第4章 大森林の暇人たち
MISSION:85 人生の彩り
「そんな、またお出掛けしてしまうのですね? フィア姉様」
プンプンって感じで文句を言うエリヴィラ様。せっかく時間を掛けて夜目と暗視の法陣術を組み上げてくれたのに、僕がサクサクッと覚えちゃってさ、しかもエルフの森に行くとか言ったもんだからさ、そうなっちゃってしまいました。
「苦労した甲斐がありませんわ! ポーちゃん、ご褒美が必要なのです」
「ほうよぉ? いくらなんでも可哀想じゃあ」
「そうであります! そうであります!」
「ポーちゃん、急ぐ、過ぎるする。落ち着くする」
ウッ、だってエルフの森とか、世界樹とかいうワクワクワードには反応しちゃうよ? ゲーマーならさ。未知のアイテムとか強者とかが待ってるんだよ? きっと。早く行きたいじゃんかあ。
一応、東の王様からの要請だしぃ。仕方なしだよ、絶対。
しかし、みんなの意見も絶対だよ。仕方なし。
仕方ないので夜のお散歩にでも出かけようかなー。
≪じゃあ僕は夜目と暗視の使い心地を試してくるね。みんなはご飯食べててー≫
はーいって返事を背に受けて、僕は中庭に向かった。明かりが灯されてるから城外に行かないと試せないからね。夜空に向かって飛び立つ。
まずは夜目から試してみよう。複雑怪奇な法陣術の回路に魔力を込める。
するとどうでしょう! なんと周りは暗闇のまま!? アレ?
マテマテ、暗視ならどうだろうか……魔力を込めて……オヤァ?
ってところで思い出した。デバフ掛からないけどバフも掛からないんだった……僕。
そうだ、残機制のせいで個体数が多すぎて、魔法の対象を絞れないんだった。範囲系なら数%ほど掛かるくらい。つまり数%でも夜目や暗視が掛かれば、夜でもある程度は視認可能な状態になるはず。
これはなんとか改造しないとね。サクサクって感じではできそうにないから、少し時間が必要かな。
対象を単体から範囲に変更するだけだけど、関わってる場所がいっぱいあるからチマチマ変えていくしかないや。
マジック・ディテクションの対象を、範囲型にしないと発動しなかったのもコレだったんだなーって、今さら気付いたよ。
≪って感じですぐには使えなかったんだ≫
「やはり落ち着くべきですわね」
「他にもやることが色々あるけんねえ」
「ダンジョン手に入れるしたー」
「ニーナちゃんのフィギュアも大事でありますよ」
≪やることいっぱいあるね~≫
今回手に入れたダンジョンで3つ目。合計で4つだよ、4つ! ワワンパァはダンジョンマスターとして、珍しい存在になってるんじゃないかなあって思う。
そして増えたダンジョンのおかげで、基本DPの入手量が当社比3倍になったそうだ。できることも増えるよね。新ダンジョンのほうにも人が入れるようになれば、さらに儲かるしさ。
≪コロッセオのシステムは残そうよ。アレ、なんかワクワクするし≫
12ルートクリアして、12中ボス撃破しないとコアルームに行けないっていうのも使えるよね。
「じゃけど入口12個は多すぎるけん、近くの村辺りまで伸ばす2つの入り口だけにするわ」
ダンジョンの側に街作り。フーちゃんが嫌がった。スゴク嫌がった。つまるないする! って強固に反対。なので山の麓の村を発展させることになったんだ。一から街作りだと時間掛かるしさ。
「ンー、それ、私たち不便なるする?」
「そうですね。南大陸からでは反対側になりますし」
「ほんじゃあ南大陸側の入り口も、残すのが
正確な場所は僕が記録できるから、スーパー偽装してたら誰にも見つからないのだ。
「秘密の入り口。ワクワクしますわねぇ」
その内ダンジョンに招待して欲しいとか、ニーナちゃんのフィギュアちょうだいとか、駄々っ子ルァッコルォフィギュアも欲しいとか、いっぱい注文してエリヴィラ様は帰って行った。
「しっ、仕事に対する報酬を求めただけですがー? それがし、駄々っ子ではありませぬケド~?」
カワイイから、ルァッコルォはそのままでも
「ポーちゃん、謎、情熱、出るするしたー」
「ルーちゃんの駄々っ子で興奮しとんの?」
≪フーちゃんも、ワワンパァも、興奮してたしっ!≫
「ルーちゃん、ドジシリーズ、大人気あるする!」
「捏造ですー。それは、捏造でありますーっ」
≪いや、それはホントにゴメンだよ≫
「もう信じられとっても不思議じゃないけんねえ」
「であれば、お小遣いを要求するであります」
それでいいのかい? ルァッコルォ。
≪じゃああげる≫
「わぁい!」
フィギュア代が入金しましたのでな。金貨63枚、銀貨92枚、銅貨255枚だった。えーっと前にもらってから丁度2週間くらいだと思うけど、どうだったかなあ。
でもそうだとしたらさ、1日金貨5枚以上は稼いでるってことに。
≪みんなに金貨1枚ずつ渡しておくよ。ルァッコルォだけドジっ子サービスで、銀貨2枚と銅貨55枚も追加≫
「ウフフヒ、幸せでありまぁす」
「ポーちゃん、ありがとするー」
「ありがと。念のために持っちょくかねえ」
で、それ以外のお金だけど、アーさんに渡そうかなって。実はコロッセオダンジョンのお宝にでも使えるだろってさ、ゴエモンから古代金貨が半分返却されたんだよね。そして思い出した。ワワンパァにしか、お金渡してなかったって。チヒダンジョンでもお金は使い道アルヨー!
≪って思ったんだー。いいよね?≫
「おー、渡す、ないしてた!」
「確かに! アーさんゴメンじゃわ」
「それがしはまだお会いしておりませんな」
≪じゃあ明日にでも行こっか≫
北に向かう予定なのに、南に向かうことになった。なんでかって言うと、ルァッコルォ以外ポンコツだったからです。ごめんよ、アーさん。
アーさんとこに連絡を入れたら、問題なく貨幣も稼いでるって言われた。な、なにぃっ? できる男だなあ。
◆
お昼前にチヒ鉱山街に到着した僕ら。
「なんか人が
「ウキウキ、気配、いっぱいある」
「賑やかでありますな!」
≪なんか河の港のほうに向かう人が多いね。行ってみようよ≫
とりあえずダズ爺やナターリャさんにも、連絡を入れておいた。銀コケシのことも聞きたいし、集まれないかって。
「で、伝説のコロコロパーティに所属してたダズ翁に、指揮蟹島の英雄であるナターリャ様と
「フーちゃんと一緒におったら、人生が伝説に彩られるけん……」
「
≪ゴエモン伝説のことは内緒って覚えてるよね? 言っちゃダメだよー≫
今の人生が生き辛くなるので、内緒にしてくれって言われてる。まああの人も伝説の人だしね。王ってだけでも大変なのに、それ以上に崇められるのは嫌らしい。
この世界に魂が縛られるっていう条件で、かなりの神様ポイントを稼いでチートしたそうなんだ。でも何度か転生していく内に、チートが消えちゃったんだって。
今の人生はただの努力の結果らしく、伝説に名を連ねることはできない力量。というのが理由だってさ。
でも彼の残した技術は受け継がれてる。ルァッコルォが使う、カッチョイイあの技のヤツね。
アレがあるから、僕がポヨポヨになっても、まだ許せるのかもしれない。
「喋りたい、なる」
「ウチも」
「実はそれがしも」
≪ついチャッカリ喋りたいよね≫
でもなー、内緒って言われてるしなー。
「今、弱いする、いう、理由、ダメ。情けないある」
≪あ、それは仕方ないかも。だって平均寿命が80年だよ? 魔法もオーラもない世界だよ? しかも身体が向こうの脆弱なままで、この世界に来てるんだから神様の力で強くなるの必要だよ≫
「ハッ! そうあるしたっ」
神威成りは生まれつきの耐性が必要みたいで、前々世で限界だったんだって。今は普通の獣人なんだそうな。つまりルァッコルォは、選ばれし人ってことだ。
普通の日本人と比べたら、今のほうがなにもかも高スペックだって言ってたけどね。
「ポーちゃんは神様と会ったのでありますか?」
≪会ってないんだよねえ≫
「パァちゃん、会えるした? 神様」
「うん。なんか圧倒的って感じじゃったよ。全部」
≪えー、いいなあ。僕なんて目が覚めたら身体もないしさ、霊体のまま変な汁に浸かってた。泣きたい≫
「泣いて
ちょっと焦ってるフーちゃんかわよ。
≪邪人退治に来てたんだから仕方ないって、フーちゃん。本来ならついでの魔物退治なんだし≫
「う、うん」
≪フーちゃんが来なかったら、僕は邪人の制御下に置かれてた可能性もあるなあ≫
「効かないのでは?」
「邪人、謎技術あるする」
「ウチらの番が来たけん、景気の悪い話は終わりじゃー」
本日はコロコロツアーにご参加いただき、誠にありがとうございます。ってな感じの声に導かれて、僕らは観光船に乗り込んだ。だいたい20~30人で1隻かな。
コロコロパーティの軌跡を、河沿いに点在してる銅像を指さしながら、添乗員さんが説明してくれてるよ。盛況でなによりだね。
「初依頼で護衛に付くってとこで終わってしもうた」
「これからってとこであります。フーちゃんは続きを知っておられますか?」
「んーん、知るないある」
≪ダズ爺の戦略かなあ。なんか続きはフィギュアで作ってそう。ていうか、王子がなんで護衛依頼を受けてんの!?≫
そんなの駆け出しの商人がカワイソウじゃんね。
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次回≪MISSION:86 美女と野獣≫に、ヘッドオン!
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