MISSION:82 精霊の力

 フレッシュゴーレムの魔石がパリーンと砕け散った。正に今、解放されたね?

 僕はひゅるる~と音を出しながら、螺旋の雲を引いてバーティカルクライムロールで垂直上昇ッ。破裂しながら音を出してスターマイィィーーーーン!


≪おめでと~!≫

「やりましたな! やりましたな!」

「これで自由じゃね!」

「ピクニックするするー!」


 ここでワワンパァが必殺のカードを場に展開ッ。


「これ、精霊さんにお土産。清浄なマナ多めで仕上げちょるんよ」


 そういって取り出したのは虎の子のマナの結晶!

 ドワーフのプヨプヨ秘儀のヤツじゃんッ!


「っばぅあっ!? 賢者の石でありますかっ!」

「うびぁっ!?」

「みゃーっ、ルーちゃん、汚いあるするっ!!」

「もろに喰らってしもうたぁぁ」


 唾液と混ざってる噛み砕かれたキュウリとかパンとかハムとかチーズなんかが、ドラゴンブレス(扇型)のようにルァッコルォの口から放射され、ワワンパァにクリティカルヒーット。

 ピクニックは露天風呂パーティに変更された。


 幸いにもここは温泉。フーちゃんは精霊魔法の使い手だし、色んな精霊もいたため、温度も上げてもらって丁度いいお風呂になったそうだよ。そのせいで僕の中では、だんだん「精霊ってなんでもアリ」ってなってきちゃった。

 精霊ちからとはいったい……。


「大変申し訳ないであります」


 そう謝るものの、ルァッコルォの視線はマナの結晶から外れない。

 なんて、申し訳なさ皆無の謝罪なんだ。

 ルァッコルォ、ソレはダメなヤツだよ。しかも尻尾が激しく動いてジャバジャバ音が、うるさいであります。


「ルーちゃん、落ち着く、口、塩辛いなるー」

うちょくけど、世間に流れとる伝説みたいな効果はないけんね」


 特に今回のはキレイなマナってだけみたい。ワワンパァの中身になってるような衝撃吸収とかはいらないしね。


「そんなぁ」

≪アハハハ、そもそもルァッコルォのじゃない件ンン≫

『気持ち良さそうにくっ付いてるだよ~』

「ほんならかったわ」


 フーちゃん以外は見えてないんだけど、精霊も喜んでるみたい。良かったね!

 あと僕らのやり取りも面白くて楽しいんだってさ。僕らっていうか、ルァッコルォが、じゃないのかという疑問があるんだけど。


≪ところで海水の温泉って、長湯するとのぼせるんじゃなかったっけ?≫

「ウチ、初めてじゃけえ知らんよ」

「私、知るない」

「そうですね。そろそろ上がったほうが、いいかもしれません。つるつるお肌に仕上がっているでしょう」


 フーちゃんシャワーで肌の表面の海水を流した3人は、ツルツルーってキャッキャしてるよ。ワワンパァは元々ツルツルスベスベのはず。卓越した技術で磨き上げた木のボディだもの。

 でもそんなことは言わない。紳士だからね。沈黙は金ナリィ~。


≪じゃあそろそろ王都に向かおうか≫

「陛下にはお土産を、いっぱいお渡ししたでありますからな。ヌフフフ」

「ダンジョンをもろうちょるんじゃし、褒美をつかわすにはならんと思うけど」

「ルーちゃん、悪い顔、カワイイ……ん? 分かるしたー。問題ないする! みんな喜ぶなるする」


 フーちゃんが精霊と、なにかやり取りしてる。


「いかがなされましたか? フーちゃん」

「ん。精霊一緒行く、言うしてる。契約するー」

≪おー、さすがフーちゃん!≫「さすフーじゃー!」

「違うする。みんな」

「「えーっ!?」」≪マジで!?≫


 ぬおー、遂に魔法使いになれるのかッ!


「アッ……ポーちゃん、ダメする。無理言うしてるする」

≪ナンデェェ!?≫

「さ、さすがに可哀想なんじゃけど……」

「ポーちゃん、くちゃってなってしまわれました」


 だって……そりゃあさすがにさ、へこみまくってペチャンコにもなるよ。説明を求めた僕に、フーちゃんが教えてくれた。

 僕が多すぎて対象が絞れないらしい。塊で動いてるけど、もの凄い量の僕が集まって形成されてるからね。同一人物だけど、それぞれが意志を持ってるせいで無理らしい。


 さらに、精霊は文字が読めないというか勉強なんてしてない。そして僕は喋れない。その結果、意志の疎通ができないという回答が、導き出せたのデスッ。


≪残念だけど、それは仕方がないねぇ。でも今の説明で分かったこともあるよ!≫


 呪いが効かない理由もコレだね。つまりさ、バフも掛からないということまで発覚しました。レイス時代、全然関係なかった件。


≪それでみんなはどんな精霊と契約できたの?≫

「それがしはお花の精霊さんです」

「ウチぁ森の精霊じゃった」

「闇、精霊さん~」


 お花の精霊は想像ができないので聞いてみたら、ポカポカしたりニコニコしたりフワフワするんだって。

 つまり、えーっと? よく分かんない。


 フーちゃんによれば、ワワンパァとルァッコルォの精霊は、まだ幼いらしいよ。なのでいっぱいしゃべって一緒に成長すればいいってさ。

 フーちゃんの闇精霊はすでに戦闘力高めらしい。


「試すするー。い? 眠り、魔法。新しい精霊さん」

≪来たまえ!≫

「ウチもー」

「じゃあそれがしも!」


 ワワンパァもルァッコルォも参戦してきた。効くか効かないかのチェックなので、魔法は食べない。


「ん。行くする。くらき眠りの侯爵。果てなき安息のしるべっ! 眠いなるしたー?」

≪ほとんど効いてないないよー≫


 一応5%くらいの僕は寝たかな。範囲魔法でも数が多すぎたら、効果が出なくなるっぽい。


「ウチも精神的なんは効かんみたいじゃね。ルーちゃんにゃあ効いちょるわ。即寝じゃった」

≪呪文が長いのも気になった≫

「うん。鍛えるする、意思疎通滑らかなるある」


 成長すると冥き眠りの王ってなるんだろうか? デス系っぽい。こわぁっ!


『仲間にお試しだべぇ~。そんな効果いらねぇだよー』


 うわぁ、もうデスれるみたいだよォ。僕には見える……ゴブコボとかがパタパタ天に召されちゃう光景が、僕には見えるっ。


 そしてルァッコルォのお花の精霊。フワフワするの効果が発揮されてた。タンポポの種みたいに、風が吹いたらフワフワしてるよ。


 くしくもニコニコとポカポカも、なんとなく分かった気がする。こんなルァッコルォを見たら、絶対に心が温まってニッコリしちゃうもん。現金で即物的な彼女が、春の陽だまりのような雰囲気をかもし出してるんだー。


≪さて皆さんっ。時間も時間だし、ルァッコルォがどこかへ飛んでっちゃう前に、このまま運んじゃおう≫

「じゃね。気持ち良さそうに寝ちょるし」


 AWACSエーワックスを半分残しておこう。そうしたらメンテロボンパァと、ダンジョン運営も可能だしね。ベルガムの王様と協議した結果を、即時反映しちゃうのだ。


「ポーちゃん、ここ、残るする?」

≪うん。メンテナンスドールと運営すればいいんじゃないかなって≫

「オッケ~。ほんじゃあ王都に行こうやー」


 精霊に挨拶して、僕らはベルガムに向かう。

 僕の挨拶だけは伝わらないけど、男は背中で語るものだよ。

 背中もないけど。丸いからね。全部前だし。僕。


≪ところでさあ、なんかワワンパァが可愛くなってるような?≫

「な、なんねえ? 急にどしたん?」

「うん。カワイイなるする、20%アップ」

≪ムムム、肌艶が……?≫

「アーッ、プニプニなるする! 身体、柔らかなるしたっ!」


 驚愕の事実ッ。彼女の身体を構成してる木の触感が、プニプニになったらしい。


≪え、でも強度はどうなるの?≫

「大丈夫って自信満々じゃ」

「森の精霊さん。エライした! 本物近いする~」


 そういえばワワンパァダンジョンに帰った時は、いっつもくっ付いてたなあ。フーちゃんは柔らか大好きだし、ドールのほうも柔らかくなったのでご満悦だね。


≪森の精霊だから、ワワンパァの木製ボディと相性がいいってことなのかあ≫

「不思議な感覚じゃねえ。改めてよろしくじゃわ」

い出会いー」

≪ルァッコルォのお花の精霊もさ、ジェットパックで飛ぶ時の補助になりそうだもんねえ≫


 ニコニコとフワフワとポカポカ。そしてプニプニ。

 見せてもらったよ、精霊の力。

 やっぱなんでもアリだね! 精霊ってばさ。

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次回≪MISSION:83 悲哀≫に、ヘッドオン!

素材 他ルートも換算済み

モックドレイク43体

 魔石x43 皮&竜鱗x31 爪x18x31 牙平均55本x31

ワイバーンの魔石x18

オーガ26体 魔石x26 角x36

ロック鳥 魔石x21

ゴブリン級の魔石x125

オーク級の魔石x102

ウッドゴーレム 魔石x13

ボーンゴーレム 魔石x13

マッドゴーレム 魔石x13

ストーンゴーレム 魔石x12

アイアンゴーレム 魔石x12

ストームジャイアントの魔石x1

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