MISSION:83 悲哀
ベルガムに到着したころには、日が落ち始めていた。僕らは王城に向かうのを翌日に変更して、ホテルに泊まることにしたよ。部屋を取ったらルァッコルォをベッドに寝かせて、冒険者ギルドに向かう。オーガの角とモックドレイクの皮とか牙なんかだけ。他の魔物の素材は取って来てないから。
するとビックリするくらいの金額が付いた。でもモックちゃんは全部は売らないで、半分だけにする。ワワンパァダンジョンに投入して、トレジャー用の装備品にするからね。
ちなみにクラフト系ゲームみたいな感じで作るよ。鉄x3、魔石x2、木片x1、布切れx1で+1ロングソードとかね。凝らない場合はテンプレートに沿って、ポコポコ作れるんだー。
売却する素材は、オーガの角x36本。それからモックドレイクの皮と鱗15セット、爪258本、牙1000本。
結果、大金貨7枚、金貨1枚、銀貨8枚、銅貨8枚。
僕の感覚で言うと、718万8千円ですよ。ななひゃくじゅうはちまんえんっ。
内訳は、オーガの角が銅貨3枚。モックドレイクの皮+竜鱗1セットで金貨1枚。爪1本が銀貨1枚で、牙1本が銅貨3枚だった。恐竜だから大きいし、しかもコイツは硬かったから素材としても、優秀ってことみたいだねえ。
大量の素材だったし、職員や冒険者たちにも手伝ってもらったので、併設されてる食事処に金貨1枚預けて、好きに飲み食いしてもらった。
なお、かわいそうなキンタマ8個も、今は涙を流して食事を楽しんでるよー。
楽しそうにしちゃってェ!
僕らはホテルに戻って小洒落たお食事になります。といっても食べるのはフーちゃんとルァッコルォだけなので、起こしてあげないとね。
「ミートする!」
「それがしはクリームでお願いします」
「本日のお勧めパスタは──」
ぐぬぅってなるフーちゃん。なぜならニンジンやカボチャ、ホウレン草などの野菜を練り込んだニョッキだったのだ。
≪モッチモチで美味しいヤツだよ。チーズまで入ってるなら間違いないね≫
「受けて立つする!」
「覚悟しなくても美味しいのでありますよ~」
「あ、ウチも頼むわ。ポーちゃんにゃあダンジョンで出したげるけんね」
≪ありがとー、ワワンパァ≫
「かしこまりました。少々お待ちください」
デザートに季節の果物たっぷりタルトを頼んで、ターンエンド。店側のカードは強力だっから、ふたりの敗北は間違いないだろうさ。チーズINニョッキはホント
モッチーズパスタは至高。
さて、僕は魔石の整理をしておこうかな。味が美味しいのだけはちゃんと区別しておこう。あとヘー氏の魔石も残しておくか。
ゴブコボとオーク級の魔石がどっちも100個超えてるから、ダンジョンで交換しようかなあ。失敗した~。出掛ける前にやっておくべきだったかも。
≪ルァッコルォのジェットパックに使う魔石はゴブリンクラスじゃ足りなくなってるよね?≫
「ですな。それでもオーク辺りで十分かと」
≪オッケー。じゃあゴブリンとかの魔石は、オーク級に交換するのがいいね≫
オーク級くらいなら僕もエネルゲンG的に使えるから、全部交換しちゃおーっと。
≪疲れた身体に──元気、爆ハーツッ! エネルゲン、ジー!≫
「なんねえそりゃ」
≪栄養ドリンクの宣伝文句≫
「ポーションある?」
≪ポーション知らないから分かんないけど、たぶん違うかなあ。栄養をギュギュっと詰め込んだ飲み物だよ。野菜ジュースなんかよりも、疲労に効く成分を込め込めな感じ? 甘酸っぱくて美味しいんだー。でも夜に飲むと眠れなくなっちゃう≫
「ん。なら眠りの侯爵、出番あるする」
「お願いいたしたく。それがし、バッチリ目が覚めてしまいました」
「まかちょけぇ~」
「あははは、途中で起こしゃあ
そんな訳で翌日のこと。お昼ご飯を食べ終わった頃に迎えが来た。兵士の案内で王様のもとに向かった僕らは、いきなり宰相からお小言を喰らったよ。
「──である。そもそも陛下をお待たせするとは、なにごぉっ!? っ、っ、ッ!」
「話、進むない。黙るする」
「フーちゃんッ!?」「なにやっとんね!?」
≪フーちゃん、誰にでも行くんだ……お婆ちゃんの悪影響かなあ≫
王様、爆笑してんだけど……宰相睾丸殴打事件の発生に。そして結局話が進まないじゃん。いやあ、確かに待たせちゃったんだけど、宰相のブーイングが長かったせいでフーちゃんがイラッてしたみたい。
「だから言っただろうが。そもそもこの子らは俺の部下じゃねえって」
「ヌォォッ、セェェイッ! っく、ハァ、しかしですな、陛下」
「むむっ? オーラ強いあるする。えいっ!」
「グワァァァァァッ」
「いやいや、もう止めたげんさいや、フーちゃん」
「ですです。さすがに宰相閣下が可哀想でありますよ!」
睾丸殴打を気合で防御した宰相。強者である。しかしフーちゃんが、えいってパワーを込めちゃったので防御を貫通して、今は床でビックンビックンしてる。
ネコミミおじさんが悶えてもウレシクナイ。
≪そして話が進まないよ、フーちゃん≫
「ああ。そろそろ許してやってくれ」
「分かるしたー」
「さて、俺はポーに聞いてはいるが、改めて説明してもらおう」
とのことなので、順を追って経緯を話す。その結果、深刻な雰囲気が漂う謁見の間。仕方ないよなあ。東大陸では獣人族が臭いで感知するせいか、邪人の活動が活発ではないんだ。だけど表に現れた時には、悪事を完了させてるタイミングなんだもん。
指揮蟹島の時もそうだったみたいだし。被害が甚大なんだよ。
「ストームジャイアントの12賢人は、伝説の守り手でございます」
「だよなあ。そんな英雄を鎧袖一触か。銀色のコケシのような剣士……我が国の歴史には登場してねえよな。うぅむ、そういう種族であれば厄介極まりない。生き残ってんなら尚更ヤベェ。シノビに探らせるか。ポー、長に連絡を頼む」
≪分かりました≫
「ポーちゃん、リオは~?」
≪もう連絡済みだよ。向こうの文献なんかにも残ってないってさ。銀コケシのことなんて≫
2大陸合わせても初の活動記録。しかもそれが、ダンジョンマスターを操る技術に発展してるから、マジ厄介の種なんだよね。契約ダンジョンを奪われたら危険すぎる。
ヘー氏最後の一手ってことだね。邪人を始末し始めなかったら、ユッグベインの資料もキッチリ削除されてただろうし。慌てたから残ってた可能性が高いよ。
「金貨を鑑定したところ、およそ500年ほど前の事件ということになりますな」
「辛うじて耐えてたのが、決壊したってところか」
かもね。魔物があふれ出し始めてたから、僕らが気付いたんだし。
「ルーちゃんのオイシイ匂いが、大事件を予知しとったんじゃねえ」
「ご褒美が欲しいでありますな!」
「お前は部隊に所属してんだから任務だろうがよ」
「そんなご無体な」
「いえ、陛下。ルァッコルォはすでに除隊させております」
「エーッ! そ、それがし、なにかやっちゃったのでありますか!?」
身に覚えがあるようで、ルァッコルォがキョドってるゾ。首になりかねないヤラカシをしてるっぽい。でも良かったね。そういう理由じゃないらしいじゃん。
部隊に所属してないほうが自由に動けるだろうって、隠れ里の長がルァッコルォを勝手に除隊させちゃったんだって。
「おさぁーっ! ということはお給金もないとっ? ソンナゴムタイナッ」
「ルーちゃん、自由気まま、暮らしするしてる」
「お小遣いあげとんじゃし、困っちゃあおらんじゃろ?」
「それはそれ、これはこれでありますれば」
駄々っ子でありますな! 駄々っ子でありますな!
ルァッコルォは一番背が低いから、スゴイ駄々っ子が似合ってるよ~。
≪駄々っ子ルァッコルォも売り出そう。カワイイ≫
「買うする!」
「ルーちゃんシリーズはウチが作るわ。すぐ反応できるけんね!」
「踏んだり蹴ったりであります……」
≪いいじゃん。今回はかなり儲かったんだしさ≫
「フィギュア化か……よし、その話も聞きたいし、俺との晩飯を褒美としよう。それまでは自由に過ごしてくれ」
名誉なんかより、断然物がいい。願わくば金くれって顔してるルァッコルォ。平伏してるから僕にしか見えてないけど、相当なものだよねえ。コヤツめぇ。
というかさ、不敬。かなり不敬。王様にご褒美頂戴ってねだるのヤバイくらい不敬だと思うんだけど、なんで宰相も許してるんだろう?
≪無礼者が! ってルァッコルォが言われないのなんでなの? 愛嬌?≫
「スー家との
ぬわぁ、ビックリしたッ。宰相が話に参加してきた。
≪そ、そうなんですか? 閣下≫
「うむ。しかもコヤツの母君は我が国の重要人物。親子揃って命運を握っておるといっても過言ではあるまい」
「ヌフヘヘェ。て、照れまするよ」
≪フーちゃんちって、そんなスゴイんだねえ≫
「んーん、ばっちゃまだけする」
「ちなみに宰相閣下は、ニャムちゃんのお父上なのです」
「実はそのことで頼みがあるのだが……娘のふぃ、ふぃぎゃ? を作ってはいただけまいか」
娘が帰って来ぬって、うなだれてしまった。急に面白オジサンになるの反則。そしてニャムちゃんらしき人物を見たのは、消滅した僕だけで情報がないから作れないということを伝えた。
「失意のままに去って行ってしもうたんじゃけど……」
「可哀想あるする」
宰相をかわいそうなキンタマにしといて、よく言うよ!
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次回≪MISSION:84 是非≫に、ヘッドオン!
素材
モックドレイク 皮&竜鱗x16 爪x300 牙x705
※エネルゲンG
ヌフフフンDとかウフフフンVみたいな架空の栄養補給ドリンク(指定医薬部外品)
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