


「そうだな。中庭に用意させよう」

≪じゃあトニーナちゃんと王妃様たちも呼んでおきます≫

「んっ。ニーナ、遊ぶする」

「おお、頼む。ニーナも喜ぶだろう」


 僕がニーナちゃんに色々と話してるせいで、ルァッコルォの神威成りに興味津々だしねえ。さっきも見たいって言ってたと伝えたら、オヤツのあとにでも練兵場で見せてやってくれと頼まれた。


「パァちゃんのも不思議でありますから見てもらっては?」

「ほう? まあ別にかまわんけど」


 でも中庭に着いたら、オヤツよりも技を見たいとねだられてしまう僕ら。さすがにフーちゃんでも、自分より小っちゃい子に頼まれたらオヤツの優先順位が下がったよ。


「出は行きますよ~。まずは土遁、まとい──金剛こんごう


 土遁はは防御力を上げるヤツ。風遁は速度が上がるヤツ。火遁は攻撃力が上がるヤツ。って説明しながらトニーナちゃんに見せていくルァッコルォ。

 シュゴーって魔力を纏いながら、神威成りはどれが見たいか聞いてるね。


「ちなみに土遁のは使い道が分かりませぬ……すごく硬くなったところで、短時間では意味を見出せないのであります」


 なお、見た目はとっても地味らしくてお勧めできないってさ。なのであっさり名前を教えてくれた。狭土さづちっていうらしい。

 知らない神様っぽい。


 ルァッコルォ的にお勧めは火遁のヤツだって。キレイだったもんなあ。武御雷のヤツは派手だけど、一瞬だしね。雷を見れば雰囲気は伝わる。


≪火遁! 火遁のがいいよ! 僕もちゃんと見たい!!≫

「ポーちゃん、ホント? じゃあニーナも見る!」


 毬みたいな光のエフェクトが出てたし、中から見てみたい気もするな。

 僕なら見れるカナー?

 子犬サイズを分離。


≪この僕塊ぼっかいを攻撃して欲しい。内部がどうなってるのか気になる≫

「ポーちゃん、変あるする」

「ねー。どういう神経しちょるんじゃろう」

「ポーちゃん良いのであればやりますが……」


 僕は触手を伸ばして○を出す。


「では──迦具土かぐつち!」


 その言葉と同時に来た!

 チラチラと輝きながら増えていく分身。身体全体から発している魔力の輝きが、新体操のリボンみたいに舞ってる。「行きますよ」の声に合わせて、僕を一瞬で取り囲むルァッコルォ。


<うわっ!?>

≪どうなってんの?≫

<チカチカする。真っ白のチカチカで、わけわかんないくらい切られまくってる>

≪分身してる身体の動きよりも高速で切りつけられてるってこと?≫

<たぶ──>

≪あ、残機切れしたっぽい≫


 でもこのスゴイ攻撃を40秒くらい耐えた自分を褒めたい。


「お前……さてはアホだろ」


 ってゴエモンに引かれた。

 いいんだよ、好奇心は大切な心なんだから!

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次回≪MISSION:115 スイッチ≫に、ヘッドオン!

国之狭土神くにのさづちのかみ→成り狭土

 決める時に凄いググった覚えが……。

 そして使い道が思いつかない……。

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