MISSION:59 古の里

 指示された降下ポイントに着陸。少し待っててというルァッコルォの言葉に従い、森の中で待機中。


≪ニンジャの里かあ。どんなんだろう≫

「楽しみ、あるー?」

≪同郷の人が作ったっぽいしね≫

「ゴブリンニンジャとは違うんじゃろうねえ」


 ふたりはニンジャにロマンはあまり感じてないらしい。上手く伝えられないのが、とてもくやしいデス! カッチョイイのに。今はニンジャがどうとかじゃなく、ルァッコルォと忍鳥のハヤテに心を奪われてるみたいだよ。


 チュッチュ鳴きながら、ルァッコルォの右肩、頭、左肩と往復して遊んでるハヤテは猛烈に可愛かったし。しかもほっぺにスリスリしてんのは、何回見てもマジ羨ましいでゴザルよ。


 フーちゃんは精霊さんがスリスリしてくれるそうなんだけど、僕とワワンパァにはスリスリしてくれる存在がいないのだ。

 欲しいです。


「召喚するある?」

「正直言うと……しとうなっちょるぅ」


 でも愛玩用に魔物呼び出すのは、どうなんだっていう葛藤があるんだって。戦いの中に身を置いてるしさ。コアルームの中だけで飼うなら安全なんだけど、そんな狭い世界じゃかわいそうだしね。


≪諦めが肝心ってことだね。大人しくハヤテを見て癒されておこう≫

「じゃねえ」

「ヤミちゃん、撫でまくるする」


 たまに小っちゃくなってコアルームに遊びに来るから、チャンスを逃したくないね。まあ……撫でられるのを嫌がるんだけど。小っちゃくなってるだけで、子供じゃないから仕方ないよねえ。


≪そういえばさあ、浮遊石に魔力込めるの、中々進展しないんだけど≫

「ヤミちゃんにも、たまに手伝ってもろうちょんじゃけどねえ」

「ドラゴン、魔力、でも?」

「ほうなんよ。やっぱり島を浮かせるのって大ごとなんじゃろう」


 感覚的に、まだ1%いってるかどうかって感じ。つまり全然足りてない。クラーケンで大型旅客機2機分の残機を稼いだけど、要塞化するには足りてないから、なにもかも足りてない状態だよ。


 色の問題もあるし。結局僕の色を変更っていうのはできなかった。僕の存在そのものの色を、変えるってことになるからかなーって思ってる。仕方ないからこの世界には腐るほどある木材を使って、僕の中にログハウスの部屋を作るしかないかなという結論に至ったよ。


「お待たせしましたー。許可を得ることができたので、ご案内するでありますよ~」

「わーい、隠れ里、好きぃ~。村、思う、出すあるする」

「その内コロロの森にも行ってみたいんよねー」

≪隠れ里はロマンあふれるよね≫

「そのことですが、どうやら我々と関りがあったようなのです。詳しくは長からお聞きくだされ」


 おっとぉ~? フーちゃんのおばあちゃんが、なにかしでかしたのかな?


 ルァッコルォの案内で里の中に侵入。特に変わったことはなく、普通の村って感じだね。家も古い時代の日本家屋ってものでもなかった。まあ、当然か。木々に覆われてるから若干暗いんだけど、木漏れ日が光のビームになってて綺麗だよ。隠れ里に相応しい雰囲気を纏ってる。


 ここは特務機関の養成所みたいな里だそうで、暗くても問題なく活動可能にするための慣らしも兼ねてるんだってさ。

 なんと全員ニンジャかサムライ。人族も獣人族も大人も子供も男も女も。サムライニンジャアア!


≪ねえフーちゃん、老若男女問わずって言ってみて。ろうにゃくなんにょ!≫

「ハ~ン? 言えるするぅー。聞く、いする! 老若男女問わずっ!」

≪クソウッ≫

「ろ、ろうりゃくな、りょう、ろうにゃくにゃんにょ! うわー言えんっ!」

「パァちゃん、カワイイ~」

≪ワワンパァのほうじゃったかあ! ナイスゥ~!≫


 興味深そうにこっちを見てた村人のニンジャやサムライたちも、グッって心を掴まれたみたい。どうでぇどうでぇ、ウチのワワンパァの可愛さはよぅ!


≪これでみんなの警戒心も溶けた。作戦通り≫

「最初から警戒してはおりませんが」

「ププー、作戦通りっ」

≪作戦通りだよ? 警戒されてないとしても、にゃくにゃんにょを聞くという一石二鳥の作戦だったからね。ハーッハッハッ!≫

「うー、ポーちゃんにはかられてしもうた」

「あ、Bプラン、言うやつした!」


 せいか~いって返事したところで、里長の家に到着。いや、Bプランってことではないんだけど、まあいいか。プランの齟齬より獣人のほうが大事だもんね。


「おぉ、ようこそようこそ! あなたがスー家のお嬢さんですな?」


 そういってゴッツイ手でフーちゃんと握手する長。クマだ。でかぁ! 顔はクマのままだね。ルァッコルォのタイプとは違って、動物が二足歩行してる感じ。ケモ度が高い。ここら辺の違いもあとで聞いてみよう。


「ン。私、コロロの森のフィアフィアスー」


 僕たちは部屋の奥に通され、話を聞くことになった。長の言葉で、僕たちは勘違いしてたことに気付いた。関りがあったのは、フーちゃんのお婆ちゃんじゃなかったんだ。


「初代コロコロ様はお元気ですかな?」

「ん~? 見る、ないする……死ぬ、聞くない──」


 片言の標準語で、一生懸命話してるフーちゃん。まあどうせどこかで元気にしてるんじゃないかって言ってるね。


「実を言いますと、コロロの森のコロコロスー。そう名付けたのは、我らが祖先のグェモン殿なのです」


 ちらりと僕を見て更に付け加えた。


「異世界のジャペェーンから来たと口伝が残っておりますぞ」

≪うわあっ! お調子者っていうのが今の言葉で発覚しましたっ!≫

「なっ!? なんと、それは誠ですか……」

≪はいぃ……≫


 僕は説明した。グェモンはゴエモンが訛って聞こえてるって。ジャペェーンは人を笑わせる時に使うヤツって。


≪ちゃんと自己紹介するなら日本人と言いますしね。ジャペェーンは笑かそうとしてるヤツです≫


 大げさとか、お調子者っていう伝説が残ってないか聞いてみたら……残ってるそうです。やっぱりな! コロコロスーだもん。お調子者だと思ってたよ!

 そういえばチヒの冒険者ギルドでマスターからも聞いてたなあ。稀人は人生楽しむみたいなことをさ。


≪人のことは言えませんけど、稀人にとっては新しい世界と人生ですし、目いっぱい楽しんでたんじゃないでしょうか≫

「ポーちゃんが楽しんどるのは分かるね」

「うん。いことー!」


 そして初代コロコロの名付け親ということは、伝説に相応しい強さを兼ね備えてたんだろうね。それを伝えたら私も伝説になるーって、フーちゃんが荒ぶってた。


「ふむ。我らも負けぬよう、研鑽せなばなりませぬ。ところで今回のご訪問、何用ですかな?」


 僕らはルァッコルォを連れて行きたいってことを伝えた。彼女が探したい幼馴染のこともあるし、アチコチ移動できる僕らはその目的にも合うからさ。一応……借金のことは内緒にしといてあげるのだ。


「活動拠点、南大陸するある」

「ルーちゃん、連れてってもえですか?」

「我らとしても、今代のスー家ととぎを結べるのは願ってもないことですな」


 ただ、ルァッコルォは抜けているから、注意しなさいと叱られてた。思慮深くなりなさいって。


「ヤーニャムは任務で南大陸に行っておる」

「ええー!? 行方不明になったのかとばかりっ」

「巫女殿から予言があったのだ。巨星、誕生、破滅、南、とな」

「母様が……」


 里と連絡を密にしてたら、当然知ってた情報だったそうな。しかーし、賭けに負け続けてたルァッコルォは、賭けで借金から抜け出そうと一生懸命だったみたい。


 ポンのコツですね?


 ルァッコルォのお母さんは予言の巫女らしい。移動中に聞いた、ルァッコルォのなんかフンワリしたイベント察知能力、育つと予知能力になるのかなあ。


「ゆえに三月みつきほど前から調査しておる」

「なあー、なんか知っちょる感じがあるんじゃけどぉ」

「私も~」

≪そうなの?≫


 ワワンパァもフーちゃんもなにか気付いたみたい。


「ポーちゃんじゃろ?」

「うん。三ヶ月前、来たする」

≪アッ! 誕生と破壊は僕……デスナァ。アッ? そういえば初めて泊った宿で見た猫獣人ちゃんはもしかして?≫

「ニャムちゃんを見たのでありすか!?」


 ゴメン、ニャムちゃんらしき人物。その人を見た僕は興奮しすぎて死んじゃったので、僕は知らないんだよね。そこら辺も含めて、僕の生態を説明しておいた。残機制ですぐ増える。しかも今は増やそうとしてる。コレが巨星ってことなのかもしれないって。


 破壊に関しては邪人がそういう風に作ったっぽいしねえ。アーさんに言われたもんね。滅びを司るナンチャラみたいな中二な名称。


「まさか予言された当人が訪れるとは」


 街で噂のカワイイ子を見ようと思ったら、不思議な縁になっちゃったね。

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次回≪MISSION:60 忍術≫に、ヘッドオン!

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