MISSION:58 陰湿
「ということでありまして、借金を差っ引いたとしても、それがしの意志だけでは行動を供にするわけには参りませぬ」
やはりワワンパァをチラチラ見ながら、ルァッコルォは答えてくれた。
はぁ~ん、国かなにかの部隊に在籍中ならそうだよねえ。
「相談、できるする人、いるする?」
「いるでありますよ。里長なら可能ですが……隠れ里ゆえ、お連れして
よく分からないと言われた。
ウーン、って一瞬考えたフーちゃんが結論を出す。
「明日、行くするー」
「え、行くのでありますか?」
「善は急げじゃね!」
「ええ……それがし、お叱りを受けそうな気がっ!」
「問題ないするぅ~」
「エェェ……」
でも行っちゃう~。いや、問題にしてるのはルァッコルォ側なんですけどね。フーちゃんとワワンパァは気にしないみたい。
えっとぉ、僕もあんまり気にしない。
「へへ、こんな強引なお誘いは初めてでありますな。なんだかそれがし、少し楽しくなり申した!」
楽しくなったついでに質問があるみたい。ワワンパァのほうを見てるね。どうやらゴスロリ浴衣の、浴衣部分が気になるみたいだ。
「もしや浴衣をご存知なのではありませぬか?」
≪おおっ! 浴衣知ってる人、みーっけた! 着物文化あるのではっ≫
「え、あぇ? スライムさんがご存知とは、つゆ知らず」
そういえば自己紹介してなかったので、僕たちもルァッコルォに伝える。
≪僕は稀人で、邪人の改造によって生み出された、カテゴリーオーバーのポー。ポヨヨの森のポヨポヨポー≫
「ウチぁダンジョンマスターのワワンパァじゃ。本体は南大陸におるよ」
「私、コロロの森のフィアフィアスー。よろしくするー」
「じょ、情報量が多すぎるので……あります」
ですが、と言葉を区切り、ルァッコルォがキリッとした表情で質問をしてきた。カッチョカワイイ。
「よもや邪人と関りはありますまいな?」
≪ないよー。その顔いただき! フィギュア作ってもらおーっと。ワワンパァ、向こうに送っとくね≫
「はい! はい! 私、いるするっ!」
「らじゃーじゃ! あ、ウチらにとっても邪人は敵じゃけん安心しんさい」
「か、軽いのであります……」
≪邪人はねえ、フーちゃんが全部欲しがるんだよねえ≫
「まあまあ、強いあるする。2本角以上、欲しいする」
「えっと、分からぬことだらけでありますが、今宵は一旦お店に戻らせていただきますゆえ……」
「分かるしたー。明日、ルーちゃんお迎え、行くする」
「お休み、ルーちゃん」
≪ルァッコルォ、お休み~≫
「あ、はい、お休みなさい」
ルァッコルォはペコペコしながら去って行った。
勝手な思いだったけど、東大陸は和の文化だと思ってたんだよねえ。ファンタジーのゲームなんかでも東じゃん? まあ、違ったんだけどさ。南大陸と同じく、一般の人は丈の短いチュニックってヤツが多かったよ。
お団子屋さんは和装であって欲しかった。三角巾かぶってて着物な、時代劇みたいなの。
でも忍者の隠れ里には和服があるっぽいってことが知れたよ。あ、あとさ、獣人ばっかりの国だとも思ってた。もちろん違ったんだけど。人の3分の1くらいしかいないらしい。全体ではもっといるけど、町とかじゃなく草原や森、山とか自然の中で暮らしてるんだってさ。
≪和服楽しみだなー≫
「わふく~?」
「ウチが着とる上着みたいなんか?」
ふたりが興味ありそうだったので、お団子屋さんはこうあって欲しかったっていうのと、
「キレイじゃねえ」
「うん。でも戦うない、服する」
≪僕が住んでた国の忍者は、こんな格好だったって言われてるよ。あ、色は黒っぽい感じね≫
って忍者の絵も見せた。忍者装束に身を包んで、屋根の上にスチャってなってる感じとか、屋根裏に潜んだりとかの。
「暗部、感じする」
「暗殺専門なん? こわぁ」
誤解が生まれてしまった。暗殺なんかもあっただろうけど、主な任務は諜報活動のはずだよって言っといた。
≪あとはー、攪乱とか? 闇夜に潜んで敵陣営への破壊活動とか、物資の略奪とかだったはず≫
「ひっそり? 泥棒ー?」
「こっそり迷惑行為するんかぁ……陰湿じゃあ」
アレェ……なんか思いが伝わらないよっ。カッコいい感じで説明したつもりなのに、陰気で迷惑振りまく人みたいになっちゃった! 他国でも人気があって、わざわざ来日したりする人もいるのにッ。
不甲斐ない自分に打ちひしがれながら就寝した。
ゴメン、忍者の人……。
翌朝、僕たちはルァッコルォが働いてるお団子屋さんへ。隠れ里に向かうには、彼女を連れて行く必要があるからね。
ここの女将はルァッコルォの正体が特務部隊なのを知らないとのことなので、そんなことを言わないように注意しながら、引き取るってことで話を進める。
≪──なのでルァッコルォを連れて行く代わりに、彼女のフィギュアを置いてもらおうかなって話になってるんです≫
「これは凄いねえ」
フーちゃんとワワンパァのフィギュアを見せながら、お客さんに大人気のルァッコルォを連れて行くので、代わりに
「3日後にはできますけん、ポーちゃんがすぐに届ける予定です」
「そういうことなら彼女のこと、よろしく頼むよ」
娘の自立の予行演習だねって、少し涙ぐんでる女将さん。大事にされてたんだなあ。そう思いながら僕はルァッコルォの借金、金貨13枚を女将さんに渡した。
どんだけ負けてんの……。ルァッコルォは賭け事に向かないんじゃないかなあ。
ちなみにホテル代は銀貨8枚でした。
「しんみりが台無しの金額じゃねえ」
「やれやれ、全くだよ」
「お待たせしたであります」
「ルァッコルォ……元気でやんな」
「女将さん、本当に、本当にお世話になり申した」
ヒシって抱き合うふたり。
≪今生の分かれってことでもないよ? ここに来たかったらいつでも来れるし≫
「うん。思うある、時間、早いあるした」
「ほうじゃねえ。アベルガリアから半日掛からんとか、ビックリじゃった」
「み、南大陸の王都からでありますかっ?」
「それならちょくちょく団子でも買いにおいで」
≪とりあえずは3日後に、別の僕がフィギュアを届けに来ます≫
別れを済ませて空の旅に出る。テイクオーフ! 北東に飛んでくれとのことなので進路をそちらに。
<こちら
≪ジアッロ1了解。こちらは巡航速度を維持して目的地に向かう。オーバー≫
「もしかしてあなた方も、どこかの部隊に所属しているでありますか?」
「ううん、これ、ポーちゃん、ごっこ遊びあるする」
「そうなん? ウチ、今までフーちゃんは王家所属の人なんかあ思うちょった」
「違うする~」
ルァッコルォにも渡した、メッセージウィンドウ用の僕を見ながら質問された。ゴメン、紛らわしくて。でも僕のはAIR COMBATの雰囲気だけで、ちゃんとした知識はないんだー。
名作と評判の4、5、
「そういやあルーちゃん、あんまり陰湿なことしたらいけんよ?」
「そうある。ポーちゃん、ニンジャ聞くした。迷惑行為、ダメある」
「ルーちゃんはカワイイのに、そんなんもったいないけん人生考えんさい」
≪違うんだってばー、ニンジャはカッコイイの! 陰険じゃないの!≫
「そ、そうでありますよ!? いつの間にそのような誤解がっ」
僕とルァッコルォで説明して、なんとか忍者のイメージを回復できた。そんな説明をしてる間に、ルァッコルォたちが住んでる里の祖先は、日本からやって来た稀人なんだろうね、っていう確信が僕の中に生まれたよ。
だって忍者とか侍とか着物とかをさ、ルァッコルォが知ってるんだもの。
「チュッ、チュピチュピジュー」
「あ、ハヤテ」
「ん~?」
「先触れのために飛ばしておいた、シノビスワローに追いついてしまったであります……」
シノビスワロー……忍ツバメかな。追い付いちゃったかあ。
≪忍鳥ってヤツ? カワイイ≫
「左様でありますよ。可愛らしく仕事もできる自慢の子です」
「一緒に行くする~」
「旅は道連れじゃけんね!」
カワイイは逃さない。それが僕たちのパーティなのであります! 巣から落ちて怪我してた雛を、ルァッコルォが治療して仕事を覚えさせたんだって。
「魔物じゃったけえ親鳥が落としたんかもねえ」
≪そういうもんなんだ≫
「そう~」
「この子はスワローマジシャンって種類ですな。珍しいことに
「おお~、強いなる、しそう!」
言葉も理解してるっぽくて、ルァッコルォの肩の上で自慢気な感じに胸を張ってるよ。
クッ、ほっぺに頭こすり付けられてるのウラヤマシイ。僕も甘えられたいなあ。
フーちゃんとワワンパァも同じように感じてるのか、ドライフルーツで気を引こうとしてる。だがしかし! 相手は忍鳥である。ルァッコルォ以外からのオヤツは口にしないのだあー。
「食べた! うう~っ、カワイイねえ」
「これも! これも食べるする! ひゃぁぁあぁ」
≪ルァッコルォ以外からも食べるんだね≫
「食べていいもの、悪いもの、その判断が可能ゆえ。ささ、皆様方、到着したのでありますよ」
偽装されてるのか、上空からでも視認できないね。
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次回≪MISSION:59 古の里≫に、ヘッドオン!
※スイステX2
Nintend○のスイッナンチャラ+S○NYのプレイステーショナンチャラ+Micr○s○ftのエックスボッナンチャラを3で割った感じの、架空の第二世代家庭用ゲーム機
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