MISSION:66 争奪戦
≪フィギュアの収入があったからさ、ダンジョンの報酬にでも使ってよ。金貨153枚、銀貨111枚ね≫
「「ありがとね、ポーちゃん」」
≪僕がやったことは、ほとんどアイデアだけなんだけどね≫
なーんてコアルームでワワンパァと話してたら、ルァッコルォが駆け寄ってきた。
「オイシイ匂いがするであります!」
「「ルーちゃん……なんて現金なんじゃあ」」
「え、なんのことでしょう?」
「「まあ
そう言ったワワンパァが、金貨1枚と銀貨11枚をルァッコルォにあげてた。お小遣いの匂いを嗅ぎ取るとはさすがであります。でも21万円は多すぎるのではなかろうか?
「ワーイやったあ! かたじけない……ではなくですな! オイシイ匂いを感じたのでありますよ、それがしの能力です」
≪ああ、イベントを嗅ぎ取る能力ってヤツかあ≫
「「でもほとんど当たらんのじゃろ?」」
「しかしなぜか精度が上がってる気がするのです」
なんでかな? ダンジョンと関わったからとかあったりして? とはいっても、あくまでルァッコルォの感覚だしね。僕らには分かんない。
「「ほんならフーちゃんも呼んで話を聞こうかあ。今どこにおるん?」」
≪今は冒険者ギルドだね。討伐報酬をもらってるところだから、呼べばすぐに帰って来るよ≫
「それがし、いきなりトリプルスターになるなんて、思ってもみなかったのですが」
「「フーちゃんとポーちゃんがおるけん……」」
≪いやいや、ワワンパァとルァッコルォも、結構オカシクなってるからね?≫
まず空中戦可能ってこと自体が、普通の冒険者からしたらオカシイからね。ダンジョン産の異世界兵器使うし、戦闘力の面でもかなり高いもん。
っていうか、フィギュア欲しさにフーちゃんが冒険者登録するなんて、予想外の行動だったよ。フィギュアでの収入があるから、あげるよって言ったんだけどねさ、自分で手に入れたお金で買いたいらしい。
そんな訳で僕たちのパーティは、みんなトリプルスタークラスの冒険者証を持ってるよ。
僕以外……。
ズルイってゴネたけど、僕はフーちゃんの従魔なのでもらえなかったんだ。
ズルイィィ……。
「ただいまするしたー」
「「おかえりー」」
≪ルァッコルォがイベントを嗅ぎつけたみたい≫
「そうなのです! オイシイ匂いがしたのでありますよ!」
「おー、どこあるするぅ?」
「えーっと──」
地図になった僕を見ながら、指さす場所。クラサムという街だった。ここは隠れ里からほぼ真南で、ラーハルト辺境伯領のリドゥリーのだいたい真東。その交点辺りだね。ワワンパァダンジョンからは、結構距離があるよ。
王都⇔アラムよりも若干遠いって感じだから、かっ飛ばせばここからでも8時間強ってところかな?
「急ぐあるする、必要?」
「それがしの能力では、そこまで分かりませんな」
「「ほんじゃあ今日準備して、明日にでも向かう?」」
「そうする~」
≪ところでフーちゃん、報酬は全部フィギュアにしたの?≫
「した! パァちゃんとルーちゃん買うした。うふ~」
「それがしだけ、なにゆえお団子屋さん時代しかないのですか……しかも捏造でありますが!?」
≪そ、そこはゴメン。カワイイかなーってアイデア出したら、あんな争奪戦になるとは思わなかったヨ≫
お団子屋さんのジオラマセットで、ルァッコルォがドジってるVer……正直スマンかった。ブレイクするなんて思ってなかったんだよー。
お茶をこぼすのと、隠れてつまみ食いするのと、その後の叱られルァッコルォの3種。
仕事に関してはちゃんとできてたそうなんだけど、実際ありそうな感じなもんでアラムのお団子屋さんでは、常連さんまで真実だったんじゃないかって思っちゃうっていう風評被害がッ。
「叱られルーちゃん、念願、獲得するしたっ! カーワイイ~」
「カッコイイところも見せるでありますっ」
「「ゥヒッ、実戦があったら
≪あ、それも原因だ! だってカッコイイの訓練でしか見たことなかった≫
「クッ」
女将さんに叱られたりぼやかれたり、フーちゃんに取っ捕まったりのほうが印象深かったんだよ、絶対! 借金まみれだったしぃ~。
とりあえずなにかありそうだから、また東大陸に渡ることを関係各所に連絡しておく。冒険者ギルドには、ルァッコルォが連絡するそうだ。いまだに行方知れずなニャムちゃんのこともあるしね。見かけたら教えてもらうのに加えて、ニャムちゃんに待っててもらうために。
アチコチに痕跡があるのに捕まらないって、どんだけ自由気ままなんだろうか。
僕たちもわりとアチコチうろついてるから、あんまり人のことは言えないか。でもそのせいもあって、準備は昼食後には整った。移動速度が速いから、準備もそんなに必要ないし。
そして訪れる暇な時間。
≪リドゥリーに行っておく?≫
「「まあ一気に行く必要なんてないけんねえ」」
「では着替えてきます」
「おっけぇ」
ルァッコルォも太ももの絶対領域に慣れ親しんだみたい。
3時間後くらいかなー。リドゥリーが夕日に染まるころに、僕たちは辺境伯のところに到着した。
「ルトー、来るした~」
「よくぞ参られた姉上。変わりないか?」
例のごとくいきなりトップの所に突入。先に連絡は入れてたけどさ。
「あるぅ!」
「ほぉ?」
元気いっぱいのお返事。そうだね。自分で稼いでフィギュアを手に入れるくらいのニューフェイス、ルァッコルォが僕たちの仲間になったもんね。
グイッと押し出してのご紹介。
「ルーちゃん!」
「フーちゃん。雑過ぎるんよ、それぇ」
「始めまして。それがし、対邪人特務部隊シノビ所属、北の風のルァッコルォと申します」
「噂に聞くベルガムの特務機関であるか。ワシに教えて良かったのか?」
「構わないのであります。すでにアッツェーリオ陛下もご存知ですし──」
南と東で協力して対邪人体制が取れるなら、それに越したことはないということだった。そこら辺は王都にいた時に軽く話し合って決まってたんだよね。
なんで軽かったかというと、コレもお馴染みのエリヴィラ様ムーブだ。大事なことなんだからササっと会議して、スッと決めちゃえばいいって。
連絡に関しては僕がいる。ササっとスッと決められてしまった。そのせいで東大陸の王都、ベルガムに里長と一緒に行って王様の所に僕を株分けする羽目にッ。
まあそんなこんなで、ルァッコルォも勅命を受けてるよ。南大陸の有力者たちに協力しろってさ。行動の自由も認めてもらってる。だって世界の守り手たるフーちゃんと一緒に動くからね。
ちなみにベルガムの王様、獣人って聞いてたから勝手に獅子王だと思い込んでたんだけど違った。獣人族変態科豹人族のラマザン・ムビ陛下。ライカンスロープの王様だった。
まあそんな感じで協力体制はすぐに決まったので、エリヴィラ様がルァッコルォを確保してアレコレ買い与えていたよ。ドレスとかさ。エリヴィラ様に懐いてしまったルァッコルォ。
なんて現金なんだ。
しかし、構いたいエリヴィラ様に、構われても問題ないルァッコルォ。ふたりはいいコンビなのかもしれないなー。
王妃だからお金持ってるしね!
僕らは辺境伯んちでくつろいで、翌朝には出発した。実家くらいの気安さで泊まってしまってるヨ?
はくしゃくんちに。
お世話になったから、ルァッコルォのジオラマセットを融通するように伝えておこう。今は生産が追い付いてないみたいだから、なにかと使い道があるかもしれないもんね。
ちなみに王様んちは別にいいのだ。地図部隊とかもいるので国益になってるはずだし。実家みたいにくつろいでオッケーなのだ。
王城で働いてるペットの僕がいたら、フーちゃんも帰って来るはずだしっていう思惑もあるんじゃないかなー。
僕の頭の中の為政者は、ズルい。
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次回≪MISSION:67 リターンズ≫に、ヘッドオン!
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