MISSION:67 リターンズ

「海の上を飛んでいると、目がチカチカしてきますな」

「見る、ないする」


 太陽光が反射してキラッキラしてるもんね。UVカットのサングラスなんてないから諦めるしかない。紫外線なんて僕じゃ説明できなかったし。ルァッコルォのフェイスガードに付けたかったんだけどさ。


 ジェットパックでの飛行時に、速度上げたら目が開けられないってことで必要になった。当然呼吸も……。


 ごもっともー。

 

 僕とワワンパァは生身の人間じゃないし、フーちゃんは気体の精霊で飛んでるから影響がない。だから気付かなかった。

 ワワンパァ本体は、戦闘速度で飛ばないからね。飛行速度を上げる生身は、ルァッコルォしかいなかったんだ。


 ヘルメットみたいに、キャップの上からカポッて透明なフェイスガードを、顔の前に降ろす感じ。


「進行方向見ちょりゃあえよ」

≪僕はどうしても獲物を探しちゃう≫


 クラーケン出ないかなあ。残機増やせてオイシイんだ。一応マジック・ディテクションで探索はしてるけど、60mまでしか届かないからクラーケンは空からじゃ無理だろうな。


「速いうても暇じゃけんねえ」

≪僕だとこれ以上の速度は、魔石がないと出せないからなあ≫


 しかも数分しか魔石が持たないし。他の手段だと残機消費になっちゃうから、どっちにしてももったいないんだよね。


「ポーちゃん全部、連れる、多いするぅ」


 残機が結構増えてきてるから仕方ないんだけど、フーちゃんでもさすがに多いらしい。AWACSエーワックスとエアタンカーが旅客機サイズだからなー。AWACSのほうは、もっと小さくていいのかもしれない。基本的に探索用のサテライトを飛ばす分があればいいんだし。


「それがしは楽しいであります~」

≪なら良かった≫


 今のうちだけだろうけど、それは言うまい……。


「魔物欲しいする」

「海のど真ん中じゃあ、おらんよねえ」

「休憩場所が魔物にも必要なのでしょうな」

≪ワイバーンとかロック鳥は、もっといるもんだと思ってた≫


 新宿で芸人さんを見るくらいの遭遇率か? いや、もっと少ないか。それなりにレアイベントだよ。あれ、そう考えるならダンジョンは劇場みたいなものだね。いつでも魔物に出会えるよ~。


「着くしたー。フィアフィア航空、お疲れさまでしたする~」

≪はいー、お疲れさまでしたァ≫

「ありがと、フーちゃん」

「はぁ~素敵な時間でありました!」


 ルァッコルォの尻尾がブブブブって振られてるね。空の旅が大好きみたいだ。


 さて、これから街に入って情報収集なんだけど、港側は人であふれてたので街道側から入ることにしたよ。待ち時間が減るしね。


「入るころには昼餉ひるげの時間になりそうですな」

「宿が空いとりゃあえけど」

≪高級なとこなら平気じゃない?≫

「断られる、ないした」


 冒険者や商人たちに混じっての待ち時間。プリティ幼女戦隊なせいで、不思議そうな視線を集めております。

 いや、空から降りてきたからかもしれない。


 ポンコツじゃなければ、只者ではないということが分かるだろう。イケニエは1組だけだった。


「睾丸殴打、久しぶり~」

「オゴッオゴッオゴッオゴッ」

「おー、さすがリーダーじゃね。まだ耐えちょるじゃんか」

「エェェ……なんでそんなに嬉しそうなのでありますか?」

≪僕も分かんない。でもフーちゃんは大好きなんだよ。睾丸叩き……≫


 最初はどんな悪意にも、反応してると思ってたんだけど違ってた。精霊が感知する悪意ってさ、世界に対するものらしいよ。人同士の争いには関心がないみたい。

 だからさ、フーちゃんにチョッカイ出してきたら、ホントにフーちゃんか精霊が飽きるまで殴打されちゃうっぽい。えっと、つまり、フーちゃんが邪魔だなーって思ったらというかぁ……。


 かわいそうなキンタマリターンズ。そして衛兵カミングスーン。


「何事か!」

「ん。ポーちゃん狙うした。懲らしめる、するしたっ!」

≪あー、僕を奪うために彼女たちを恫喝してきました。返り討ちで睾丸殴打されてますけど≫

「それがしたち、一応トリプルスターの冒険者であります」


 冒険者証を見せるルァッコルォ。相手が悪かったなと煽るワワンパァ。僕的にはあんまりオラついて欲しくないんだけどなあ。バトル風味が強い世界だから仕方ないのかもね。なめられたらアカンってことか。


≪これからは真面目に生きてくださいね。オダイジニー(゚∀゚)プークスクス≫


 引きずられていく不良冒険者の前に行って、メッセージを見せてあげたんだー。商人たちは商機と見たようで、名刺を渡してくる。いらないって断ってたフーちゃんだけど、ルァッコルォが待ったをかける。


「いえ、頂いておきましょう。情報収集に役立ちますがゆえ」

「おおっ、さすがニンジャじゃね!」

「アッ、シーッ! シィーッッ!」

「遅い、するある。バレるした」

「あ……ゴ、ゴメン」

≪ダイジョブダイジョブ。力こそ正義ダヨォ≫


 だってもう目立ってるもん。コッソリなんてできないパーティだから諦めてくださいな。到着時に目立ったから、不良冒険者に目を付けられて、睾丸殴打でまた目立ったしね。トリプルスターってのも周囲に知られたゆえの、商人に囲まれるという目立つ状態になってるんだし。


 なにもかもが目立つんだよ~。なによりカワイイしね!


 お勧めのホテルを聞いた僕たちは、まず宿泊候補のホテルに向かった。満室ってことはないだろうとお墨付き。お高いホテルなので。

 街への入場料はひとり銅貨3枚必要なんだけど、冒険者になったことで免除されるようになった。


 フロントで10日分の宿泊費、金貨4枚と銀貨40枚をお支払い。アラムで泊まったホテルと同じく1泊銀貨8枚だったよ。どうやら同じホテルみたいだ。本店はキネシムって街にあるらしい。


 飾ってあるタペストリーにホテルの成り立ちとかが描いてあった。創始者は賞金稼ぎだった模様。高速魔導船シードラゴン号で海賊狩りに勤しんでたみたい。超武闘派じゃん。この船の名前はグループ名になってるそうだ。


 なお、パーティ資金の残金は金貨58枚、銀貨89枚、銅貨4枚となっております。まだまだ余裕があるね。


「海賊狩り、面白いある、しそう」

「船の上でジッとできんじゃろ、フーちゃんは」

「うん。ないあるする」

「オーナーの親戚筋は現在も海賊狩りのはずでありますよ」

≪文武両道の一族なのかあ。スゴイね!≫

「いえ、武闘派と穏健派に分かれてるのです」


 仲違いしてるわけじゃないから、相互に高め合っていってて、シードラゴングループは大きくなってるとのこと。

 ホテル・シードラゴンか。なんか変形合体しそう。


≪ワーニン! ワーニン! 第三埠頭に大型魔獣の反応を感知しました。第一種戦闘配置! 魔導回路1から5番まで接続。核融合魔導炉、臨界まで間もなく。3、2、1、ホテル・シードラゴン、起動ッ! みたいなことが起きて欲しい≫

「ポーちゃんは共通語で喋っちょるのに、ウチぁなに1つ分からんのじゃけど?」

「稀人は、はしゃぎ始めると理解不可能になると、文献に残っておりました」

「ん。ポーちゃん、意味不明。急」


≪ただのロマンだからいいのだ。男は背中で語るものなのだ≫

「ポーちゃん、まるあるする」

「背中もないじゃろ」

「しかしポーちゃんには死角はないので素晴らしいのです」


 ひとつまみの優しみをもらった僕は、大人しくすることにした。


「では冒険者ギルドへ情報収集に行ってくるであります」

「ん~? 一緒、行くするー!」

「ウチもー」≪僕もー≫

「そうでありますか? 別に全員で行く必要はないと思いますけど」


 一緒に行ったほうが絶対楽しいじゃんね。フーちゃんも冒険者ギルドの楽しさを知ったみたいだしさ。

 まあ素材状態にして卸すってのは、できてないんだけどね。僕もやってないからエアタンカーで丸っとギルドに渡してるよ。魔石以外になっちゃうんだけどさ。


 魔石は僕が食べるし、ルァッコルォ用のジェットパックにも使うからね。エネルギー補給には魔石が大事なので仕方がないんだけど、報酬が安くなっちゃうのが難点だ。

 しかぁーし! お金はフィギュアにしか使ってないっていうのが現状です。

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次回≪MISSION:68 駆除活動≫に、ヘッドオン!

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