MISSION:65 新しい翼

 ダンジョンに戻って、先行して作ってた装備を着てもらったら、僕を激しく責め立てるルァッコルォ。


「エッチでありますな!? エッチでありますな!!」

≪エェ?≫

「ここ! ここの部分がエッチでありますがッ!」

「ルーちゃん、カワイイあるするぅ~」

「「ほうよ? ブチカワイイんじゃけど」」

≪そ、そうだよね? ルァッコルォにピッタリな衣装だと……僕は確信してるんだけど≫

「恥ずかしいのでありますぅー」


 短パンとニーソの間のわずかに覗く太ももが、ルァッコルォには恥ずかしいみたい。


≪ソコが推しなのであります! 推しなのでありますッ!≫

「はわぁ、もじもじカワイイするあるー」

「「ウチの心はキュンキュンが止まらんっ!」」


 ジェットパックは円筒状。背に取り付けられているアームに連結されてる、大型のキャノン砲が1門。両サイドにはワワンパァと同型の主翼が取り付けられている。ジェットパックの天辺から伸びる3本のホースの1本、エネルギー供給用のホースがキャノン砲には繋がってる。


 そしてワワンパァとは違って、コアで操作できないからスロットルと操縦桿が手元に取り付けられてる。これが残りの2本のホースだね。右手がスロットルで左手が操縦桿。で、操縦桿にキャノン砲の射撃ボタンがあるよ。

 マガジンには3発の大型徹甲弾が装填されてて、なくなったら順次自動生成する。でも2分くらいは時間が掛かる。ダミーコアのパワーは、主に飛行に使われるので。


 続いて服装について。働く女の子、バイト編って感じでデザインしたよ。

 キャップには穴が空いてて、ルァッコルォの耳が潰されないようにできてる。前が水色で、後頭部に向かって白になるグラデーション。正面にニンジャとルァッコルォの頭文字、NとRを組み合わせたマークを付けてある。


 ノースリーブのポロシャツには、カッチョイイ書体でPremium Ninjaって記入してもらった。黄色文字に黒縁。

 腕の部分を守るために、二の腕辺りまでの指抜き手袋一体型のアームカバーをチョイス。シャツもアームカバーも上から下に向かって水色→白のグラデになってる。シャツの襟と脇腹の部分、アームカバーの二の腕辺りには明るい黄色のラインが入ってるよ。


 腰には革製ベルトポーチ。薬とか煙玉とか、そんなニンジャアイテムを収納できるようにって渡した。

 ショートパンツは紺ベースで赤と緑のラインが入ったタータンチェック。ニーソとロングブーツは黒でスラリとした足を強調してる。ブーツの留め具は金色なのでカッコイイのだ。


 球場の売り子さんみたいな感じと思ってくれぃ! 歩合制だったらルァッコルォは巨万の富を築きそうだなあ。背負ってるのはビールじゃなくてジェットパックに兵器だけど。



「「魔法の装備じゃし慣れてぇや」」

「カワイイ、問題ないする」

「恥ずかしいのが問題なのです……」

≪諦めって大事≫


 当然ながら回避UP+防御UP+浄化が付いてるよ。近接武器には、邪人から回収したのとか拾ったのを渡した。


 +3ジャマダハル・オブ・ディフェンス&マジックブレイク(防御強化 魔力分解)

 +3ジャマダハル・オブ・キーン&マジックブレイク(鋭利付与 魔力分解)

 +2ダガー・オブ・ショック(雷撃付与)

 +2ダガー・オブ・リターニング(投擲後手元に戻る)


 この4本だね。ジャマダハルはミルセラにいた誘拐邪人が持ってたヤツ。2本角だったからまあまあ強かった。ダガーは海底遺跡から拾ったヤツだよ。


 +2とか3ってのは魔法の強度らしい。+1で魔法の装備。その上で特殊効果付与って流れになるそうだ。特殊効果付きは+2以上確定ですってよ、奥さんン。

 プラスが多いほど、命中や回避、与ダメ被ダメにボーナスが付くみたい。今更ながら下着に浄化が付いてるデタラメさを思い知ったんですケドォ?


 スゴクもったいないような気がする。無駄じゃあないけど。

 ないんだけどぉ~。

 +2カボチャパンツ・オブ・クリーニングとか……+2ダガー・オブ・ショックと同列デスヨ?

 ソンナバカナコトッテアル?


「そ、それがし借金どころか魔法の武具まで……どれほどのことをすれば、お返しできるのか分からないであります」


 漆黒の瞳が生気を失っていく。


「お返し、いるない~」

「「ほうよねえ。しいてうなら生きちょってってくらい?」」


 ルァッコルォは生気を取り戻した。現金である。


≪ま、命大事に、ってのはとても大事なことだもんねー≫

「ポーちゃん、無駄遣い、一番する」

≪やぶ蛇だったかー。まあそれは僕がそういう存在になっちゃったから、仕方がないことだね≫

「まことに不思議な生態でありますなあ」


 よし、じゃあ訓練しようってことで、まだ冒険者が到達してないステージに向かう。ヤミちゃんステージの1つ前。樹海ステージだ。ここはオヤツの果物狩りによく来てるトコ~。魔物も配置してないので、練習用の敵は僕ですな。


「まずは飛行に慣れてもらわんといけん」


 操縦方法を説明してるワワンパァ本体。ドールはメンテ中だからね。


「難しい思うんじゃけど頑張って!」

「了解であります」

「念、ため、ルーちゃん、側いるする、ね」

「お願いします」

≪最初は低空でゆっくりね!≫


 ワワンパァは森に突っ込んだからねえ。なーんて警戒してた僕たちをよそに、最初からかなり上手なルァッコルォ。ニンジャだし運動神経がスゴイのかな?


≪全然問題なさそうじゃん!≫

「ルーちゃん、上手!」

「ウチぁポンコツじゃったんかあ」

≪ワワンパァはどっちかと言えば生産系だからっ≫

「わあぁぁ、これは楽しいですね~」


 ワワンパァを慰めつつ、ルァッコルォがはしゃぐ様子を眺める。よし、僕も参戦して回避行動とか見せてもらおう。


≪当てないけど突然のFOX2ゥ~≫

「おっ? 避ければいいのですね! どうぞどうぞー」

≪その意気や良しッ。4TAAM発射ァッ!≫

「うわぁ、もう実戦可能じゃねえ」


 当てる気はなかったけど、当たる気配もないよ。少なくとも5本のミサイルじゃ無理って感じがする。ポジション取りが上手なのかなあ。5本同時には狙えないような場所にいるね。


 どれかのミサイルが、どれかの進路を邪魔してる。こ、これがセンスってヤツなのかな。


≪飛行は問題なし! 次は射撃の練習をしてみようよ≫


 まずは止まってる僕に当たるかどうか。僕はルァッコルォから距離を取って、空中にホバリングする。それを飛行しながら射撃してもらうことにした。

 止まってるなら問題なくHIT。


 次は速度を維持しながら飛ぶ。偏差射撃は難しいぞー。

 当然ルァッコルォの持つキャノン砲には、誘導弾なんてない。狙って当ててもらう必要があるから難しいんだよね。


 基本は不意を突いた攻撃になるだろうから、僕は回避行動しないよ。


「最初、高度維持、移動するない、攻撃試すするー」

「ルァッコルォ了解。高度を維持、移動なしで攻撃開始。フォックスツー!」

「さすがにこれは無理じゃったかあ」

「目標に損害なし。続いて第2射……当たらず」


 3発目も外れた。


「これは難しいでありますね」

「弾丸が装填されるまでがジレッタイ」

「追加、作るする?」

≪練習用に? それはさすがにもったいないよ≫

「じゃよねえ」

「肩に担いで覗いて撃つというのも、慣れないでありますな」

「長距離じゃけん仕方ない」

≪回数を重ねるしかないねえ≫


 こうなってくるとゴミになるからって止めた、マガジン交換式にしておけばって気もしなくもないなあ。しっかり練習してから今の生成型に改造、で良かったのかもだよ。


 ゴブリンニンジャ、コボルトイェーガー、シャマちゃんの訓練もあったので、結局は1ヶ月近く訓練のためにダンジョンにいた。ルァッコルォにニンジャムーブを教わって習得してたし、彼らの訓練はこれでいいんじゃないかってことになった。あとは自己鍛錬をしてくれたらオッケー。


 結構喋れるようになったしね。

 もちろんルァッコルォの偏差射撃も、実戦可能なレベルに到達。ワワンパァと同等の活躍は約束された未来だZE!


 そしてなにより、ルァッコルォのナデナデ講座がとてもためになったので、ヤミちゃんをなでられるようになってしまったのだ! 前よりも頻繁にコアルームへ来てくれるようになったよー。


 神か……ルァッコルォッ。

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次回≪MISSION:66 争奪戦≫に、ヘッドオン!

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