MISSION:78 堕ちた賢人

「なぜあるする? ストームジャイアント、聞くした、ある。世界、守り手、はず。悪、ないするはず! なぜ精霊さん、呪うするある!」

「悪意は満ちた。もはや価値なし。滅ぶべし」

「お前、目、歪むした。私……私、仕事する」


 まさか邪人に操られたりして? とか思って見てみたけど、肉塊が付いてるようには見えない。なにがあったのか知らないけど、ひとりで勝手に絶望したってことなんだろうか。


「FOX2!」


 フーちゃんと話してるのを隙と見たのか煙玉で射線を切りつつ、大型徹甲弾を撃つルァッコルォ。だけどジャイアント族最強種というだけはある。難なく剣で弾丸を切り捨てた。


「風遁、まとい──神風じんぷう

AWACSエーワックスより各位。敵機の魔力反応を検知。なおも増大中。注意されたし。こちらは阻害行動に移る>


 だけどその間に、ルァッコルォは忍術の奥義でバフを掛ける。分身の術で攪乱すると同時に印を結んでいく。


とら蠱惑こわくの王!」

「FOX3じゃ!」

「土遁、まとい──金剛こんごう


 フーちゃんが粘性の高い液体で、ストームジャイアントを包み込もうとする。即座にワワンパァが反応して、凍結弾を放った。


≪なかなか忙しい! しかも難しいよ、相手の魔力だけ食べるのは≫


 僕は全機総動員で、ストームジャイアントが放とうとしてる、なにかの魔法を邪魔するために激しくモグモグ中。

 そのストームジャイアントは剣技を放つ。連撃がルァッコルォの分身を削っていく。でもルァッコルォ本体は無事だ。だってスーパールァッコルォ状態が、さらに輝きを増したんだ。


「火遁、まとい──白炎びゃくえん。行くでありますよ。迦具土かぐつちッ!」


 むむーっ? もっとちゃんと見たいんだけど、ルァッコルォの変身っ。いちいちカッチョイイんだよ。でも僕だけじゃなくて、AWACSエーワックスもエアタンカーも、魔法を邪魔するのに忙しい! ルァッコルォの装備も、ジェットパックごと急いで回収しなきゃ、壊れちゃう可能性が高い。


きらめく怒りの王」


 フーちゃんも凍てつく方向に熱操作をして、ジャイアントを固めようとしてる。そんな中、静かだったワワンパァが両手をストームジャイアントに向けた。

 ええっ、同時発射可能なの!?


≪それ、被害が大きいヤツ!≫

「あとで直すけんえわ。喰らいんさいや! イラフティーバじゃあっ」

「ムゥンッ」


 太陽光線を剣で受け流しながら、右側にダッキングして致命傷を避けるストームジャイアント。両胸を狙っての攻撃だったから、避けづらいはずなのに。


「あれを避けるんか!」


 だけど、ジャイアントの剣と左肩に深い損傷を与えた。もう剣は使い物にならないよ。あと壁にも穴が空いた。

 

 ルァッコルォも、ゲームのエフェクトみたいな光のラインを動きで作りつつ、あらゆる方向から攻撃を仕掛けている。ストームジャイアントを覆うエフェクトが、まりみたいになってるよ。どんだけ速い動きしてるんだか……。

 彼女は高い熱を発してるようで、ジャマダハルが突き刺さった場所からは、激しい蒸気が血しぶきと同時に舞う。


 ストームジャイアントは失った剣の代わりに、己の巨体を駆使して攻めに転じた。多彩だな! 魔法や剣術だけじゃなく、武術まで修めてるみたい。樹木のサイズの足で回し蹴りをして、ルァッコルォを下がらせた。


「強力な攻撃である。やりおるわ! ■■■■■ ■■■■■■■ ■ ■■」


 えっ、妨害してたはずなのに、なにかをの魔法を使おうとしてる? 固有の能力みたいなもの!? マズイッ。

 突然訓練場にいかずちを纏った暗雲が立ち込める。でも! フーちゃんの魔力は今、強烈に高まっている。


「饗宴、虚無きょむ舞王ぶおう、カルテット」


 フーちゃんが虚無った! ストームジャイアントの顔の側に現れる暗黒。


≪ヤバッ! ルァッコルォ近付かないで!!≫


 雷雲どころか、雷すら吸い込んでいく黒。僕も吸い込まれてるよ、ブラックホールにぃっ!


「ヌッ、ぐぅぅ……さすがである、森のたグワッ──」

≪ゴメンだけど魔石だけはもらっちゃう。さらばっ!≫


 急いで逃げる。コッソリ体内に侵入してた僕は、フラムブチョーよりもパワーの大きい魔石を確保。なにか言いかけてたけどマジゴメン。寄生した宇宙生物が体内から現れるみたいに、最短距離で外出する僕。完全に悪者デス。


 ホント、マジ、ゴメン。


≪止めてェ、フーちゃん止めてェェェ!≫

「止め、る、し……た」

「「フーちゃん!?」」


 落下していくフーちゃんを、すかさずキャッチ。カルテットって言ってたし、魔力がなくなったんだと思う。4王同時の必殺技、見せてもらいましたぞ。お礼に至れり尽くせりな、ゲーミングベッドみたいになってあげよう。

 ルァッコルォのは今度ちゃんと見せてもらおーっと。光の乱舞って感じで凄かったしね!


≪魔力回復アイテムとかあればなあ≫

「回復、2日、必要……あるしゅる」

「あまり活躍できませんでした」

「ウチもぉ」

≪イヤイヤ、ルァッコルォの奥義はカッコよかったし、ワワンパァのイラフティーバが切っ掛けだったじゃん≫

「カッコイイだけでは悲しいのでありますがっ」


 納得いかないらしい。僕なんて魔力食べてただけなのにさっ。

 まあ、LラストAアタック取ったからいいことにしよう。


『ルーちゃんの見ねがったら、虚無使わ、ね、がっただよ……そったら雷雲、危ねかっただぁ。オラもカッコイイところ……見せたかったんだべ~』

≪だってさ≫

「説明する暇なかったんじゃけど、嵐とか津波、起こせるらしいけんね。ストームジャイアント」


 あの雷雲、凄いエネルギーだったそうです。フーちゃんによれば、精霊が暴走しまくってる感じだったって。でもソレ、僕らには分かんない説明。魔力じゃなかったら、エネルギー量は測れないからなあ。

 ブラックホールで吸い込まなかったら、確実に被害はあっただろうってさ。


「こ、怖いであります」

「もっと激しく壊れちょったかもねえ、ここ」

≪ワワンパァが穴開けたところから、破壊が進んじゃってるナー≫

「ウ、ウチじゃないもん。フーちゃんのじゃもん」


 城の破壊もワワンパァが切っ掛けデスゥ。

 アレッ? そうなるとこの城ってDIY……ってことだよね。ダンジョン産の壁なら壊れないはずだし。壊したくないって言ってたし。


 スマンな、壊しちゃって。でも悪堕ちしたアンタが悪いんだから諦めてくんろ~。


「ま、直しゃあえんよ、直しゃあ。ポーちゃん、コアのとこに連れてってぇや。さすがに魔力残量がキツイわ」


 イラフティーバ極太2本だったもんね。ダミーコアは胸に2個、腹に1個、両足に1個ずつ搭載してるそうだから、足がない今は魔力が乏しいんだって。


≪まかちょーけー≫

「それがしも見たいであります」

えよー。別に秘密じゃないけん」


 戦車タイプに変身して、ワワンパァを上に乗っける僕。僕だけがニヨニヨできるヤツ。キャノン砲を肩に担いでもらった。


「なにが嬉しいんか分からんわ、ポーちゃん」

「そうでありますなぁ」

≪いいの! 楽しんでるんだからいいのだ!≫


 もちろん両手は腰だめのポジで完璧に。肘をやや曲げてもらって、手のひらは干し柿を縦につまむ感じで前に出してもらう。


「ウチをどうしたいんじゃ……ホンマにぃっ!」

≪とか言いつつもやってくれる、ワワンパァスキーの僕≫


 コアの再設定だから戦車の機動力で十分なのさ。美味しい匂いを辿ってコアルームへと向かう。


≪このダンジョンを傘下に入れたら、まずは精霊の泉を探さないとね≫

「あるんじゃったら、すぐ見つかる思う」

「呪いの除去はどのくらいの時間が必要なのでしょうね」

「精霊のことはフーちゃん任せじゃねえ。寝ちょるけど」

≪この時間じゃナターリャさんも仕事中だろうし、連絡は入れたけど返事は遅くなるかなあ、やっぱ≫


 今日明日はノンビリしちゃおう。フーちゃんの魔力がある程度回復しないと動けないからさ。城の中だし休める場所はあると思うけど、サイズが大きすぎて使えなければ人間用にしなくちゃ、だね。


「ところでパァちゃん、自動修復があると言っておられましたが、下半身をくっ付けたら治るのでありますか?」

「さすがに無理じゃわ。穴開いたくらいなら平気じゃけどね」

≪じゃあ本拠地に戻る必要があるね≫


 腹部の球体関節と足の部分は無事なので、腰のパーツだけ交換することになるってさ。一番厄介なのが稼働させるための、ほっそい糸の接続になるそうだ。確かにアレは見てただけでも、グワァァッってなりそうなヤツだった。


≪ルァッコルォも、1回見てみたらいいと思うよ。ワワンパァのスゴを味わえるから!≫

「手作業なのですか!? あの糸の接続……」

「見るのはお勧めせんよ? フーちゃんも逃げ出しちょったで~」

≪ああ、ドール1号機の顔制作で、目がぁ目がぁってなってたね≫


 神業といってもいいよね。ワワンパァの技術。


≪神業ってものを見れるから、絶対見たほうがいい!≫


 なので言ってみた。テレテレワワンパァ見たいので。


「楽しみであります!」

「も、もぉー、恥ずかしいけぇやめんさいや!」


 手で顔を隠してモジモジしてる。かわよ……くはないな……下半身タンクだし、なんかコワイ……天道虫号にチェンジしとこう。策士策に溺れてしまった。せっかくのかわよ《・・・》を台無しにするとはッ。


 なんて愚かな選択をしてしまったんだァ。

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次回≪MISSION:79 ドーナツ≫に、ヘッドオン!

素材 他ルートも換算済み

モックドレイク43体

 魔石x43 皮&竜鱗x31 爪x18x31 牙平均55本x31

ワイバーンの魔石x18

オーガ26体 魔石x26 角x36

ロック鳥 魔石x21

ゴブリン級の魔石x125

オーク級の魔石x102

ウッドゴーレム 魔石x13

ボーンゴーレム 魔石x13

マッドゴーレム 魔石x13

ストーンゴーレム 魔石x12

フレッシュゴーレム 魔石x13(呪われた精霊入り)

アイアンゴーレム 魔石x12 +2ツーハンデッドソードx6

ストームジャイアントの魔石x1

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